587:魔族暴走直前②
訓練をした後の温泉リラックスタイム。
(迷宮の作成部分……はなんとか起動出来そうだ)
なんという朗報。しかしさすが、ショゴスさん。アレ? あれ? でも?
(レベルアップの部分は?)
(すまん……一番大事なその部分は無理だった。どういじっても、まだまだ魔力、神力が足りない。【倉庫】にはアクセスできるのに何故なのか。優先順序が合理的じゃないんだ。作ったヤツを問い詰めたい)
それはまあ、うん、女神様ですから。
とりあえず、迷宮はいじれる……だけか。
まあ、うん、無駄じゃないんだよね。
今回、迷宮の階層設定、魔物の配置がいじれるようになったので……まえやっていた通り、地形や敵を変更して経験値稼ぎに適した感じに直せるのは大きい。
なんていうか「強さは滲み出る」と思う。
迷宮のレベルアップシステムが逝ってしまってから、俺のレベルは上がっていない。ここまで、ショゴスがジョブチェンジシステムを復活させてくれたからジョブを変えて対応してきていたが、そのうち限界は来るだろう。
だけど。ほのかに感じるのは、蓄積されている力が漏れ出しているという事実。そんな気がする……レベルだけど、前よりも確実に、じわっと強くなっている気がする。
何よりも【収納】【倉庫】の容量が増えている。純粋な強さには関係無いが、成長している証の一つだと思う。
活動中に蓄積されていく経験値がシステムを越えて溢れ出す。
ほんのちょっととはいえ、俺の能力がパワーアップされているのは、勘違いではないと思う。
(なんていうかさ、レベルアップシステムのない、今の状況が、この世界のレベルアップだったのかな? なんて)
(それは?)
(あまり真面目に考えてこなかったけどさ、こちらの世界の人……まあ、異世界の人類はさ、基本、自分の天職もハッキリ判らないし、そのスキルもあやふやなまま、経験則で使ってきたわけじゃない? これは多分、魔族も同じ感じな気がするな)
(ああ……)
(本能的にイロイロと試して、使える様になって……結果使える様になる人とそうでない人がいて。まあ、それは元々天職が違っていたりするから、仕方ないんだけど)
(
(ああ。つまりは。俺の今の状態が普通って感じなのかな……と)
(ということは?)
(俺もイロイロと試してみれば……もしかしたら、正解に辿り着けるかもしれない)
(?)
(んーとさ。俺は今、魔術士のレベル82のまま固定されてるだろ?)
(だが、実際の所はレベル82以上の力が使えている……と)
(そう。つまりは……俺は既に魔術士のレベルは99でカンストしていて、シロが言っていた……上位天職の魔術師に既に転職出来る……と想像して、思い込むことで「いつの間にか」そうできてしまうんじゃないだろうか?)
(だが……レベルアップ時に習得できる様々な情報は入手出来ないな)
(それは出来ない。○○を覚えたとか、そういうアドバイス的なメッセージも伝わってこないしな。まあだけど、魔術士の時に使えた術は、パワーアップできるんじゃないか? くらいの想像はできるし、それを使える様になるんじゃないかな)
(もの凄く効率が悪い)
(ああ。だが、この世界の天職やレベルアップのシステムはそういうあやふやな状態だったから、今の……なんていうか、曖昧で適当な世界になっちゃってるんじゃないかな。というかさ……これって向こうの世界と変わらないのさ)
(そうか……確かに。地球世界はそうだった。本来はステータスなんて見れないか)
(俺は自分がどれだけ効率的に成長しているかを忘れていたな……)
ガチャ
「御主人様。マッサージいたしましょうか?」
森下が当たり前の様に中に入ってくる。身に付けてるのは濡れても問題無い、薄い生地で作ったメイド服風のベビードールというか。まあ、裸だと俺がなんとなく気まずいのでなるべく着てもらっているヤツだ。
源泉掛け流しのおかげで、この風呂場は常に暖かい。なので、垢すりとかマッサージとかもしてもらっている。というか、松戸、森下が提案してくれたので、ベッドも作ったのだ。
バスタオルを敷いて、準備OKだ。ちなみに、森下はパワータイプ。松戸は丁寧なタイプのマッサージをする。二人ともプロの戦闘屋、体術使いだけあって筋肉を揉みほぐすのも非常に上手い。
「森下。鍛錬を続けている以上、俺も強くなってるよな?」
「はい、確実に強くなってますね。魔術無しでも既に、我々と渡り合えるくらいにはなられてますし」
うつ伏せになった背中から腰を揉みほぐしながら森下が答える。
魔術士として活動することが多いとはいえ、体幹の強化を考えると身体能力を上げておくことはプラスになるはず……と考えて、日々、森下、松戸に組手の相手をしてもらっている。
拳闘士に転職すればそれなりに戦えるが、最近は魔術士のままで、魔術を使わずに戦うことを考えてそのままやっている。決していちいち管理室へ行って転職するのが面倒だからじゃない。
「ということは、能力値は上がってるということなのかな」
「上がっている……のではないでしょうか? 技が磨かれた……のに加えて、単純な力やスピードが上がっています。それは確かですから」
そうか……。
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