546:別施設

(そこまでスゴくない……システムを解析して乗り込む……ハッキングのようなことまで出来れば……とっくの昔にノラムのダンジョンを再起動できている。シロメイド長の復活も出来ていると思う)


 いやいや。


(ショゴス。少なくとも、お前は俺に出来ない事を幾つもしてくれている。特にあのダンジョンシステムに介入し、基礎システムを動かし、転移、ジョブチェンジを可能にしてくれた。俺には出来ない事をしてくれているというだけで、それはスゴイ事だし、尊敬に値する。なので、そこを謙遜する必要は無いよ)


(お、おう……わかった……ありがと)


 くくく。ちょっと動揺すると万里ちゃん口調になるのな。


(え? そ、そうか?)


 嬉しいのな。


 目の前に開けた通路は……連絡用なのか、結構先が長い。ショゴスがいじったのか、灯りの魔道具が起動していて、先の方に扉が見えている。


(罠は?)


(感知出来るレベルのモノは無い……)


 まあ、許可証で個人認証しているからな……緊急時であれば何か防御システムが起動する可能性はあるけれど。


(残念ながら……そこまでのエネルギーは残っていない気がする)


 それならOKです。安心だね。


「さて、行きましょうか」


「……できれば、うちの者の調査が済んでから……お願いしたいのですが」


 宰相閣下の浮上椅子を押すシミアさんがそう提案してくる……が。まあ、それはなんていうか。


「ここの初潜入、第一歩はこの通路を発見したノラム殿に権利がある。それは遺跡発掘の基本だし、それに……二番目は私。これは譲れないよ」


「……閣下が最初で無いのがギリギリ許容範囲になっていることを御理解ください。クルセル隊長の許可の」


「……」


 クルセルさんには結構弱いのな。


 足を踏み入れる。うん。埃や塵なども積もっていない。これは「洗浄」の魔道具でも起動しているんだろうか。


(そんなエネルギーは……無いと思うんだが)


(もしかしたら、さっきのドアを閉めると「結界」が起動して、こちら側を完全保存状態で保っていたのかもしれないな)


 廊下の奥にまたも、さっきと同じ様な扉。ここも……。


 同じ様な場所があったので、許可証をかざした。


 が。


 何も起きない。


(どういうことだ?)


(多分、魔力が足りない。この自動扉を作動させる為のエネルギー……特にこの扉が動くには……80%以上足りない)


 全然足りないな。


(供給していい?)


(開けっぱなしにできるんだよな?)


(その辺は調整する)


 俺はまあ、ショゴスがいるからどうにでもなると思うけど、「腹黒」閣下と側仕えのシミアさん、そして護衛の騎士……今回は三名が後ろからついてきている。彼らにとっては扉が締め切りになることは非常に警戒すべき事態だろう。


「多分……魔力が足りてませんね……これまで遺跡の探索で、似たような状況はありませんでしたか?」


「ありましたね……これは……手詰まりでしょうか?」


「ん~ちょっといじってみますよ」


(ショゴス、やれる?)


(ああ、既に調整済みだ。供給する)


 まあ、優秀。さすが。許可証の認識装置の辺りに手を当てる。悩んでるフリだ。でも。天才だからなぁ。この宰相閣下。何してるかバレちゃうよなぁ。


「まさか……」


(これくらいでOK)


 装置に許可証をかざす。


 これまた、音も無く扉がスライドし、廊下が奥に広がった。同じ幅、同じ形……そして、大体同じ奥行き……だ。それが……五回続いた。


「かなり……離れてますね」


「そうですね……先ほどの建物とか別棟……ということなんでしょう」


 扉と扉の間は……一㎞……いや、その半分の五百メートルくらいか。


(歩数から考えて、それくらいだと思う)


 それが五百×六区間……だから約三㎞か。施設間の距離として考えるとかなり離れてるよな。ショゴスの探査で何も無い事は判っているが、閣下側の調査を行いながら進むので時間が掛かっている。


「それでも……正直、自分の足で歩くよりも遥かに……速くここまで到達できています。何よりも体力が温存できているのはありがたい。ノラム殿に感謝を」


 椅子に座ったままだが、頭を下げられる。まあ、そりゃそうか。あの足で長距離の歩行は……体力を奪われるのは間違い無い。


 そんな渡り廊下? だが、さすがに終着点は存在した。


「ここは……」


 許可証をかざす位置のちょっと上に……プレートが埋め込まれている。「G研究施設・保管庫」と読める。なんとなく扉の壁もこれまでよりも豪華? な気がする。


「この先が土人形ゴーレムの研究施設、そして保管庫? の様です」


「保管……つまり、様々な土人形ゴーレムが保管されている? と?」


「ええ、表示が確かであれば……そうなりますね」


 明らかにワクワクしてる。期待に添えるかどうかは俺も判らないよ? そんな顔しても。


 これまでと同じ様に魔力を充填し、許可証をかざす。


 ん?


 何も起こらないな。


(……この扉は……これまでの扉に比べて仕掛けが複雑で、エネルギーを大量に消費する……あ。魔力を判別……する? 許可証に登録されている魔力を認識し……了解した。偽装する)


 簡単に言うね……。


(もう一度どうぞ)


「もう一度やります」


 宰相に断って、再度許可証をかざす。


ピッ


 認識証を確認した……ということを表す音? が聞こえた。


 それと共に、扉が開く。これまでよりもかなりゆっくりと……分厚い、肉厚の扉だ。


「こ、これは……」


 宰相閣下が……絶句した。いや、これは……俺もちょっと喫驚よ……。


ドーン……


 という擬音が頭に思い浮かんだ。


 目の前に……地下に埋まった巨大な催事場。そして……そこに並ぶのは……俺は良く判る。見たこと無いけれど知っている。


(ガンダムがたくさん並んでる……え?「G」ってガンダムの?)


 ショゴスさん、それはジオン脅威の科学力とか、少しはオブラートに……いや、無理か。そんなCM知らないよな。


 そして「G」はその「G」じゃないと思う。

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