543:IK○Aのダンボール多いとこ似

 宝物殿と呼ばれている部屋は、通販事業のバックヤード的な棚が並んでいた。まあ、魔道具倉庫だ。


(ほうほう)


 ズラッと並んでいる魔道具は確かに、迫力満点だ。というか、これは宝物殿と呼んでしまう気持ちは判らないでもないな。


 それにしてももの凄い数の魔道具が……並んでいる。ちっ。これ、【鑑定】が出来ないのもの凄く後悔しそうだな……。


(そうだな……回路的に使用される魔力の大きさの違い……くらいは判るが……うーん。それが重要かといわれると違うと思うし)


(そうだな……消費魔力が小さい魔道具の方が、性能は良いってことになるしな)


(そうだな……魔力の通りが複雑な物?)


(それは未熟な魔道回路のせいってこともあるから……洗練された優れた魔道具は、魔力の流れがスムーズで、消費魔力も少ないからさ)


(むう。どうにもならないな。とりあえず、ダメな魔道具は判るってことか)


(ああ、そうだな)


「……いかがでしょうか?」


 宝物殿に入るなり、黙って動かなくなってしまった俺に気を使ってか、必要な事くらいしか喋らないシミアさんが気遣ってきた。


「あ、ああ。ええ。あまりにも膨大な量……だったのでちょっと呆然としてしまいました。さすが帝国、閣下が自慢するに相応しいというか」


 ニコリ……と。なかなか良い顔でシミアさんが笑った。この人もあれだな。閣下が大好きなのね。


(上があの……暴走信者の代表だし)


(うむ)


 だが。まあ、この魔道具倉庫の魔道具は……そこまでスゴイものではない気がする。確かに、研究所で作られた様々な用途に使用できる……多彩な魔道具が置いてある様だ。でもあくまで一般用? な感じなのだ。


(これ、軍事用に開発研究されていた魔道具はここに無いな? 多分)


(そうなのか?)


(ああ、全部細かく見たわけじゃ無いが……俺が判る感じの魔道具は、火種、清浄、水袋、灯光、魔除け……まあ、基礎的な錬金術の発展系というか)


(高性能じゃないのか?)


(多分、高性能……低コスト、俺の知っているレシピよりも少ない魔力で作動する魔道具じゃ無いかと思う。工夫されている……というのは判るし)


(なら、おかしいところはないんじゃ?)


(まあ、そうなんだが。だが。ゴーレムが一つも無い)


(ああ、そうか……)


(帝国で聞いた話によれば、魔道具とポーションは別扱いだ。なので、この古代のなんとか樹国の頃から同じだとして。ここにポーション類が置いてないのは当然なんだろう。でも。ゴーレムが無いのはおかしく無いか?)


(そう言われて……みれば)


 クルセルさんが語った、宰相閣下の超無双伝説……あれの錬金術士としての偉業のひとつに、


「土人形」:錬金術によって生み出される土人形ゴーレム。土属性のブロックを組み合わせて作成される。現在も開発途中の魔道具ジャンルで、大型の土人形で大規模輜重部隊を編成させることに成功している。


 っていうゴーレムを活用しているという部分があった。極秘事項では無く、普通に活用している……様だ。まあ、多分、直接戦闘では無く、後方支援に徹しているのは……純粋に戦力となるほどの土人形ゴーレムが作れていないからだと思う。


 あれ、レシピがあってももの凄く複雑で基本、難しいからなぁ。というか、アレを独力でどうにかして、使い物になる「ゴーレム」を生産している「腹黒」閣下は尊敬に値するな。さすが天才。


 俺には向こうの世界の……科学技術が頭にあったからある程度予想したり、想像して、なんとか創り出すことが出来たけれど。


(んで。さっき気付いたんだが)


(ん?)


(この倉庫の奥、色違いの壁があるだろ?)


(うん、あった)


 さっき奥まで歩いたときに見たハズだ。


(あそこに古の言葉で「G研究施設への入館はランクⅢ以上の許可証が必要です」……って書いた(刻まれた?)プレートが貼ってあった)


(マジデ! ゴーレムってG?)


 あら、いつもお堅い感じで話すショゴスさんが。笑。まあ、スキルでそう読めただけなので、古代語の本来の文字が英語のGとちゃんとリンクしているかどうかは判らないけれど。


(まあ、開けて見ないと正解は判らないけれど)


(それってもの凄い発見……というか、帝国側は気付いていない?)


(多分ね。壁の色が違ってるだけだから、ドアに見えないし。あそこ)


「シミアさん、この宝物殿の目録とかその辺が納められている感じの部屋ってありませんか?」


「ございます。こちらへ」


 シミアさんは、閣下と共に、何度もこの遺跡を訪れ、ある程度の案内、説明が出来るまでになっているそうだ。なんでも高位貴族の中には視察したいと言う者も多いんだそうで。


 宝物殿の手前の小部屋が、確かに、あの倉庫の管理室……っぽかった。パソコンみたいな機械と……ああ、うん、大きなファイル。やはり。これ、倉庫の在庫チェックリスト……棚卸資料だ。


(うーん、どうする?)


 どうしようかな……と目録が置いてある机の戸棚を開ける。


(お? これはこれは判りやすい)


 そこには、ミッテルト・スフィンダード……と名前の書かれた入館許可証が置いてあった。あれだ、ちゃんと首にかける感じのホルダーに入っている。これも朽ち落ちたりしていない。古代技術、スゴいな。


(ランクⅡですよ。ランクⅡ。あの奥へ行くのにランクⅢ以上って書いてあったから、あとはランクⅢか、Ⅳの許可証があれば万全ってことか)


(そうだな。ⅡとⅣの許可証があればどっちが上でも扉が開くな)


 

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