557:蜥蜴系魔物
(スキル【開錠】。本来は……盗賊の天職持ちが覚えるスキルだろうか?)
(おう。その通りだな。確か。盗賊は……まあ、聞こえが悪いからな。斥候とか、偵察、密偵とか鍵屋、
(カンパルラにはいないのが多い)
(シロの情報が古いから現代の社会事情に合っていない可能性があるんだよなぁ~)
(そう言えばそうだった)
まあ、とりあえず天職の盗賊は、この【開錠】や【罠解】なんていうスキルを覚えるんだったと思う。回避能力も高く上がるタイプだった気がした。
おもむろにスキルブックを開く……と。淡い光と共に……手に持っていた小冊子が焼失した。そして。何かが身体の中に溶け込んでいく気がした。
(そうか……ここは本格的な迷宮なんだから、本格派のRPGパーティのスキルも必要になるのか……)
物理的なアタッカーの前衛、魔法アタッカーの後衛、回復役、強化や弱体の支援ジョブ、そして鍵開け、罠解除の盗賊。役割的にはそんなもんか。
(そもそも、ソロでここを攻略しようとするのが不味いんじゃないか?)
(その通りだな)
まあ、そこはどうにもならない問題だから仕方ない。
第十一階層は。
(小さいボムと……大きいボムってところか)
さらに火蜥蜴や火炎甲殻虫、ファイアヴァンパイア、バードも普通に襲いかかってくる。
魔物はフロア毎に二種類とか、限定されているわけではないのか。
(これ、全部加わっていく感じだと凄まじいことにならないか?)
(ああ……魔物の種類が少ないなんて言って申し訳なかった)
小さいのから、大きいの、さらに地面を這うのから飛んでるの、その上速い遅いまである。正直、うざい。
さらに、迷宮の舞台、ステージが……火山を模した物に変化した。なんていうか、天然の火山洞窟が迷宮化した感じで、正直、所々溶岩流が噴き出しているので気温が高く、湿度もおかしい。
(そもそも、燃えているということはエネルギーを発生させているわけでさ。ここに水を持って来て沸騰させれば、火力発電だ。これは魔力で引き起こす様な現象なのだろうか? 大いなる矛楯というか)
(そう思う。しかも行く手を阻むのは魔物でやればいいのに……地形効果で阻む意味があるのだろうか?)
(攻略出来る、可能性のある迷宮でないと人が集まらないわけで。ある意味、アトラクション……的なものなのかもしれないな)
まあ、この迷宮の全盛期(多分)の古代には、
(暑い……から「水流操作」で過冷却水を発生させて、風を動かして……おう。涼しい。氷を使った冷風機みたいなもんか)
(これが涼しいか。確かにサノブが活動するのに快適な温度だな)
第十五階層でさらに、魔物が加わった。
(リザードマンってヤツか?」
(いや、顔がリザードじゃないぞ? なんとなくドラゴンに似てるというか)
目の前のリザードマンは簡易的だが鎧を身につけ、各種武器を装備している。さらに盾を装備しているヤツもいる。
(高度な……技を使用してきそうな予感……)
(そうだな)
とりあえず、「切り裂きの剣」を装備して戦闘を挑んでみる、反魔術領域生成の指輪の例がある。俺は剣で、物理的に戦えるという訓練を忘れてはいけない。
ギリ……
おう。やるね。俺の剣の腕は……まあ、反魔術で消したとはいえ、魔族を蹂躙したことからも判る通り、そこそこいけてると思う。【剣術】スキルは伊達じゃ無い。
だが。その一閃が……見事に受け止められていた。
リザードマンは単体。周囲に仲間もいない。なので余裕ぶっこきで斬りかかったのだが。そこそこ本気の踏み込みから、必殺の斜め上段から振り下ろしの一撃。
それをあっさりと受け止められてしまった。
「ちッ」
舌打ちが漏れる。さらに二匹目、三匹目と連続して襲いかかってくる。
瞬時に……複数の敵と戦っていた頃の事を思い出す。ああ、そうだったよな。だから訓練、練習は欠かしてはいけないんだよなぁ……。
こうして、多数に囲まれて選択の時間が無いなんて状況になると、いざという時には「過去にしたことのある事」しか選択肢に現れない。
こういう状況で次は何が来るのか? ドキドキ。なんて……願望というか、勝って自分だけが立っている未来を想像出来るヤツは、本当の意味で「頭がおかしい」。漫画とかでよくあるバトルマニアも。
「くはっ! お前やるなぁ! 俺、ワクワクしてきたぞ!」
なんていう思考になる意味が分からない。戦う、命の取り合いに慣れすぎというか。VRとかで完全に安全だと、ゲームだと判っていれば……繰り返す内にいつかは……って感じだろうか?
迷宮の時間が止まっていた頃にシロのおかげで比較的安全なレベル上げが可能だった。正直、あの時は楽しかったし、遊園地のアトラクション的なノリだったのも思い出したが。
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