566:スタンピードの真相

 迷宮はダンジョンコアが生成される事によって発生する。そして迷宮創造主ダンジョンマスターは自然発生したダンジョンを掌握して、そこを支配する。


 俺の様な、オモチャ屋でロゴブロックを買って組立て始めたら、いきなり扉が出現して「はい、迷宮ダンジョン」何てことは無くて。


 とりあえす、この火山の迷宮は、中途半端でまだ、公開前? だったか、序盤まで公開して後半を作りかけだったか判らないが、なんとなく俺と同じ様に迷宮創造主ダンジョンマスターが存在し、作っていたような気がするし、痕跡があるのは確かだ。


 しかし……そんな人間味溢れる迷宮創造主ダンジョンマスター……の気配は相変わらず存在しない。


 魔力を一切……感じないのだ。微弱だが……動かないアレは……多分、これまでの経験からいって、ダンジョンコアだ。


 ここがラスボスエリア……最下層なのであれば、この階層から、制御階層への入口が存在するはずだし、実際、俺の迷宮創造主ダンジョンマスターとしての能力が、この下への入口を伝えてきている。


 なんだっけ、白い、シロの部屋。迷宮管理室だったかな? アレがあるのは確実だ。


(つまりは、既にこの迷宮の迷宮創造主ダンジョンマスターは死亡もしくは消失しているということなのかな?)


(ああ。もしも他の迷宮創造主ダンジョンマスターや、冒険者なんかに殺されていたなら……「掌握」されたりこのダンジョン自体が潰されてたりしているハズなんだよな)


 確かそう聞いた。


 ん? そう言えば……迷宮創造主ダンジョンマスターが他の迷宮創造主ダンジョンマスターの迷宮を掌握するには……自分の手駒の魔物で迷宮創造主ダンジョンマスターを倒すしか無い。

 というか、迷宮創造主ダンジョンマスターは自分の迷宮から離れることが出来ないんだよな?


(掌握戦について……意図的に公開されていなかった様で……夢中になる迷宮創造主ダンジョンマスターばかりになることを恐れた……とかでしょうか?)


 なんてシロは言っていたけれど。ただ単に、迷宮外へ出ることが出来ないから掌握なんて出来なかった……が正解じゃないか?


 この辺の迷宮創造主ダンジョンマスターについて、迷宮についての知識は魔力が失われつつあったこともあって、資料がドンドン失われている様なことも言ってたから……シロも知らなかったとか、か?


(掌握戦は可能だと思うぞ?)


(ぬ。どういうこと? シロはそんなこと言ってなかったよな?)


(ああ。言っていなかったが……私はサノブの迷宮のシステムの解析を行っている際に、その辺の情報らしきモノ……に触れている)


 ああそうか。もしかしたら今や、シロよりもショゴスの方が迷宮に詳しいかもしれないのか。SEに近い仕事をさせてるもんな。


(当然、それらの情報はあやふやで、確定ではないからな。鵜呑みにされると困るのだが。掌握戦……の詳細はあやふやのままだが、サノブ以外の迷宮創造主ダンジョンマスターは自分自身が迷宮から外へ出ることは難しいが、高レベルに達した場合、自分の分体を創り出すことが可能だった様だ)


 分体。か。ソレを使って掌握を行うと。


(ああ。だが、それは確かに困難な作業だったようで。分体を産み出すのも膨大なエネルギー、リソースが必要だし、何よりも通常の迷宮創造主ダンジョンマスターには他の迷宮の情報を収集する方法がないのだ)


 冒険者を……魔術で洗脳するとか? 


(ああ、だから、そういう高度なことができる迷宮創造主ダンジョンマスターであれば、掌握戦を行い、自分の力を増加していったなんてこともあったかもしれない。が、少なくとも……大抵は、手駒の魔物で攻め込んで、ボスを倒し、迷宮創造主ダンジョンマスターを倒し。安全が確保されてから、最後の最後で分体が登場してダンジョンコアを掌握するという形式の様だ)


 つまり、分体で殴り込む……ってわけじゃないと。


(分体は、迷宮創造主ダンジョンマスターの分身にして、魂を分かつことで生成される。つまり、失った場合、魂の消失状態となり、それは非常に大きなダメージだったのではないか?)


 ほ、ほう。さすがショゴス。


(ちなみに、今、分析して思ったのだが。迷宮からの狂乱敗走スタンピード……な。アレ、迷宮創造主ダンジョンマスターがどこかの迷宮を掌握しようとして、自分の所の魔物を外に出したまではいいが、指揮するのが難しくて、支配不能になってしまった結果……というのも結構多そうだ)


 そうなの? 掌握戦のミスで迷宮からの狂乱敗走スタンピードって起こったりしてたの? 


(まあ、通常フィールドで自然発生することもあるし、迷宮の暴走で魔力を無駄に吸い上げて……というのが一番多いハズだが)


 黒くなってしまった火山、火口エリアを移動し、小高い位置にあった窪み、小さな洞窟の奥に見慣れた扉を発見した。


 おもむろに開けて。中に入る。


 ああ。何となく知っている空気だ。





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