559:迷宮のあれこれ

 様々な要素の効率化がスキルの正体なんだと思う。


 俺は現状、レベルが上がらなくなっている事もあって、範囲魔術を使用出来ない。なので単体魔術を複数生成して、範囲魔術的に使用するやり方で……力押ししている。

 当然反動は大きい。スキルの有る無しで魔力消費が異常に良くなるのだ。

 

 だが。それが出来る事に気付いてしまったから……究極言えば、スキルを無視しての力押しも可能だ。


 無茶をしている……という感覚は無いのだけれど。


 まあでも、その手前、一歩手前で留まって「普通」の冒険者ならどうするのかな? というのを考えてみて、それから地道に解析しながら、攻略していこうかな? 


 今回の迷宮攻略はそんな……基本に立ち返ってみた。


(なんていうか、この迷宮はかなり難易度が高いんだよな?)


(多分? 確定では無いが……登場する敵は確実に、サノブの迷宮周辺、カンパルラ辺りの魔物よりも強い。というか、深淵の森に近付いている気がする)


 それはそう。


 多分、ハイオークよりも、火蜥蜴の方が強いと思う。素早さとかは同じ様なものだけど、火を吐くからね。あれ範囲攻撃で油断してると大やけどだろうし。


 とはいえ。


 二十階層のボスを超えたら……基本、それまでの繰り返しになってしまった。


(登場する敵……魔物もなんていうか、同じ?)


(階層が深くなるほど、敵は強くなってる……と思う)


(なんとなく?)


(外見は変わらないよな?)


(変わらない。色や背中の角? の数も同じだな)


 登場する魔物は同じヤツラばかりだったが、エリアの地形はドンドン火山の只中へ降りていく感じになっている。


 気温は上昇し続けている。これ、普通に活動するのって厳しいんじゃ無いだろうか? 


「水流操作」で産み出したクーラー魔術じゃ追いつかなくなってきた。


【結界】「正式」を纏う。


 単純に、ちょい面倒くさいけれど、クーラーの術の方が魔力消費が少ない気がしたのでこれまで使っていなかったわけだが。もう限界。魔力消費が若干大きくても、外気温の遮断を付与した【結界】だ。


 そもそも、【結界】「正式」は非常に魔力消費が激しい。他の魔術に比べるとかなりのもんだ。「ブロック」が超コスパ良いからなおさらなんだろうけど。


(しかしこれ、純粋にハードルが高すぎないか?)


(ああ……古代の冒険者は優秀だったってことかな?)


(魔術を頻繁に使い続けることができないと……最大魔力量が多くないと。厳しいな)


 そうなんだよなぁ。昔は今よりも世界に魔力が溢れていた……とはいえ、俺の【結界】と同等の魔術を、常時発動させて探索……っていうのは現実的じゃないよなぁ。


(何か……攻略に必須なアイテムがあった……とか?)


 もしも、アイテムや魔道具でどうにかしていたんだとしたら。当然、錬金術士の俺が……ってアレ? そういえば。


 冷却具……か。結構前。病気治療薬が作れる様になった【錬金術・伍】のレシピにあったな。もの凄く単純で簡単で……工房の冷蔵庫作成で使用した。


 ああ。基本はもの凄く簡易で小さいんだから、そのまま各種装備に付与してしまえるってことか。確か、冷却具本体よりも蝶番とかレバーなんかの金属部品の作成の方が大変だったから失念してた。何度向こうの世界のホームセンターに買い物を頼もうと思ったことか。当時イロイロ面倒でやめといたけど。


(冷却具って冷蔵庫作る時に使ったきりで、錬金術士のレベルが大したことなくても作れるし、もの凄く簡略化されてて簡単だった記憶しか無いんだけど……昔は装備に、当たり前の様に付与される機能だったってことかな?)


 過去に……レベルアップした時に入手したプレゼント系の装備や道具は全部、【収納】に入れてある。実際に使ってるしな。


 で。調べて見たら。


 レベル10の時の


「黒蟻の鎧」「黒蟻の脚鎧」「黒赤布のコート」「黒革の服」「黒革のズボン」「魔術士の服」「魔術士のズボン」


 レベル20の時の


「赤鋼の鎧」「赤鋼の腕鎧」「赤鋼の脚鎧」「赤鋼の足鎧」「黒蜥布のコート」「強化革の服」「強化革のズボン」


 レベル29の時の


「帳の外套」


 に尽く、冷却具が組み込まれていた。あまりにも簡単で、さらに「暑い」エリアではないとその効果が発動しない様になっていたため、気付けなかった。


(暑い時に外套とかコートとか……羽織らないもんな……普通)


(砂漠では大事なんじゃないか?)


(砂漠にいた時、空飛んだりしてたから、当たり前の様に身体の周辺で風魔術を使ってたからなぁ。コートを纏って、砂丘を歩くなんてしなかっただろ?)


(そう言われてみれば、その通り)


(気温が高いといってもここまでじゃなかったしな)


 ということで、一番高性能っぽい、「帳の外套」を取り出して纏った。


(おおー)


(自動起動……か)


 ショゴスさんには伝わってないみたいだが、俺の周囲の気温が劇的に変化した。


(そうか。当時の冒険者の装備に付与される機能の基本中の基本だったんだな)


(それだけ、迷宮では火山系の階層が多い……ってことか)  


(なのかもな)


 まあ、とにかく火山系階層で、普通に活動出来る様になった。


(これが常識というやつか。経験とも違うんだろうな)


(人間、いや、こっちだと人族もか。親子三代を超えたら、口伝なんて大きく変化するって言うしな)

 

 さらに魔力が圧倒的に足りないというか、世界が変わったくらい少なくなってるらしいからなぁ……。


 ちなみに、暖房具の魔道具が見当たらないな……と思ったら。冷却具をいじれば、寒さを抑える事も可能だった。暖房は錬金術士のレベルが上がらないとだめか。


 外套、スゲーあったかいと思ってたけど、魔道具が発動してたのか。


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