590:ショゴス→しょご○○

「ということで、ショゴス。いや、今後はこの娘が本体になるって事だろうから……しょごたんね」


「し、しょ……」


(しょごたん? それはダジャレなのかな)


「しょ〇たんは、しよ〇こにたんを付けた感じだから……しょごたんは、しょうごにたんを付けたものだ!」


(どうせなら私は万里と同性の名がいい)


(え? そうなの? 万里ちゃんと恋愛するとしたら、異性だろうから、男性で、名前はショウゴで渾名はしょごたんがベストなのかと……身体は女の子だけど)


 というか、ショゴス→章吾→しょごたん。綺麗。


「今さっき超閃いたんだが」


(今さっき閃いた案を決定事項として押しつけるのは止めて欲しい)


 まあ、女の子でもバッチリだよな。しょご→しょごたん。で。

 

(しょごたん……これさ、人造生命体の増殖とか……できるの?)


(しょごたん……確定か……肉片の再生は問題無い……が。心臓部に高性能の人造魔石が使用されている様だ。これの開発装置……あ。無理だな。この魔石は研究者が実験を繰り返してうちに出来た奇跡のアイテムだそうだ)


(というか、なんでそんなことが判る?)


(形は違うのだが……プログラム言語に所々コメントとして、古代語のテキストデータが書き込まれてる。一部日記というかレシピが保存されていた。この人造生命体のレシピが刻まれている感じか)


(つまり、そのレアな人造魔石、それが無ければ増やせないと)


(なぜ、増やすことに拘る?)


(うーん、なぜだろう? 繁栄を望むの種の法則では無いだろうか?)


(私が望むものではないのか?)


(そうだな……そうとも言う)


「……だ、だぎゃ」


(だが、これで……訓練すれば……万里と同種族的に接触できるということだろうか……)


(ん? あ、ああ。そうなる……かな)


(手を……繋げる……)


 ハッピーの力が溢れ出てくる。


(うれしい……凄く嬉しい……こ、この気持ちは……この……こみ上げる感情、いや、これが感情?)


(あ。肉体を得たことで感情に目覚めた、芽生えた?)


 何だスゴいな。マジデさっきから。生命の誕生、進化の過程を数分の間に体感させられてる感じだろうか……。


(つまり、これまで感情が入ってると思っていたのはシミュレートだと?)


(そういうことになるのだろうか? 万里の模倣だったのだろうか)


(それでいいんじゃないか? 思考や文化なんて全ては模倣から始まるわけだし)

 

 雌雄同体とかそういう……それこそ、性別の選択とかできないのかな? 魂の意志の力で。


(無理……だなこの身体は女性体だ。あ。だが、成長……するな。多分、人間と同じ様に成長し、老いていく可能性が高い)


 まじか。


(肉体の生誕、生成から、老化、消滅までキチンと作られている……と)


(元になった生物、まあ、人間の生体を強化して使用しているからな)


「しょ、しょごたん……」


「男性になれなかったのは残念だけど、万里さんと親友とかになれちゃうな」


(……うれしい)


 本当に嬉し……そうだ。というか、ショゴス、いや、しょごたんからこれまで感じたことの無い「思い」みたいなものが伝わってくる。


 ああ、これが本物の感情って事か。


「あ、あれ? 髪の色が……」


 髪の色が徐々に黒くなって……いる? ああ、睫毛とかも……全体的な体毛を含めて日本人っぽくなってきているのか。


「?」


 瞳の色も……茶色……か? ああ、なんていうか、輪郭があやふやで、今にも消えてしまいそうな存在だったモノが……人間に変化していってるということか?

 

 真っ白だった肌の色もほんのりと……日本人にしては白めだが……まあでも、黄色人種系に調整されていく。ツメや……指、肘、膝、脹ら脛、土ふまず、踝……ああ。なんだこれ、なんだこれ。今まで焦点がが合っていなかったのが、ピントが……ハッキリとしてきた。


 これが世界に存在するということなのか……。


ポロ……


 なぜか……涙が出てきた。止まらない。見れば……しょごたんの目からも涙が……零れて落ちる。止まらない。


「なんだ、これ」


「涙……なんだが、純粋に……生誕の喜びっていうことだろうか」


「こ、これが……これが涙……か。そうか……そうなのか……! 万里が、万里が良く目から水を出していた。これが。そうか。この切ない、けれど、ふつふつと湧き出てくる喜びは……これは嬉し涙ってことだな?」


 ああ、なんか、いいな。


「良かったな……しょごたん」


「しょご、た、たんはけ、けって、けっていなのな」


 お、本当にしゃべれるようになって来てるな……というか、さすが、学習能力が高い。習得速い。


(微細な……筋肉の動かし方がポイントだからな。これは万里を動かしていた時に習得している)


 そうか。真理さんを助けて維持するのにゼロから学んだ経験が生きているのか。


(というか、迷宮システムの復旧に支障は?)


 しばらくこっちに夢中になっちゃうのはしょうがないかな。


(それは大丈夫だ。私も……あの頃よりも能力が向上している。さらにこれまで魔族大陸側の迷宮管理や情報収集を行っていた分を回した)


(その分も迷宮の復旧に使えば……)


(元々迷宮システムの復旧作業は神力の経路接続、断絶したシステムの解析回復作業が主になる。そこに私というリソースを注ぎ込んでも、最大限に生かせるのは65%程度だ。解析当初であれば95%越えだったのだが、安定した今では余剰分が発生していた)


(なら問題無いな……というか、別にいいよ。しょうがない。こっちの「開発」はするでしょ。というか、こんなのあったら……動かしたくなるでしょ。止めろとは言えないよ)


(そうだ……な。すまん……)




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る