550:なにか一つ
(魔力にそんな力が?)
(無いとは言えない。特に、あの時の粉塵爆発の元になったのは、ノラムの産み出した【結界】で創り出した、設置型の「魔術」だ。つまり……あれに使われている魔力にはノラムの意志の力を具現化させようという力が加わっている)
確かに魔術は……魔力を使用して「使用する者の思いを具現化するスキル」と言えなくもない。
(さっき魔力をガソリンに例えたが……空気中の魔力がある程度濃くなると、魔術の影響を受けやすくなり、その効果を増幅するのでは?)
(ガソリンの様に? 気化したガソリンに火が付いて爆発する様に?)
(ああ。爆発の場合はそのイメージで良い。厄介なのは、魔力は、元になる魔術の影響で、爆発だけなく、威力増加や効果増大に変化する可能性が高いということだ。で、件の帝都の場合は、建物の建材の中にも魔力が含まれていた……節がある)
(……魔道具等が魔力効率の悪い設計になっているのもそれに関係があるのだろうか?)
(それも……アルかもしれない)
「この区域は研究施設……でしょうか」
宰相閣下と共に全体像を把握すべく、なるべく足を止めずに探索を進めて行く。
「そうですね……。同じ様な部屋が続いていますが」
展示室から派生した幾つかの廊下。そのうち一番大きい廊下の先は研究棟、そして工房……の様だ。
「そうですね。そして、反対側の部屋が工房。研究し設計された最新の思想が、最新の技術で物質化するというシステムです」
「……確かに。この距離感は素晴らしいですね……そして、研究者と設計者、さらに製作者が有機的に結びついているのが画期的です。自我の強い職人が多い我が国では中々難しいやり方ですね」
まあでも、それを何とかしないといかんよね。オタクは帝政なわけですから、強引にやってしまえばいいじゃないですか。
「閣下の名の下に庇護を与えると公募を行えば、国中の職人が集うかと思われます。今や、閣下は職人達の間で崇め奉られてますから」
シミアさんが会話に入って来る。こういう……提案とはいえツッコミは、通常の側仕えと主人の関係ではありえない。松戸や森下は格好がメイドなだけで、側仕えじゃないからな。
だが、クルセルさんを筆頭に、宰相閣下と側仕えは「閣下の石頭では気付きにくい一般常識的な情報を逐次入力する」という方向で許可を与えているらしい。というか、強引にそれをしろと言って、やらせたらしい。
「そうだろうか?」
「はい。希望者が殺到するかと」
「判った。では、帰って担当大臣らに相談してみよう」
しばらく探索を続けていると、さらに奥へ違う連絡通路? が出現した。
が。
「ここは……いきなり押し潰れていますね……」
「何かの拍子に、【結界】の魔道具が停止した……のだろう。その結果、全てが押し潰されたのでしょう……」
唐突に土砂によって押し潰されていた。確かに。閣下の言う通り【結界】の境界線が明確に判る。ソレより向こうは土砂で埋もれている。
「本来なら……これくらいの時間が経過している……ということですか」
(おいおい、怖いなこれ。地下だもんな、ここ。そりゃ潰れるか。現状稼働している【結界】は稼働停止しない?)
(……大丈夫だと思う。【結界】の魔道具はこの建造物の基礎設備で、灯りよりも優先度が遥かに上だ。灯りが付いている場所は、余力がある証拠だ)
(いや、いきなり崩れたらやばいなと。ここ、新規発見エリアで、それを見つけたのが俺なワケで。「腹黒」閣下がここで潰されちゃったら責任感じちゃう)
(……大丈夫だ。保証する)
なら平気か。
「とりあえず、なぜか表示がありませんでしたが、この先がポーションの研究施設であった可能性はありますね。ここは、魔道具から
天井も高く、横幅も広い。通常の廊下よりも遥かに立派だ。
「残念ですが、仕方有りません。とりあえず、
「ということで、この新区画でも「何でも」一つ。いただけるということでよろしいですよね」
「ええ。既にそれは契約が交わされていますから」
(どれにする? あの大きいヤツにするか?)
大きいの……展示場の奥にあった
(アレは……いいよ。というか、どう考えても動作スピードがイマイチな気がするし)
(あの大きさで……多分、移動だけなら時速二十キロは出ると思うのだが)
それは重機としては破格の性能。だけど、戦闘用としては使い所が限られてしまう。
(戦闘行動も出来るよな?)
(出来るが。正直、何をするにしても……ヌボっするだろうな。攻城戦や……この
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