564:レッドドラゴンの真の力

 穴だらけになった巨体……いや、既に黒ずんだ火口の一部となったヤツは。


 だが。まだ。反応が。


ドビュ!


「グッ!」


 細い……ここに来て対応したのか? 細く小さい針の様な火炎噴石……が。これまで飛んで来たあらゆる物の中で最速で俺に届く。


【結界】は破れていない。が。ソレごと俺を貫こうと……衝撃を与えた。


(ちい。イチイチ、こちらが、気の緩んだ瞬間を掴んで……攻撃を仕掛けて来やがる)


(ああ。これ、多分、【石棘】を真似されたぞ)


 そう。さっきの細い火炎噴石は異様な硬度だ。あの速度で【結界】に衝突して粉々に砕け散らない時点で……おかしい。


 製法から使用法まで、見事に真似されて……俺よりも上手く制御してやがる。


(あの巨竜……巨体を固くすることで防御態勢に入った……感じだと思う。つまり、あの身体を維持して戦闘することを放棄したことで、そのぶんの魔力がまだまだ豊富に使えると)


(第二形態に追い込んだってことなんだろうけど……魔力山盛りなのか~)


 ちい。その辺の魔力を使いこなすやり方……は俺よりも経験豊富なんだろうな。巨竜が……というよりもアイツをここに設置した迷宮創造主ダンジョンマスターが。


(なんていうか、あの攻撃してきた針の大きさから考えて……これまでのは大型の魔物や自分と同等の存在と戦うために使われていた技や術、スキルで……さっきのからは、対人用の武器に切り替えたみたいな)


(そうなんだよあぁ……命中させる腕があるのなら、人間サイズの生物を破壊するNONAなんて、この程度の物質で十分脅威を与えられる。次は多分、これを大量に……散弾の様に)


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッゴゴッ!


 やっぱり。


 俺の居る場所ピンポイントで、針が……襲い掛かってきた。


「まあ、うん、さすがに予想出来たしね」


【結界】「正式」の外側に透明な「ブロック」を幾重にも配置して。


 やはり。「ブロック」は盾として優秀だ。というか、ここまでじり貧に追い込まれてくると良く判る。


「ブロック」を生成し配置するという事に対する消費魔力が異常に低い。というか、熟練したからかなんなのか、俺は既に、思考の先に向かって瞬間で配置させることも可能になっている。


(俺の……【結界】はまあ、チートなんだと思うけど。この「ブロック」は女神特別製作による固有スキルユニークチートなんだろうな。今さらながら思うけれど、身体にフィットしすぎてるもん)


(まあ、確かに……【結界】「正式」を100で完成させるのに対して、「ブロック」は1かかってないからな……よく考えると同じ様な特性のスキルであるのに、ここまでの差はおかしいな)


(そうだよな。それこそ、【収納】とか【気配】なんかにかかる時間は?)


(えーっと。【結界】「正式」を100と仮定した場合で言えば……【収納】は150。【気配】は570くらいだな)


(それさ……俺の現在のスキル全部でデータ化すれば、俺がどういう方向に向いているか? とか判ったりしない?)


(うーん。個性ということか? いや、これはなんていうか、世界のシステムに設定されたスキル毎の因果律の数値というか。それこそ、世界を歪める可能性の高いスキルは発動までに時間がかかって、低いスキルは発動が早い……んだと思う)


(【結界】……そう考えると世界を歪めるレベルで無茶だと思うけど?)


(だから、「ブロック」だけじゃなくて、その能力自体が……世界の根幹一部なのでは?)


(世界の根幹の一部?)


(女神に近い力……とか)


 つまりは。甘やかされてるということか……。まあ、うん、そうだよね。何となくだけど、俺を甘やかしてる……という感触はあるもんな。もの凄くありがたいけど、正面からやられると気まずい好意。


 死なないようにって過剰な加護を与えた……って感じか。


(ああ。万里の……お祖父ちゃん、お祖母ちゃんから受ける、打算の無い愛情と似ている気がする)


 そうかぁ……祖母祖父共に知らないからなぁ。その愛情の感触は判らないなぁ。


(第二弾、来るぞ)


ガガガガガアガッガガガガ!!!


 回転が加わり、さらに、硬度が高い。そして、その上、これまでよりも高熱が加わった。


 イロイロできるんだなぁ……と感動してしまう。


 とはいえ、こちらも既に準備万端だ。「ブロック」の間にさらに「正式」を挟み込む始末。その上、クッションの柔らかいイメージで……【結界】「シリコン」という……なんていうか、訳のわからない「なにか」が生成されてしまった。

 イメージとしてはアレだ。5メートル上から卵を落としたのに、割れない、シリコンシートの分厚いヤツだ。その上、高熱を吸収しようと考えたせいで、液体ではないのに流動する不思議物質が壁になってくれた。


(それ、絶対……何かおかしい)

 

 俺もそう思う。


 これで既に衝撃を吸収し、巨竜の不思議魔力による攻撃を完全封印だ。


 残念ながら、大量の散弾の様な針は、俺に一切届かず、落ちてゆく。この状況でも砕け散っていない時点で、ヤツの必死さが良く判る。



「そして」


 こちらは巨竜の真似だ。俺の特別製の「石棘」がヤツのノウハウでさらに固くなり、回転が加わった。さすがに高温にするのは、ちょっと魔力消費的にキビシイ。テクニックとして覚えておくが、今は我慢だ。



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