542:遺跡探訪

 シミアさんはクルセルさんと同じ帝国風のメイド服を着ている。さすがにロングスカートは遺跡みたいな一部崩れている様な所は動きにくくないのかな?


(松戸、森下は足運びが隠れるからスカートで問題無いと言ってた)


(ああ、うん。あの二人は……ってまあ、クルセルさんや部下のシミアさんもそんな感じか)


 若干暗い遺跡を歩いて行く。所々に灯りの魔道具が配置されていて……人感センサーなのか、俺が行く場所行く場所で「ぼう」と明るくなってくれる。


(多分、魔力センサーだと思う。人の魔力を感知すると灯りを付けるスイッチみたいのがある)


 おお。それは後で調べさせてもらおう。俺の知ってる仕組みと違う所があるのかな?


 多分「腹黒」閣下にとって、浮遊椅子の魔道具は非常に魅力的だったんだと思う。あの提案のあと、即、職人達と共に製作に取りかかってしまった。 


 なので案内に付けてくれたシミアさんと二人で先行して、宝物庫と呼ばれている魔道具が保管されている場所へ先行して、イロイロと物色して良い事となった。


 なので彼女の後に付いて歩いて行く。 


(あ。うん。何となくそんな気がしていたんだけど……。俺、この遺跡の壁に書いてある文字……判るわ)


(そうなのか)


 俺が移譲された王都第三遺跡の倉庫にも壁に文字が書いてあったが、そちらはなんていうか、格好つけ? か、ちょいデザインされていたのか、文字の意味は何となくしか伝わって来なかったのだ。だから「俺は読める」と断言できなかった。


 まあでも、そんなあやふやな感じでも所持スキルの【言語理解】は仕事をしていたのだろう。


 ということで、この遺跡の入口をちょい移動した階段手前のエントランスに、魔導研究所15階と小さく書いてあるのを確認した。


 なんだっけ、古のハイエルフの国の魔導研究所って事なのだろう。閣下の言いようだと、王城の一部らしかったけど……。


(ファードライド樹国というのをノラムが復習するかのように独り言で言っていた気がする)


 お、おう。ありがとな。この名前は……ああ、エルフ村のAI(ハイエルフ)が帝国の国土に元あった国として言っていたんだったか。


 まあ、魔導研究所が、王城……の城壁内、または同じ地域、エリアに存在してもおかしく無いか。アレだ、城の敷地内に宮廷魔術士達の魔術研究所がある様なモノか。確か、ローレシア王国の王城がそんな感じだったハズだ。


 シミアさんは何も言わず、まるで足元に何があるのか全て記憶しているかの様にスタスタと歩いて行く。躓いたりしないのかな。


(体捌きが完璧だ。まあ、系統は違うけれど、松戸、森下にもの凄く近い動きをしていると思う)


 あの二人ってことは殺しの技法ってことだよなぁ。


(逆に自国の宰相の守りに適当な者が配備されていたら、怖くないか?)


(怖いね)


 しばらく歩くと階段だ。なんていうか……うーん。見たことアル。この形。もう、純粋に病院の階段……いや、これはオシャレなショッピングモールの階段か。ということは……この階段の側には……。


 あった。


 階段のさらに向こう側に……エレベータースペースだ。


 俺が階段奥に興味を示したのに気付いたシアラさんが、降りかけていた足を止めて、俺に近付いて来る。


(ここ、若干だけど魔力あるよな?)


(ああ。だが。大元の……供給スイッチが入っていない気がする)


(ああ、そりゃそうか)


「こちらが……何か?」


「うーん。これ、魔力がちゃんと供給されれば、楽できそうなんだけど」


「そうなのですか?」


「うん、勘だからまあ、いいけど」


(かなり的中率の高い勘だけど)

  

 とりあえず、供給スイッチ、多分ブレーカーみたいなものか。施設として、それがあるとしたら……地下かな。まあ、なので、目的地の魔道具倉庫の奥に制御盤とかあったりしないかな。


(魔力が枯渇しつつある世界だからなぁ……さすがに残ってない気がするけれど)


(んーまあでも、エレベーターで降りれたら、「腹黒」楽じゃん?)


(おや。お優しい……)


(俺は昔から優しく無いか?)


(……そうか……そうかな? そうかも?)


 まあ、いい。うん。出来ればレベルにしておこう。


 階段を降りていく。ちゃんと15階、14階……と階層表記が下がっていく。古代遺跡とは言っても、多分、錬金素材がふんだんに使われているんだと思う。地下に埋まっている施設にもかかわらず、経年劣化で崩れそうには見えない。


(普通に……天井の落盤とか起きそうだと思うんだけど)


(そうだよな。そうなっていないということは、この遺跡が不思議パワーや不思議素材で作られているってことだもんな)


(もらった遺跡もそこまで昔に疲れた感じしなかったよ)


(そうだよな。あっちの方が新しいというか、ここよりも後に作られた感じがしたけどな)


(確かに)


 シミアさんに着いて降りていく。辿り着いたのは階段の最下層。


(地下3階か)


(研究所……にしては浅い?)


(そうかな? 広さとか造りにもよるかな)


「こちらです」


 シミアさんが御辞儀と共に、ドアを開けた。


 奥には……通路。うん?


(なんかセンサーが着いてる?)


(セキュリティ用の魔道具だと思う。だけど、動作停止している。魔力不足だと思う)


 ここもまあ、俺のダンジョンと一緒なの……いや、根本が違うか。


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