EC:195 クリスタルペア
ヒカリが黄色のオーラを纏える時間はSPの回復が間に合えば最大でざっと380秒。6分と20秒と考えたらかなり長く感じるが、実際、6分なんてあっという間である。
現状無敵とも言えるヒカリであるが、唯一の不安要素は、フェンリルがヒヒリー達の方に攻撃を仕掛けることである。
ヒヒリーが気力回復ポーションを20秒で投げなければ、そしてヒカリが上手く効果範囲に入らなければ、それ即ち「死」である。
ここでヒカリが落ちてしまうと、ますます軍曹やヒヒリーには手に負えない状況となり、挙句の果てにはナユカ達の元にフェンリルが行くという、最悪の状態になりかねない。
できるだけこの6分でフェンリルのHPを減らす。
ヒカリはフェンリルの攻撃を最低限の逸らしで、左腕でいなす。体制を崩したフェンリルの懐に潜り込みここぞとばかりに、拳を、弾幕を叩き込み。ダメージを与えていく。
フェンリルもただやられているだけではない。このまま攻撃されるのを嫌ってか、バックステップからのしっぽでヒカリを吹き飛ばそうとするが、あっさりしゃがまれ、回避される。またもや今度はフェンリルの太ももらへんを蹴りつけながら、超接近。ボコボコにしばきあげる。
ヒヒリーからのポーションを受けつつ、ともかくフェンリルを殴る。
「む…」
しかし今度はフェンリルからの反撃。
フェンリルはヒカリ目掛けて紫色の炎をうち放つ。
さすがに回避に移るヒカリを見て、フェンリルは紫の攻撃を繰り返し始めた。
当たってもダメージは無いとはいえ、当たった場所からゲーム空間ごと壊すこの「バグ」はヒカリにとって脅威である。
せっかく最後の切り札を使い。ダメージガン無視できる状況なのに、バグエリア(亀裂)に突っ込んで即ログアウトになるのはあまりにも悲しい。
1回でもログアウトすれば、二度とログインはできない状態では絶対にその死に方だけは阻止しなければならない。
フェンリルの猛攻。紫の炎がヒカリをあちこちから襲う。
何とか懐に入り込もうにも、その懐に入れば、紫の炎を喜んで飛ばすであろうフェンリル。迂闊に攻撃が出来なくなってしまった。
もう既に残り少しとなった気力回復ポーション。
ヒカリに残された時間は60秒である。
だがしかし、一向にフェンリルの紫の攻撃がやむことは無い。
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フェンリル
HP0├────╂──┼───────┤
611,153,023/2,000,000,000
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ヒカリはフェンリルの体力を確認するが…。
フェンリルの残り体力は、3分の1。到底1分では倒しきれない。
自身のHP、MPは共にゼロ。もう既に死が確定したヒカリは最後にインベントリからアイテムを取り出した。
「…。ごめん…。軍曹!」
ヒュン!!
取り出したアイテムを少しだけ見つめ、何かを考えたヒカリ。そのアイテムを軍曹へ〔投擲〕する。
それを受け取った軍曹。
「なっ!!これは…」
「誰でもいい。呼んで。…後は任せた」
「ま、待つでありますッ!ヒカリさんッ!!」
軍曹の制しも聞かず、ヒカリはフェンリルの方へ飛んでいく。
アイテムを渡された軍曹は、自分の手元にある「強制召喚クリスタル」なるアイテムを恐る恐る持ちながら、ヒカリに心の中で叫んだ。
(待って!!コレッ!!スカスクの特別報酬でありますよッ!!!?あの!ヒカリさんが有名になったきっかけのクリスタル!!どうしろって言うんでありますかーッ!!)
いや、理解はしている。このクリスタルを使って誰かを呼べばいい。でも…。このクリスタルは…
(…後は任せた)
脳裏にフラッシュバックするヒカリの言葉。そしてその表情。
きっと、本来なら、自分で使いたいに決まっている。
だから、軍曹はそのクリスタルを出来れば使いたくないッ!
「これで。ほんとに。最後。平和な世界(RBG)を壊した。見知らぬ何か。お前がこの世界を壊すなら。私も世界を壊そう。禁忌の技を。私の怒りを。悲しみをッ!!お前に直接叩き込むッ」
「恨むでありますよ…」
カピンッ!!
砕けるクリスタル。中に封入されていた特殊な魔法陣が空中に立体的に描かれる。
現状プレイヤーでは再現不可能な魔法陣の。取得不可能のアイテムを軍曹は使う。
「ナビー…」
『抜けても問題ありません』
「指定。「アキアカネ」。ヒカリさんを…、助けるでありますッ!!」
輝き、そのクリスタルの破片までも撒き散らしながら回る〔魔力〕の渦が、〔魔法陣〕に集まり集束する。
「…任せろ!!ヒカリは私のパートナーだぁぁ!」
そこから飛び出す、アキアカネ。現状の把握もせずにただ一直線にヒカリを目指す。
「名ずけて【一死の拳(guidance to Hell)】。世界をコワセ!」
『ッ!!?総員!一斉に伏せろッ!!!』
カピンッ!!
「ヒカリーッ!!」
その拳にヒカリはありったけの〔スキル〕を。めちゃくちゃな式をもって振り下ろす。
[弾幕無限〔倍〕〔限界突破〕。属性〔火〕〔火炎〕〔木〕〔植物〕〔空気〕〔爆発〕〔爆破〕〔衝撃波〕〔水〕〔水流〕〔風〕〔砂〕〔土〕〔鉄〕〔金〕〔軟化〕〔硬化〕〔光〕〔雷〕〔無〕〔斬撃〕〔クラスター〕〔メテオ〕〔ロケット〕。形状〔星〕〔スター〕〔魚雷〕〔猫〕〔犬〕〔鳥〕〔ペンギン〕〔棒〕〔丸〕〔四角〕〔正方形〕〔棒状〕〔スティック〕〔ライン〕〔円柱〕〔剣〕〔槍〕〔タガー〕〔ハンマー〕〔斧〕〔釣竿〕〔爆弾〕〔バケツ〕〔溶〕〔粉〕〔円〕〔輪〕。色指定。〔赤〕〔青〕〔緑〕〔黄〕〔白〕〔黒〕〔茶〕〔金〕〔虹〕〔ピンク〕〔グレー〕〔黄緑〕「海」〔山〕〔秋〕〔ネオン〕。指定〔条件〕。〔右〕または〔左〕または〔直進〕。0.001秒〔停止〕直後〔加速〕〔アクセル〕〔中断〕〔再開〕。0.001秒後〔減速〕〔保持〕〔固定〕拳と〔連動〕誤差ゼロ距離。直撃後〔追撃〕〔追跡〕〔サーチ〕〔地図〕自身視界内に〔表示〕。常時〔解析鑑定〕〔計算〕〔算出〕〔解説〕〔解析〕〔分析〕〔スクリーン〕に〔出力〕辺りに〔放映〕〔公開〕。継続時間0.1秒。即〔削除〕〔開示〕〔反転〕。弾幕設定1. 起動時、〔魔法陣〕プリセット1を使用。起動後〔打ち下ろし〕〔脚〕〔剣術〕〔槍術〕〔盾術〕〔弓術〕〔馬術〕〔体術〕〔操縦〕いずれか該当行為を使用。弾幕パート1〔幻覚〕〔自壊〕。弾幕パート2〔追走〕〔飛行〕〔浮遊〕。〔振り下ろし〕から1000000000000秒〔回転〕〔曲げる〕〔回す〕〔直角〕〔鋭角〕〔鈍角〕〔反復〕〔分裂〕〔結合〕〔粉砕〕〔砕く〕〔叩く〕〔仰ぐ〕〔惑わす〕〔ランダム〕〔消える〕〔見つめる〕〔泣く〕〔踊る〕〔睨む〕〔威嚇〕〔威圧〕〔圧迫〕〔裁断〕〔輸送〕〔箱〕〔振る〕〔投げる〕〔投擲〕〔飛ぶ〕〔カーブ〕〔ストレート〕〔アタック〕〔ミディアム〕〔ナックル〕を0.1秒に100回〔判定〕させる。付与1〔死念〕付与2〔自爆〕全ての工程を1秒で〔繰り返す〕]
「指定ッ!!」
「ヒ」拳がフェンリルに当たった瞬間。
「〘倍〙!」「カ」
「リ」
世界(RBG)の時間が、少しの間止まり、ヒカリとフェンリルを中心に、世界がコワレた。
作者コメント
過去編で明らかになる…。はず…。
昨日は投稿できなくてすいませんでした。
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