V1.48  それぞれの発見

*>>三人称視点



「うぅん…。こうでもないですわね…」



「何してんだ?」


 博物館のとある施設。研究施設が立ち並ぶ区画の一室で、アリアは床一面にまるまる半日使って描いた魔法陣を前に、それを眺めながらうなり声をあげていた。


 あたりには様々なアイテムや魔力回復薬が入っていたであろうビンが転がり、その隣には綺麗な漆黒しっこくの球体が置かれている。



 そんなアリアの様子を、用事ついでにアリアの居る部屋を訪ねたミカが扉から体を覗かせていた。

 部屋はお世辞にも綺麗だとはいえず、普段のお嬢様らしさを感じるアリアとの差にミカもこれには首を傾げる。どしたの?と。




「ミカちゃんですか…。見ての通り。魔法陣を作っていましたのよ」


「…。かなり複雑だな?下手に巨大な魔法陣よりもこっちの方がすげぇぞ?うちはそんなに魔法陣は使わないからわからんが…」



「お世辞でも褒めていただけるとそれなりに頑張ったかいがありましたわ」


 そう言いながらアリアは新しく取り出した魔力回復薬をラッパのみしている。お嬢様ロールのような言動にそれはないだろうとミカは少しツッコミかけながらも、何とか口に出さずにその衝動を飲み込んだ。



「それで?なんで唸ってたんだよ?」



「できそうで出来ない…。あともう一歩で全てのピースがそろうのにそのピースが見つからない…。そんな感じでこの魔法陣が完成しないのですわ…」


 ミカ。よく分からない返しにさらに首を傾げる。


「ちなみにこの魔法陣は攻撃用のか?」


「なんとも言えないものなのですわ。下手したら革命ものかもですわよ?」



 そう、冗談交じりに言ってみたアリアだが、ミカはそれを聞いて真剣に考え始めた。普通のプレイヤーが冗談で言うならわかるがアリアもリリースの一員。原型革命ではそもそも目立たなかったが彼女こそ原型の1番最初の要素であり最もポピュラーな要素〔魔力〕を見つけ出したその人である。

 リリースが革命だと言うとその冗談が本当になりかねない。


「なら、うちも混ぜてくれよ?二人いたらなんか思いつくかもしれねーぜ?」


「いいんですの?ミカちゃんはミカちゃんで大規模戦闘システムの解析とかしてませんでした?」


「そっちは一旦保留だな。実はそのブツを調べてたら他にも〔電力〕関係の施設がまだ眠ってる可能性がでてきたんだ。それに他の〔力〕も関係してくるようでな?それにアリアを誘おうと思って来ただけだ。てな訳でその魔法陣が終わったら付き合ってくれよ」


 ミカの説明になるほど、と頷きながらアリアはそれを了承した。1人ではいきづまっていたのでちょうど良かったらしい。


「んで?結局この魔法陣はなんだ?」


「使い魔って知ってる?」


「は?」







*






「おーい。ジーク。次の区画の設計図できたぜ?」


「ほう?どれどれ…。なかなかいい仕上がりじゃのう…。やっぱりお主がうちのギルドに入ってくれればのう…」


「リリースに入ってなかったら喜んで入っただろうなw。でも、今の俺は「リリース」のメンバーだ。裏切るようなマネはしたくないし、意外とあのメンツは楽しーぜw?色々あってな」


 場所は変わってここは博物館の西側。以前は空き地であり何も無かった芝生だった場所。

 現在はというと空き地ではなくなり、新しくオシャンティーな街並みが広がる。この区画はノアの乗員が住む場所として新しく作られた場所である。


 そして現在は移住と並行して家具などを作ったり、まだ余っている土地に新しい区画を作るために資材が所狭しと置かれている場所もあった。


 たくさんの同盟ギルド員が行き交う中、そのリーダーであるジークと「リリース」の中では余り目立たない本職。生産職のハルトが談話していた。


 ハルトは戦えるし。作れる。ハイブリットなのだ!


 最近の悩みはリリースの中で唯一男であること。ハーレム?いやいや実際なってみたまえ。君もわかるようになるさ…。肩身が狭い。

 と少しだけジークに愚痴っていた話の矢先先程の会話のよう。


 別にリリース同士の仲が悪い訳ではなく。むしろいいほうなのだが男同士の会話をすることが出来ない。なのでよくジークや生産職のプレイヤーとギルドエリアではいることが多い。


「設計図を見るに、今度は施設的な建物が多い方がいいのかのう?」


「あぁ、居住区は足りそうだからな。今度は来訪者もプレイヤーも使える区画が目標だぜ」


「なるほどのぅ。理にかなっておる。来訪者もゴールドを使えるからのう。色々商売もできそうじゃ」


 2人はその後も歩きながら、これからできていく街並みに向かって行く。


 まだまだ土地は有り余っているようだった。


*





「それなんです?」


「…♪」



「たぶん。爆弾…?」


「…♪♪」(ウンウン)



 またもや場所が代わり、アリア達のいる博物館東側のその建物の地下にて、アキアカネ、キリア、ヒカリが作業机に向かって何かをいじっていた。



「すごいですね…。自作で爆弾を作るの。なかなか早いですし威力も高そうです」


「…」


 そんなアキアカネの感想に照れながらはにかむキリアちゃんが可愛いい。


 ただし、その手で作られている爆弾は「あの」爆弾である。後でアキアカネとヒカリがキリアとの実地使用で盛大に吹き飛ぶのだが、この時はそんなこと知る由もないのであった。



「♪」


 そんなキリアは爆弾を作り終えると、新たに新しいアイテムを作るのか。アキアカネからしたらあまり見ないような素材を取り出し作業に取り掛かる。


「今度は何を作るのです?」


「…?」(ウーン)


「新しい。アイテム?」


「…♪」(ウンウン!)



 ヒカリがそういうと。「正解!!」と言わんばかりに首を縦に振りニコニコしていた。可愛い。


 アキアカネはキリアの可愛さで周りが見えてないようである。


 この後、とんでもないアイテムを生み出すとも知らずに。








*




「それでは次の質問です」


「まだ質問あるの!?」



「まだ半分くらいですね」


「え゛?」


「これは長そうだね〜…」



 まだまだ生配信中のナユカとユキであった。

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