571:魔族生息域の迷宮
まずは。空からだ。
数日の休暇の後。予定通り、魔族の生息域、魔族大陸へ移動を開始する。まあ、空飛んで、東へ向かうだけなんだけどね。
高度を5000メートル程度まで上昇して、それから東に向かえば、うざい虫もドラゴンも襲いかかって来れないどころか、多分、気付いていない。
(前回もこうして、まずは上空から地図を把握するために、魔力の感知を含めて探索したと思うのだが……正直、迷宮の反応は無い。のだが)
(だが?)
(こちら側に迷宮が無いのはおかしい……と言われてから探ってみると。判るか? 私達が知っている迷宮とはかなり違う魔力反応が……迷宮と同じ様な場所に点在している)
……そう言われて……自分でも【気配】を感知しようと試みて……初めて気がついた。
(確かに。魔力は違うが……この淡い魔力の感じは……地下深いダンジョンコアに似てるな)
(ああ。正直、意識するまで認識出来ていなかったが。やはり、魔族の生息域にも迷宮が存在するな。私達が知っている迷宮と同じ……かどうかはともかく)
(そうだな……なんで魔力の質がこんなに違うんだろうか?)
(行ってみなければ判らない……)
(まあ、そうだな)
(とりあえず、近場で、比較的最近出来たばかりで、未発見な迷宮……に似ている反応に向かってみるのはどうだろうか?)
東から北へ進路を変更し、深淵の森ほどではないが、かなり深く大きい森の奥深くに存在する反応向かって降下した。
(……似ているな)
確かに。未発見の迷宮……人、ここだと魔族が出入りしている形跡が見当たらない。そのぱっと見は俺達が見て、【掌握】してきた迷宮の入口近辺に非常に酷似していた。
(とりあえず、入ろうか)
入口から足を踏み入れた。
うーん。正直、もの凄い違和感を感じる。
見た目はそっくりというか……ほぼ同じなのに。
人側の迷宮は、中に入ると、なぜか、少し懐かしい気がしていたのだ。まあ、それは俺の天職が
だが、この迷宮は……違和感と言うよりも不快感を感じる。なんだろうか。
(私にその違和感は判らないが……確かに迷宮から感じる魔力に似ているが、確実に何かが「いじられている」感じだろうか)
ああ、そうかもしれない。元は同じ……なのだ。だが、魔改造というか、改変というか、あまり好ましくない方向でいじられているというか。
迷宮を進んで行くと、普通に……ファングベアの亜種が登場した。
うーん。ここ、多分、浅い……な。
(二階層……で最奥? だろうか)
(ああ。まだ、ボスらしいボスもいない様だ)
二階層目もファングベアが複数体で出現するようになっただけで、変化らしい変化は無かった。ショゴスの言うとおり……最奥手前に居るはずのボスもおらず、ファングベア亜種が五体たむろしているだけだった。
当然、一蹴して、最奥の管理室へ進む。
目の前の壁に窪み。そこに、これまで見た事のないタイプの……ゴツゴツとしたダンジョンコアが鎮座していた。
「掌握」
これまでの迷宮と同じ様に、掌握しようとしたが。跳ね返されてしまった。拒否? 反応?
(……これは。人族側の迷宮の上に、何か別物が寄生している……感じだろうか。少々調べる)
(あまり無茶はしなくていいぞ?)
(ここは非常に未熟な迷宮の様だ。非常に単純な作りになっている。何か……情報を抜き取られるようなヘマはしない)
(判った)
この迷宮は……古代迷宮:天然洞窟……とかかな?
(惜しい。ここは、古代迷宮:洞窟改だ)
(お。はやい。何か判った?)
(とりあえず、魔族の生息域の迷宮、全てがこうだとは断言できないが……少なくとも、人側の迷宮とは別モノの様だ。元は同じというか、元になったものは女神製なのだが、凶悪に変更が行われている)
(凶悪?)
(この迷宮に施されているだけでも、敵=冒険者等が侵入してきた場合、魔物が中途半端な状態でも生成される、とか、ボスに負けるとそのまま、強制的に
……そういえば、さっきのファングベア、片腕が無いヤツがいたな。そういう固体が居てもおかしく無いだろうとスルーしていたが。
(さらに……迷宮内で一定数を超えた魔物は、迷宮外へ積極的に排出される。迷宮を管理する気が無いな……これは)
(そもそも、
(じゃあ、掌握は難しい?)
(時間がかかるし……多分、共有している部分がほぼ無いので、人族の迷宮への転移は不可能だな。掌握したとしても出来るのは、魔族側の迷宮間の移動くらいか)
なんでそんな事になっているんだ?
(それを知るためには……正直、この迷宮では何もかもが足りない。非常に情報量が小さい)
ショゴスに調べてもらう……のはちと無茶か。そんなリソースがあるのなら、まずは俺の迷宮のダンジョンシステムのOSの再起動を進めてほしいし。
(確かに……そうだな。こちら側の迷宮の解析は後回しにした方がいいだろう。それこそ、シロメイド長が復活すれば、その知識の中にその謎が存在するかもしれない)
(ああ、そうだな……)
確かに。シロの知識は何かキッカケがあると、いきなり、思考可能領域、資料閲覧可能領域が広がると言っていた。俺たちがこうして発見した情報を元に、詳細を掴める可能性が高い。
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