572:東へ潜入

 魔族生息域の辺境……と思われる地域(主に森)で幾つかの迷宮を掌握した。


 この近辺には、比較的生まれたばかりの、階層の浅いモノが多い様だった。


(魔力が希薄になっている……というのに、なんでこんなに迷宮が生成されているんだろうか?)


(判らない。どう考えても数は減りそうだし、新規発生もしなそうだが) 


 うーん。この辺なんかチグハグなんだよなぁ。人族生息域もそうだったなぁ。なんで、そんな余裕があるんだろうか?


(まあ、その迷宮生成の秘密は置いておいておくか。今考えても良く判らん。確かに、迷宮間の転移は可能……だな)


(やはり、基礎仕様、システムは人族生息域の迷宮と一緒だ。やれること、できること、まあ、迷宮システムの判りにくさもそのままだな)


 そうか。まあ、ロゴブロックシステムは俺の迷宮専用か。


(さて。どうする? ワープポイントとしては使えないな)


 そうなんだよなぁ……ここから人族生息域へ跳べないんだったら意味がないんだよなぁ。


 とはいえ。


(よし、このまま、東の果てへ向かおうか。無限大障壁にぶつかるんだよな?)


(多分そうなるな)


(そして、その境界線の辺りにはシファーラ合衆国が存在すると)


(シファーラ魔導合衆国だな。それの大障壁の側は確かリエタ連邦だったハズだ)


(魔族の国への侵入斥候は前回のアムネア魔導帝国の帝都の時と同じ感じで平気だよな)


(魔族の感知システムは基本、魔力だ。私が魔力総量の隠蔽変更が可能だからな。上手い事潜り込めるハズ)


 まあ、実際に行ってみないと判らないか。


(アレだよな、額に角の痕みたいなのを付けておかないと)


(前回は【隠密】で頭を上げないようにして誤魔化したけれど)


(ああ。ちょっとギリギリだったからな。前回。似たようなのを作っておいた)


 魔族の身体的特徴は、人族と変わらない。唯一の違いは額にある角の痕……角質の様なモノだ。まあ、それもよく見たり触ったりしないと判らないのだが。


(なので、魔族の遺体からその角質部分だけを削り取ってきた)


(……そういうの気にならないのか?)


(ならんね。じゃなきゃ、戦利品の指輪をこうして付けたりしないって)


 俺の指には反魔術領域生成指輪が鈍く光っている。これ、常に魔力を篭めておかないと怖い……アレだ、スマホの充電を常にやってないと不安になるのと同じというか。


 まあ、なので、常備して、こまめに魔力を蓄積している。


(それ……は装備品だしなぁ)


(追い剥ぎなのは変わらん)


 おでこに、角質を付けて、魔力で固定する。なんか、こんなんも出来る。接着剤みたいに使えて便利だな。普通は膠とか、錬金術で作り出して……だと思うんだが。


(うん。何処からどうみても魔族。魔力も調節して平均的な魔族と同等になってるし)


「帳の外套」を装備する。こいつは「身隠し」の効果が付いているし、何よりもデザインが魔族の軍隊の黒いフード付きコートに似ている。デザインが似ているということは、衣装センスが似通っている=外見的な美的センスがその辺……ということになる。


 魔族と人族は、かなり長い期間交流がないんだけどなぁ。その辺、大きく食い違っていてもいいのに。そういえば、アムネアの帝都に行ったときもそまで違和感無かったもんな。


 それこそ、あれだ、男がスカートを履いてるとか、女が全員髪の毛が立ってるとか、そういう……。


(まあ、それはあり得ないけれど、確かにそれくらい違いがあってもおかしく無いか)


(だろ? 既に千年以上、壁と森で区切られてきたみたいなのに)


(そもそも、文化が停滞している……魔力、魔術のある弊害か。地球で千年あれば、牛車から自動車だし。紙からスマホまで進化してる)


(そうだな……エルフとか寿命が長い種族がいるのも関係しているのか……うーん)


(そもそも、人間の性能が、根本的に違うのかもしれないな)


 その可能性も高いか。外見は同じだけど……発想力とか、発明力というか、何かを進化させる力というか、そういうのが足りない気もする。良い人や、頑張ってる人は多いんだけどなぁ。


 さて。準備万端だ。


(魔力偽装は問題無いんだよな)


(問題無い。これはサノブのスキルじゃなくて、私の能力だからな。任せてほしい)


 おう。信頼しているよ。ありがたいね。


 魔力の数値化はショゴス担当だ。俺が【鑑定】が使えた時から、他人の魔力は見えていなかった。


 魔族の都市に潜入する際には魔力測定が行われる。それで魔力が余りにも無いと、亜人……人族や獣人族を疑われて、細かくチェックされてしまう。

 魔族が亜人と蔑む人族の魔力は、基本、10以下。というか、5以下が普通の様だ。


 魔族の魔力は平民で約20弱。貴族は60くらい。軍隊の指揮官達も大体60程度、筆頭指揮官が70弱。さらに、上級貴族、または帝都を仕切っていた者達の上限が約90だったかな? 

 これは、軍隊内だけでなく、アムネアの帝都でショゴスが平均値を弾き出した結果なのでかなり正確だと思う。





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