541:ポーションの謎仕様

 現在の俺の錬金術士のレベルは53だ。そこで、シロが失踪してしまった……まあ、システム的に停止しているのでしょうがない。


 ちなみにレベル53になった時点で、上級ポーションを作れる様になっている。


 実は、この「上級ポーション」という表記がくせ者で。ちょっと判りにくい体系になっていると思う。


 錬金術士の入手するレシピ? の表記は、ポーション。これで初級に始まって、中級、上級の各種薬品が作れる様になる。


 これ、結構法則性がちゃんとしてないというか。レシピの表記が古いのかもしれない。というか、古いのと新しいのが混ざっているような気もする。


 カンパルラで初めて手に入れた、市販されていた体力回復薬は「劣化体力回復薬」と表示されていた。こんなレシピは、錬金術士のレベルアップ時に表示されていない。なのに市場で売られているポーションとして大々的に普及している。


 存在しているのだ。


 悲しい事に、俺は「劣化体力回復薬」を作ることが出来なかった。もの凄く劣化した素材で作ってみても、体力回復薬になってしまうのだ。


 さらに、同じ体力回復薬でも、微妙に違いが存在する。表示は体力回復薬となっていても、体力回復薬・低性能、体力回復薬・普通、体力回復薬・高性能……の三種類……いやもっとか。五種類くらいある気がする。


 まあ、これは俺の鑑定が未熟だから詳細が分からないのかもしれないけれど……使って判るくらいの性能差があるんだから、微妙に名前を変えてくれたら良かったのに。


 ああ……もしかしたら+1とか+2とか付いていたかもなのか。


 まあ、どっちにしろ今は【鑑定】すら使えない。


 で。現状。上級ポーションという資格? で……上級の体力回復薬、毒消し回復薬、精力回復薬が作成可能だ。なのだが、魔力回復薬は現状下級しか作成出来ない。材料となる素材が揃わない……のだ。まあ、材料がないだけで上級まで作れる……と思いたい。


 とまあ、ここまでは良いだろう。


 問題は、先述の様に、その出来上がった回復薬に……同じ名前なのに性能差が存在するということだ。


 現状、実物を使用してその感触から判断するしかないが、相変わらず異なっている。


 ただ、上級回復薬は……現状、同じくらいの効果の物しか作れていない。うーん。なんだこれ。法則性は?


 というか、俺はそれ以前から、中級ポーションのレシピ、知識で、上級回復薬を作れる様になっている。それこそ、アーリィの痣を消すときに使ったのは上級回復薬だしな。


 で。ここでやっと本題だ。現状俺は、上級体力回復薬が作れるが、それには性能的にあやふやな部分がある。

 何よりも、上級体力回復なのか、上級体力回復薬+1なのかが微妙にハッキリしない物も作れてしまっている。


 正直、アーリィの様な……主に見た目的な外傷的な治療であれば、ある程度性能に差があったとしても、最終的に「治れば良い」でなんとかなるだろう。


 だが。「腹黒」宰相閣下の脚の治療は……うーん。正直、そんなあやふやな薬品で行うのはリスクが大きすぎる。


 何よりも、時間が経過しているため、その原因や症状も微妙に曖昧になっている様だ。


 それこそ……俺に医者の知識があり、薬の効能がハッキリ判っているのなら、大胆な治療も可能かもしれない。それこそ、一度切開してつなぎ合わせる時に体力回復薬を使用すれば、その切開傷は治癒するだろう。


 だが。それは、今、切開した傷を直しただけだ。


 俺の想像、考察でしかないが、宰相の引き摺っている脚を治療するには、その当時の……治療する前の脚の状態がどこかに保存されていなければならないと思う。

 

 まあ、アンドゥのポイントをバックアップされていなければならないと思う。この辺の仕組みもキチンと理解されていないし、俺も出来ていないのだ。


 それこそ……引き摺っている、上手く動いていない右脚を根本から切り落として、回復薬でくっ付ければ治るかもしれない。でも、もしかしたら、腰からの神経とか、筋肉の筋とかが関係しているかもしれない。


 そうなると脚を切るなんていう……通常であれば対象を「害する」行為を行って、やっぱダメでした……で言い逃れは出来ない。


 もしも「腹黒」閣下の治療をするのなら。もっと沢山の症例でポーションを使用し、臨床試験を繰り返すしかないと思う。


 んー。まあ、今回の「野営馬車」の件で判った通り、職人系の作業をしているときはただの頑固な天才職人って感じで好感が持てるからなぁ。


 多分、帝国宰相として決断しているときはもの凄く嫌なやつになるんだろうけど。


 遺跡調査も大好きっていう事は判るから、そういう時に障害になる脚の不具合は解消してあげたいかなぁとは思ってるんだが。


(まあ、そうだな。正直、宰相の脚を治したからって帝国の戦力が直接的に影響しないからな。何故治そうとしないのか不思議だったんだが、そういう理由か)


(ああ。宰相自身が魔術士として強い……ってわけじゃないしな。脚が動いて、歩いたり走ったりが普通にできる様になっても……戦士として前線で戦える様にはならないだろ。だからクルセルさんは護衛をみっちり付けてるんだろうな)


(虚弱体質……とかもポーションで治るものなのか?)


(精力回復薬……とかもあるから……いや、どうにもならないか。向こうの世界のボディビルダーの様に、プロテイン飲んで食事制限して、運動して……戦闘スタイルに合わせた筋肉を付けていくしかないんじゃないかな)


(ファンタジー世界なのに。夢が無い)


異世界ここはファンタジー要素のある現実世界だよ。みんな必死で生きてるだけだ)

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