534:ほろ酔い
久々に……ザワつく酒場でしょっぱいだけの干し肉をつまみに不味い酒を飲み。ちょい二日酔いで宿屋のベッドで(当然、予約したりしてなかったので、飛び込みで、金の力で良い部屋に泊まった)泥酔、爆睡。
どうやって帰ってきたのか……忘れているのは久々だ。
(いや、意識はちゃんとしてたぞ? そこまで酔っ払っているとは思わなかった)
(ああ、そうか、ショゴスがいたから、それに頼ったのか……酒場から帰る時、結構何度も道を聞いただろ?)
(ああ、なんで判っているだろうにこんなにしつこく聞くのかと思ったが……)
(それ、俺が酔っ払っている時の合図な。そうなっているときに襲われたりするとヤバいから、本気で起こして。意識ハッキリさせろと、水飲め、顔洗えと……ってまあ、さすがに攻撃されそうになったら【気配】とかが仕事してくれると思うんだが)
俺は……本格的に酔うと何故か自宅に直帰したくなるのだ。昨日みたいに旅先だと宿に帰りたくなる。そして寝たくなる。なぜか、店や道では寝ない。さらに暴れたりもしない。そんな意識が中途半端なら喧嘩でもしそうなものだが、過去にそんなことは一度も無い。知り合い曰く「酔ってると思わなかった」くらい、ちゃんとしているらしい。
過去、年に……いや、最近は三年に一回くらい発生していた。
(わ、わかった。念のために忠告する。……酔っ払いってイロイロあるんだな)
ああ、そうか。ショゴスの世界は万里ちゃんだもんな……。少女の世界に、大人の屑な行動は想像出来ても、現実にぶつかったことはなかったか。
(まあ、トラブル無くて良かった)
(……覚えてないのか)
(朦朧としている……かな)
(酔い覚めの魔術とか)
(多分、「解毒」とか使えれば抜けると思うけ……あ。そうか)
【収納】から解毒薬を取り出して飲む。
(スッキリした……)
(すぐ飲むのがいいと思う)
(ああ、まあだが、俺が酔ったときの対処は頼んだ)
(判った。というか、解毒薬を飲む様に言う)
それな。俺、ウコンなんかよりよく効く錬金術製の商品があるじゃん。事前に飲んでおけば良かったな。
そういえば、緋の月の若手二人? 「閣下に近付くな」なんて感じで、仕掛けてこなかったな。そこまでバカじゃ無かったか。
(いや……多分、仕掛けて来てたぞ?)
(そうなのか?)
(何かしてきていたが、強力な【結界】で一切攻撃? が届いてなかった。あいつらを無視することに決めたんだと思っていたが……。口数も少なかったし……何かイロイロと静かに考えているんだな……と)
(そうか。なんていうか、ショゴスが他人に気を使える良い子だったのが俺の酔いを増加させてしまったと)
(なら、今度からもっとしつこく言う)
(頼んだ)
とは言ったモノの……敵国で気を抜きすぎだろう。俺。
……いや。俺の知らない何かもあった? ……か? それにしちゃ、決め手に欠けるな。気のせいか?
(緩む……ああ、そうなのか? あの酒場の酒に……何か仕込まれていた可能性もあるな。うーん。もういいか。疑わしきは仕末しようか)
(それがいい気がする。今回は耐えることが出来たが……もしも毒であれば……)
(あのさ、毒だったら、多分、危険ってことで、感じることが出来てたと思うんだよ。だから……うーん。体調悪化する系の薬でも気付くか。プラス要素の薬だな。使われたとしたら)
(プラス要素。食事が美味しくなるとか?)
(不味かった。ああ……そうか。酒に酔いやすくなる……とか、感情が高ぶるとか、ハイテンションになるとか、エナジードリンク系の薬か? それなら危険と判別出来ないかもしれない。まあ、俺にとってはどうでも良い物と判断されたんだろう)
(……そういえば。昨日、酒場を出る時、妙にうつ伏せになっている客が多かったな……)
んだそれ。死んで無くても無差別テロ……いや、俺一人を仕留めるためにあの酒場全体……多分、酒樽に仕込んだ……か。
まあ、でも、か。そうだな。
「ということで、潰しても良いですよね? 一度は許したんだ。二度目は無い……というのは、この国でも理解される考え方ですよね?」
「……ええ。スミマセンね……。とりあえず、確認させていただけませんか」
ということで、早速「腹黒」閣下の御屋敷訪問だ。まあ、今日来る予定だったしね。元々。
「ええ、ええ。こうして訪ねている時点で、何らかの妥協点を見つけようと思っている……と判断して頂いて結構ですよ?」
(我慢するのか?)
(だってさ。既に遺跡とその周辺の土地をもらっちゃってるじゃん? 所有権も認めてもらってるし。ああ、永年貸与かもしれないけどさ)
(だから?)
(もう既に、この国とも縁が出来、まあ、大きい意味でお隣さんなわけですよ。身内とは言わないが、持ちつ持たれつな関係に、段階が上がった、突入したというか)
(うんうん)
(それなりに顔を合わす可能性のある隣人の知り合いが「ゴミ」だとしても、それを勝手に駆除してしまったら。こじれやすくなるし、気まずくなるのは間違いないじゃん?)
(おおー確かに。大人だ)
(だろ?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます