EC:192 目がァァァ~~!!耳がァァァ~~!!
「っぐ!?」
突撃してくるフェンリル。吹き飛ばされる、兵隊人形。当たらぬ弾幕。
動かない体。大きな口を開け、ヒカリを噛み殺そうとフェンリルが眼下に迫ってきていた。
先程の蘇生ポーションのおかげで回復したHPだが、さすがに噛み殺されるとひとたまりもない。
HPというものは、致命傷を喰らえば途端に弾け飛ぶ。
ヒカリはこの時、瞬時に悟る。
自分は死んだと。
だから、自分が持つ。MP、SPを使い。何とかフェンリルに大ダメージを与えるように思考を切り替え、持てる限りの思考能力を用いて最後の一撃の準備をする。
(動かないなら。仕方が無い)
フェンリルに見えないように、〔圧縮〕〔蓄積〕〔集束〕〔固定〕を使い、自身の後ろに、魔弾を生成する。ただの魔弾では無い。ひとつの魔弾に莫大なMPをまだまだ詰め込めるため、それを補うようにSPを圧縮させながら、小型に成るように固定。それを。
(初めて使う。でもここで使うのが1番!)
そして自らの死をもって発動するスキル。〔死念〕を使う。
ガァァァァッ!!!!!
そうしてヒカリはフェンリルに食われ…。
ギャウンッ!!!?
ドコッ!!!!?
轟音と、何かがぶつかった音が、ヒカリの目と耳に甚大なダメージを与えつつも、目の前に迫っていたフェンリルを、遥か向こうの壁に吹き飛ばしていた。
「ん…。なんか生きてるけど。全然。見えない…」
*
時は少し遡り、ユキたちとヒカリ達が別れる少し前。
「ちょっと!ミカさん。いったいどこに向かっているのですか?こっちは目的地ではないですよ!?」
いきなりの方向転換。
ミカが、右に舵を取り北上、目的地とは違うその進行方向にどこへ向かっているのか分からないまま。ビュアはその後をついてきていた。
「目的地変更だぜ。川を目指す!」
「何故に!?」
「障害物が少ないからな」
キャウン!!
ナユカ達の方に向かっている狼達をその重い重砲でシバきながらも、そんなことを言うミカ。
ビュアは少し考えるが、結局ミカが何をしたいのか分からない。
そんなビュアを見かねてミカは一言、こう呟いた。
「その方が撃ち抜きやすい」
「はい!?」
キャヒン!!!?
何故か自信満々に撃ち抜く宣言をしているミカ。びっくりした拍子に、襲って来た狼に少しオーバーキル気味な回し蹴りがクリーンヒットし、狼をポリゴンへと変えていく。
「撃ち抜くって、何を撃ち抜く気です!?まさかフェンリルをですか?」
「まさかもなにも、それしか無いだろ?」
「どう考えても射程が短いのでは?」
「?いや?射程は足りてるぜ?」
「…」
(あれ?まだ5キロくらい離れてるような?)
どうしてこう、リリースのメンバーは変な人達が多いのだろうか。ビュアは考えるのをやめた。
そうして川に到着する。
バグの影響で上空では亀裂が多く。登れそうにないので、確かに射線を通すなら川がいいのかもしれない…。が。
「そりゃー。開(ひら)けてたら狼も多いわな!」
「笑い事じゃないですからね?」
同時に複数体の狼に常に襲われるという自体に陥っていた。
「ビュア!」
「なんです?」
「2分。うちを守ってくれ!」
「2分…。わかりました。それ以上は無理ですよ?」
「頼んだ!」
ビュアはミカのことを全力で狼達から守る。
あんな感じだが、リリースのメンバーは意外と仲がいい。アリアとハルトも然(しか)りだ。
「うっし!!【全武装:モードスナイプ】!!」
カシャン!!
大きな駆動音とともに、ミカが装備可能な機械が全て出現。それらが、姿形を変えていき。ミカとそのミカが持っている重砲を固定するための脚が4本、地面に突き刺さる。ミカの目に映るカーソルが現れ、視界がどんどん遠くを映し出した。
そのままEPとMPをミカは全部重砲に注ぎ込む。
「ナビィ!いるか!!」
『なんでしょう?』
「今からこれでフェンリルを撃ち抜く。だからそのタイミングを指示してくれ!出来れば後1分以内で」
『了解。視界内に現在フェンリルと混戦中のヒカリ、軍曹、ヒヒリーを見やすく色漬けします』
「サンキュー!!」
チャージ中、どんどん重砲が駆動音をかん高い音に変えていく。
《チャージ完了》
とその時。
ワォォォォォン…
遠くから聞こえる咆哮。間違いなくフェンリルのものであり…。
『3人の動きが制限され動けなくなりました。狙われた者のヒットポイントをマークします…』
「どいつを食べるつもりだ?」
「すいませーん。そろそろ2分超過して2分くらい経つんですけど」
ビュアの独り言は無視し、ミカは集中する。
「きた!ヒカリか!!【発射】!!」
その次の瞬間。
ドォーーーーーーーーーンンン!!!
その重砲から、極太のビームが、フェンリル目掛けて発射された。
後ろで未だ狼相手に戦っていたビュアの視界と耳に甚大な被害を出しながら。
…なお、ミカはちゃっかりサングラスのようなものを付けてドヤ顔を決め込んでいた。
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