第32話:大荒れの冒険者ギルド
ラグザリアの冒険者ギルドに到着すると、何やら騒がしいことに気がついた。
「……何かあったのかな?」
俺はそう呟きながら振り返り、レミティアたちと顔を合わせる。
「とにかく中へ入ってみましょうか」
「そうですね。入って見なければ、分からないこともあるでしょう」
「確かに、その通りですな」
というわけで、俺たちは騒がしい冒険者ギルドの扉を開いた。
――ざわ。
……え? な、なんで全員の視線がこっちを向いているんだ?
「な、なんでてめぇら、無事なんだよ!」
「あんた、俺たちを洞窟で襲ってきた奴じゃないか」
最初に声をあげたのは、槍使いの冒険者だった。
……ってか、あれ? なんかこいつ、俺と戦った時よりもボロボロになっていないか?
よく見ると、他の奴らも集まっており、同じようにボロボロになっている。
そして、そんなこいつらの正面で仁王立ちしているのが……あぁ、なるほどね。理解できたわ。
「あんたらが何をしたか、私にははっきりと分かってんだよ! てめぇら、ぶっ殺されたいみたいだな! あぁぁぁぁん?」
「「「「「す、すみませんでしたああああっ!?」」」」」
こいつらが俺たちを襲ったことがギルドにも伝わったのだろう。だからミスティが怒り狂っているというのは分かったのだが……どうやったギルドに伝わったんだろうか?
「その辺にしておきなさい、ミスティ」
「あ! マスタ~! マスタ~がそう言うなら~、仕方ありませんね~。反省しろよ、てめぇら! 分かったか!」
「「「「「わ、分かりましたああああっ!!」」」」」
……相変わらず、可愛い声とドスの利いた声を使い分けるのが上手だな、ミスティは。
「アリウス様。依頼の達成、お疲れ様でした」
「あ、はい。だけど、どうして達成できたって分かったんですか?」
「それは企業秘密ということで、よろしくお願いいたします」
……いや、普通に気になるんだが。もしかしたら俺たち、つけられていたのか?
となると、俺が感じてしまった疑問が、確信へと変わってしまうんだよな。
「……もしかして今回の依頼、受けられるランクを偽ってましたか?」
「あら、ご明察よ」
「即答ですか」
ミスティに聞いたつもりだったが、その答えはギルマスから即答で返ってきた。
「どうしてそんなことを?」
「現在、ラグザリアにはあれだけの依頼をこなせる人材がいないわ。そして、あなたたちはランクに見合わない実力を兼ね備えていると判断してのことよ」
「それだったらはっきりと言ってくれたらよかったのでは?」
「そこは彼らを見てくれると、答えになると思うわ」
……この、俺たちを襲ってきた奴らが答えだって?
「……まさか、素行の悪い冒険者をあぶり出すために、俺たちを当て馬にしたってことか?」
「簡単に言えばそういうことね」
いや、それこそはっきりと言っておいてもらった方がよかったんだが? 殺してたらどうしてたんだ、このギルマスは?
「アリウス君たちには話があるのだけど、ゴブリンの巣の壊滅に伴って、大量のゴブリンを討伐したのではなくて?」
「そうでした。……あの、大量にあり過ぎて、魔法鞄に入れてきたんです。ここに出すのはマズいと思うんですけど、どうしましょうか?」
さすがにギルド内で出してしまっては、血臭で大変なことになるだろうし、床も血で染まってしまうだろう。
俺がそう口にすると、ミスティが答えてくれる。
「ギルドの裏に解体所がありまして、そこであれば問題はないかと」
「分かりました。その解体所に運び込んでからでもいいですか?」
「もちろんよ。その間に魔獣の解体もやっておいてもらうから、その方が効率的だわ」
ギルマスからの許可も得られたことで、俺は一度その場をあとにしようとした。
「そういうことでしたら、私たちは外で待っておきましょうか」
するとレミティアからそんな言葉が飛び出した。
そういえば、最初にギルマスと話をした時も、外で待っていてもらったんだった。
「もしよろしければ、皆さんもご一緒でどうでしょうか? 今回の依頼の件も謝罪したいですから」
「……えっと、いいのでしょうか、アリウス?」
「ギルマスがそう言うなら、いいんじゃないかな」
というわけで、俺たちは全員でギルマスの話を聞くことになった。
その前に立ち寄った解体所では、大量の上位ゴブリンを前に職員が目を丸くしていたのは言うまでもないだろうな、うん。
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