565:魔力と気力
ドドドドドドドドドドドドッドッ!!!!!
大量の【石棘】が。黒い塊と化した巨竜に次々と穴を開ける。というか、さすがに全部粉々に砕け散ったら……さすがに死ぬよね? 倒せるよね? あれ? 魔力による思念体とかそんながっかりなオチは無いよね?
(無いと……思う。アレはどう考えても質量を伴う兵器、魔物だ。それこそ、アレに踏み潰されて死んだ者も多くいるだろう)
ですよね。ならば。うん、ソレを信じて。
さらにたたみ掛けるように。過剰でも構わない。怯えてるのかもしれない。ここまで強力な敵は……これまで相対したことがなかった。
これまでの何倍もの特別製【石棘】が生成され……落ちてゆき……加速して巨竜を抉る。
抉る。抉る。抉る。
いつの間にか反撃は無く、こちらから攻撃するだけになっていた。
黒い塊が穴だらけになり、欠けて、砕け、散らばって、黒いシミとしてしか認識できなくなった頃。
「ハアハハアハアハア……ゲハ……」
(大丈夫か?)
(すま……ん、下に……降ろしてくれる?)
消失感がスゴくて……細かい制御が……効きにくい。
(ああ、それくらいなら……というか、そこまで消耗するのはどうなんだ?)
(魔力はまだある……まだあるんだ。だけど、単純に、魔術を行使する「意志の力」が……途切れた気がする)
(……ああ。なんとなく判った。気力……ってヤツか。いやでも、それは……向こうの世界の力……の様な……いや……)
(?)
(気力は……
(ああ。確かにそんな感じだったと思う。師匠の所で修行してた時に意識してた力だな)
魔力と気力……は似ているし、若干流用できている気もするけれど、根幹は別もの……ってことか。
俺の所有する【闘気】というスキルは、気力を30秒間使用出来る。というか、これ、いつの間にか使っちゃうんだよね……過去に気合を入れた戦闘では、大抵使用しちゃってたし。
ただ、女神様にこのスキルを授けられた時は二十二回しか使えなかったのが……今では多分、百以上……ひょっとしたら五百回くらい使えるような気がするくらい使えるので、意識して無かったのだ。
そうか……そういえば、気力と魔力の違い……女神様から直で聞いたこと無かったか。なんか曖昧なままで、なんとなく感触では、呼び方が違うのか? くらいに考えていた。
いや……まあ、うん、それは後でいいだろう……。
「アイツは……死んだ?」
と言うやいなや。黒いシミがぶわっ……と何度も見たことのある光の粒子に変化し……規模が大きいからか……まるでゲームのCGエフェクトの様に舞い上がった。
(綺麗だ……)
確かに。綺麗だ。身体が大きかったからかな……多分。その分、消え去る光の粒子のエフェクトも大きかったし。
(ち、ちと……休憩で。ポーションもこれ以上飲むのはちょっと気持ち悪くなりそうだし)
そういえば……俺は、時間が止まっていた頃のダンジョン以外で、今回の様なギリギリの戦いをしたことが無かった……のか。俺は。それこそ、ポーションは既に、どう考えても飲めない。普通の飲み物であれば、無理すればもうちょっと飲める……んてこともあるけど、これはどうもそうはいかないようだ。
(火口……の温度が丁度良いくらいに下がってて良かったな)
(ああ……そうだな)
ショゴスの言うとおり、通常の行動を阻害するレベルの気温に設定されていたこのエリアだが……現在は若干ヒンヤリとした15~16℃くらいだろうか? こうして、横たわっていても心地良い。
目をつぶると、今の戦いの反省点ばかり思いついてしまう。というか、もっと上手く戦えなかったのだろうか? と。ここまで自分の身体に傷を付けなければ勝てない相手だったのだろうか? とか。
確かにレベルは俺の方が低そうだった。だが、【結界】による圧縮とか、使用していないスキルとか……まだまだ工夫できそうな余地は多々あった。
しばらく……約三十分くらいだろうか? 仰向けに倒れたままでいると、身体が自由に動かせる様になってきた。
同時に、自分の損傷具合を確かめる。
炭化して消えて無くなりそうだった肩から腕にかけては、既に新しい肉体が生成され、なじみ始めている。
衝撃で損傷したであろう内臓なんかも、ポーションを飲んだことによって、修復された様だ。
好調という事は無いが、それなりに動ける様には復活出来た様だ。
(大丈夫か?)
(ああ。大丈夫だ。それにしても……なんていうか、よく考えれば考えるほど、ここまでのザコ敵との強さ、レベル差が酷くないか?)
(つまり、ここが作成途中のダンジョンであった……ということの証拠かもしれない)
(まあ、そういうことになるのか。というか、もしかして……あの
(そう言われればそうかもな……この火口の階層、スゴイ力はいってるし)
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