588:忘れもの

(俺は魔術師……俺は魔術師……)


 これでもう魔術師?


(鑑定してみるのがいいと思うが)


 ああ、そうか。また忘れてたや。操作室でなら自分の鑑定はできるんだった。


名前 村野久伸むらの ひさのぶ

種族 ハイエルフ


天職 魔術士

階位 82

体力 103 魔力 176 


天職スキル:【平静】【魔術伍】【魔増】【復唱】【輪唱】


=隠蔽=========

天職 迷宮創造主ダンジョンマスター

階位 44

体力 32 魔力 171 


天職スキル:【迷宮】【結界】【鑑定】【倉庫】【収納】

【異界接続】【渡界資格】【言語理解】【次元扉】


習得スキル:

【気配】【剣術】【盾術】【受流】【反撃】【隠形】【加速】【棒術】【拳闘】【魔術】【手加減】【周辺視】

=隠蔽=========

(変わってない……な)


(動いてないな)


(というか、この鑑定結果って、システム停止以降動いてない気がするから……これ、レベルアップシステムに含まれてるんじゃないか?)


(そういう事になるか)


(つまり、俺がこちらの世界のレベルアップシステムに気付いて、順応したとしても、動いてない以上、新しい数値は更新表示されないと)


(役立たずだな)


 まあ、そうなんだけどな。そもそも、ジョブチェンジがこんなに簡単に行える時点でおかしいんだよな。それだけでも感謝しないと。


(そうか?)


(まあ、うん、なんでも「ありがたい、ありがたい」って感謝して生きていると良いことあるって聞いたことがあるし)


(そうだろうか?)


 そこまで上手くいかないってことだよな。


 さて。純粋にレベルアップによる強化はかなわないとして。


 (魔族側の迷宮を掌握するのを続けた方がいいのかな?)


 (前にも言ったとおり、魔族大陸の迷宮は掌握しても大した神力は得られない。なので、移動用となるのだが、それも既に十分。もしもこれ以上……というのなら大陸南部……探査の難しい地域を……いやだが、あの地域で未踏破迷宮の魔力を探し出すのは……)

 

 そうなんだよなぁ。魔族大陸の迷宮を掌握し始めてしばらくして。大陸の南側は何故か探査しづらいと報告を受けている。その理由等を探るためには、多くのリソースを割かなければならず、現在行っている俺の迷宮の回復作業に支障が出る。少なくとも片手間に出来ることじゃない。なので、放置していたのだが。


 他に俺に出来る事はなんだろうか? 


 あれ? そう言えば……。


(ショゴス……そういえばさ、腹黒からもらった報酬って……ちゃんと調べたっけ?)


(ん? アレか? 遺跡探索協力の報酬ってヤツか?)


【収納】から【倉庫】に移動させて……すっかり忘れてたな。


(ああ。ホムンクルスと培養槽。あと、多分、ポーションの増幅回路と細胞培養槽。この三つだな。もらってきたのは)


(……ホムンクルスの他はかなり予想だよな?)


(そうなんだけどさ。説明したろ? あの時。多分合ってるよ。自分の生体パーツの複製を作っておこう計画を発動しておこうかな……)


 操作室の空いているところにお宝を並べていく。ホムンクルス培養槽は結構大きい。高さ1.5メートル程度、横が70センチ程度か。奥行き50センチくらい?


 動力の元になっている魔道具っぽい装置も一緒にもらってきているので、自律している。こうして改めて見ると持ち歩いて観察、データ収集するための容器の様だ。


(ん? これ「中身」入ってないか?)


(入っている。な。存在が希薄で気がつかなかった)


【隠形】なんて目じゃないくらい、そもそも……存在を感じない。が、確かに何かがある。いるではなくある、だ。培養槽に満たされている濃い緑の液体……その中に埋もれていた。


(さらに……水槽の内側に空間収納に似た魔術が施されていると思う)


(この培養槽……大きな水槽の持ち運び版……だと思ってもらってきたんだが……もしかして、あの研究室の最新施設だったんじゃ無いか? 小型化に成功した! って)

 

(それは……儲けたな? ってことか?)


 そうかな……というか、ちょっと怖い気もするんだが。中に入ってるのは、どう考えてもホムンクルス、人造生命体……。


 まあ、俺自身の生体パーツを作っておこうと思ってた所だったしな。んーと。開閉ハッチを捻り、蓋のようになっている上部を外す。


(【収納】【倉庫】と同じ様なシステムが使われているということは、ここから外に出すのも同じ様なやり方で可能ってことかな)


 さっき【倉庫】から取り出したのと同じ感じで、培養槽の中身を確認する。


 実験体8468918


 おうふ。やはり。実験中……だった魂の抜け殻か。まあ、【倉庫】と同じ様なシステム……ということは。


ズ……。


「実験体8468918」の取り出し、排出をイメージすると、そこには……女の子、多分、10~13歳位の少女の身体、抜け殻が横たわっていた。


 胸が動いている。


(息をしてる……)


(女性……いや、少女と行った方がいいか)


 俺よりもかなり小さい女性体。全身の体毛、髪の毛の色は白い。というか、多くの色素が抜け落ちている? アルビノ……ほどではないが、安定していない……気がする。なんだか見ていると不安になってくるな。ザワザワする。


 が。


 少女として認識すれば、小柄ながら肉付きやスタイルも良いし、顔の作りはかなり美形だ。ああ、要素は人間だが、エルフをモデルにしているのだろうか? まあ、多分、これを作った研究者の趣味趣向が大規模に反映されているのだろう。


(アレだな……過去の世界でも美少女……カワイイは正義なんだろうか)


(多分。そういうことだろう)

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