556:ボスフロア(判りやすい)
最初の入口の階層……第一階層は一定以上踏み込むと出現する火蜥蜴が中心だった。というか、火蜥蜴しか登場しない。
さらに、第二、第三、第四階層も、ほぼ一緒だった。出現する魔物も火蜥蜴のみ。まあ、良いのだがなんとなく寂しい。
第五階層からが本番……の様だった。火炎を纏った甲殻虫が激しく飛び回り始めたのだ。
さらに虫との複合型というか……囮の火炎甲殻虫、さらに火蜥蜴の出現場所自体が罠になっていて、複雑で凝った仕掛けが登場した。
(それにしても……魔物の種類が少ない気がするんだが……)
(そうだな……ここまで二種類か。まあでも、この迷宮、深いんだよな?)
(ああ、第一~第四までの広さは大体同じだった。この第五階層も似たような物だろう。つまり、今後のフロアがこれまでと同じ大きさだとしたら。最終ボスは大体八十階層前後って所だろうか)
(まあ、ってことは、十階層毎に……大体……四匹程度かな。魔物は)
(なぜ?)
(コスパだろうな。迷宮の広さはこれくらいのサイズが標準なんだけど、十階層毎に四~五匹が一番効率的だった気がするんだよなぁ)
正直、俺にはシロがいて自由度バリ高だったし、稼いだDPが桁違いだったから、余裕ぶちかましていた。
が。
こちらの世界の迷宮生成、運営システムと近年、減少し続けている魔力……のことを考えるとこれでも立派な方だと思う。
(というか、魔力供給が減少して、削れるところを削っているのかもしれない)
(本来はもっと多くの種類の魔物が登場する?)
(多分。とりあえず、楽できるんだからありがたいと思わないと)
(そうだな。アトラクション感覚だったかもしれない)
まあ、何より俺がそんな感じだったけどさ。
第六階層から、ファイアーバット。第八階層からは火属性の魔術を使う鳥、ファイアーバードが加わった。
(罠の構築が複雑だな……一つの罠に二重三重の仕掛けが施されている)
(時間をかけてゆっくりと創られていったんじゃないかな? 多くの冒険者の命を奪いながら)
(ああ、そうかもしれない)
ショゴスさんも納得の複雑な罠は……「石棘」さんで力尽くで撃破され……役立たずにされて……可哀想だった。
サクサクと順調に。突き進んでいく。第十階層は……これまでと大きく様相が違っていた。
(これは……どう考えてもボス部屋……)
紛うこと無きボス部屋。まるで往年のRPGの様な。階段を降りてそこは安全地帯……ここで冒険者が順番待ちをすることになるのだろう。
(なんていうか、こうして見るとちょっと感動するな)
奥は……これまでの階層全てを使用したボス部屋だろうか? 扉の向こうは闇に覆われており中はうかがえない。
(あの入口の中が見えない感じ……万里のプレイしていたゲームで見たことあるぞ)
(まあ、どう考えても炎系の敵……だよな。考えても仕方ないか。行こう)
扉の奥へ足を踏み込む。一気に視界が広がった。広間。ただ、全フロアほどではない。体育館だと……四面分だろうか? サッカーコート? くらいはあるか。
そして正面に見えたのは……これまでに何度も登場している火蜥蜴の群れ……いや、中央に一匹違うタイプのヤツがいる。
普通? のが体長一メートル。青光りしているヤツは……体長二メートル以上はあるか。
火蜥蜴は全部で三十くらいか。
(ってさ……これ、ゲームだとよくあるけどさ。障害物とかないし……現状、いきなり襲いかかってこないのって……敵としていまいち機能していないよな)
(そうだな……魔術で先制攻撃出来るもんな)
残念そこは俺の射程内だ。
ガッ……ガガガガガガガガガっ!
「石棘」……本来の使い方。大地から石で出来た棘が生える。
(サービスだ)
いつもよりも太く、長い棘だ。
火蜥蜴は……お得意の炎攻撃を行う間も無く、貫かれ……消えた。
さすがに、大きいの……まあ、大青火蜥蜴くんは何本もの棘を身体からもまだ生きている。
(もういっちょ)
ゴンッ
青く光る……火蜥蜴の巨体がぐばん……と波打つ。
これまでの石棘を五本くらい束ねた感じの太さの……既に石柱と読んだ方が良いような石の杭が、蜥蜴の身体を引き千切った。
ピクピクと……していた四肢が痙攣に変わり……虚空に消えた。
既にお供の火蜥蜴も全部消えている。
そして広大なボス部屋に残されたのは……宝箱。派手なヤツではなくて非常に地味な木箱タイプとでも言おうか。
(宝箱だ!)
ショゴスさんが嬉しそうだ。そういえば、こういう典型的なRPG展開って無かったか。如何に普通に冒険してないかっていうのが判るな。
宝箱を開けよう……と近付く。
(あれ? 俺って宝箱系のスキル……開錠とか、罠診断とか罠解除とかそういうスキル無いよな)
(聞いたことが無いけど)
(迂闊に開けない方がいいと思うんだけど……)
【収納】にあった、適当な戦利品のボロボロに刃毀れしている剣で、遠間から留め金の部分をゴリゴリと抉る。
ビキン……
留め金が外れた様だ。
おもむろに宝箱を開けると、中にはポーション。そして、肉。さらに……。
(本?)
本というか、十数頁の薄い説明書……パンフだ。
おもむろに開く。
パアーと光が溢れた。
(これは……スキルブックなの……か?)
以前俺が覚えた……「刻印・加速」「刻印・周辺視」とはかなり違う。あれは確か、五センチ四方、厚さ一センチくらいの四角い白い石鹸的な石に刻まれていた。
「スキル・開錠」
冒険者的には基礎的なスキルだけど、持ってなかったからな~。ラッキーだな。
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