574:カンパルラよりもぼろい都市

(目立つ様な大規模な自然……観光スポットみたいな地形は見当たらない) 


 確かに。上空から見て……ショゴスの言う耕作地以外は、森、川。くらいだったか。広大な草原とかあってもいい気がするな。

 うーん。まあ、その辺は地形とか気候とか……あとこちらの世界だと魔物次第、か。


(人族大陸よりも、東の方が、一定距離……港湾部や河川沿いなどを中心に作られたと新造の都市が多かった。ほとんどが城砦都市だろう。以前潜入したアムネア魔導帝国の帝都よりも規模はかなり小さい。カンパルラとそう変わらない人口と予測する)

 

 えっと……歴史ある城砦都市は過去の遺跡や廃墟の上に建造されていることが多いんだったか? 確か。


 歴史ある都市ほど、遺跡の上下水道、特に浄化装置の魔道具を利用して衛生管理されているんだよな。カンパルラが臭わないのもそれが理由だったし。


 だが。歴史の浅い都市、近年作られた様な城砦都市は「地理的に必要」という理由で作られており、遺跡などを利用していないことも多いと聞いた。


 アレだ、ハーレイ帝国へ行く際に寄ったダーディド共和国の西端の城砦都市、リクシードなんかは、臭いが酷かったもんな。


(臭い大事か)


(大事だな。正直、俺がカンパルラを拠点にしようと決断した、大きな理由の一つだし)


(日本の街は確かに臭わないからな。逆に、森や川なんかで「良い空気」と言っていた気がする。万里が)


(戦後数十年とかその辺りだと、公害とかで都市部の河川沿いは酷い臭いだったとか聞いたな)


(あ。工場からの排煙問題とか? あったな)


 その手の……自然破壊による汚染……みたいな感じになってるわけじゃないのだな。魔術とか魔道具がある世界は、科学や機械が進化しないのは、なんていうか、人族、魔族関係無く共通の流れか。


(いや、もしかしたら、魔力に長けた魔族社会の方が、科学分野の進化は遅いんじゃないだろうか?)


(そうかもな)


 そういえば……あの壁の向こう側って、かなり大きな砂漠だったよな……。


 魔族側は壁のギリギリまで森……大森林が続いている。


(なんでこんなに自然環境の違いが出るんだ?)


(……多分、魔力の大きな流れ、龍脈だったか。カンパルラの側の地下に流れているエネルギーの筋道)


 ああ、この星のエネルギーの流れであり、魔力とか神力の流れ、うねりでもあるんだっけかな? それがあるから、俺のダンジョンはカンパルラの側に設置されたと言われたような。魔力が枯渇しつつある世界で、困らない様に……。


(そうか。下手な位置に迷宮を設置してしまったら、魔力不足で……赤き巨竜レッドドラゴンの火口迷宮……みたいなことになる可能性があったということか)


(そうだな。まあ、火口迷宮の迷宮創造主ダンジョンマスターが、世界の魔力不足で消失した……ワケでは無いと思うが。アレは別に理由がありそうだ)


 そか。レアケースだよな。多分。設計建設中の迷宮なのに、あんな強いボスがいるなんて。


(そう思いたい)


 変なフラグ立てないでください。


(正面左手。大障壁に近い森の中に、城砦都市発見。というか……この地域……迷宮もかなり存在するな)


 なんていうか、上空からの「魔力感知」でなんとなく迷宮を識別出来る様になっていた俺だが、魔族側の迷宮はいまいち掴めて無かった。


(ああ。なんていうか、確かに「掴み」難いな。私も注意して感知しなければ、こちら側の迷宮はスルーしてしまう。なので、高高度を高速で移動していた際の情報収集は、正確性に欠けると言ったのはそういうことだ)


 だから、なんていうか、これまでの様なハッキリした答えが返ってこなかったのか。


(すまないな)


(そりゃしょうがないでしょ。俺が頼りすぎなだけだ)


 念のため。歩いて数十分程度の森に降り立つ。


(あ。空を飛ぶ魔物……飛竜とか狂暴な鳥とかは?)


(現状、周辺には感じない。森の中には鳥や昆虫系の魔物が飛んでいるとは思うが)


 うげ。昆虫系はなー。避けたいよな……厄介だし。魔族に取っては違うのだろうか?


 森林の合間に出現した、魔族の城砦都市は……うーん。なんていうか、カンパルラなんて比べものにならないくらい古ぼけていた。


(古い……なんてもんじゃなくて、遺跡で暮らしていると言う感じか?)


(ああ、遺跡を増改築して都市にしているな)


 遺跡……が元になっているため、森に浸蝕された城壁は、壁として機能していない。

 それこそ、道沿いに行くと、門っぽい検問所が見える……が、その横から余裕で都市内へ踏み込めそうだ。夜とかに「隠密」でも使えばさらに楽勝というか。


(まあでも、森の植生を見ると、カンパルラに近いのかもな)


(カンパルラから人がいなくなって、百年位経てばあの都市の様に朽ち果てる気がする)


 それは……現状あそこに住んでいる魔族に失礼だろ。


 列に若干並んだ後、マキャルスの身分証を提示する。アムネア魔導帝国の帝都で潜入した時に作ったアレだ。


 魔族の傭兵ギルド、商人ギルドで登録されている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る