530:近隣住居無し、倉庫使用可能
帝都第三遺跡は。馬車で六時間程度。まあ、ここで言う馬車は当然マール馬車だ。時速60~70㎞は出る。つまり、ここまでは帝都から400㎞くらいはあるということになる。東京~大阪とか兵庫辺りか。
結構遠いと思うんだが……まあ、こちらの世界の人の感覚では「近郊」になるらしい。
帝都周辺……西に400㎞、東に400㎞。南に100㎞、北に200㎞程度の楕円に近い土地が帝領となっている。
(明らかに交通インフラが整ってるのは大きい気がする)
(そうだな)
帝国内の道は非常に整っている。特に主要な街道は、土の魔術によって整備されているし、歩行者用の旧道の脇に、馬車用の新道が整っている。
なので、距離が稼げる。
他国であれば……マール馬の性能はほぼ同じでも、道が悪いせいで距離が稼げていないと思う。
これまで、自分なりに時速から距離を計算してきたが、ローレシア王国ではちょっと多めに見積もって……って感じだった。
が。帝国では、少なくとも……になる。まあ、基本、走るとあっという間に距離が出るので、誤差ってことで適当なままなんだけど。
(まあ、ここにSAかPAか。確かに……道行く旅人や行商人はいるだろうに、みんな急いでるな)
(そうだろ? 陛下や「腹黒」に言ったこと、あながち嘘じゃ無いだろ? 帝都のある帝領が東西に長いんだよな)
(ああ。だが……どう考えても……下の方が……)
(な。上を飛んだ時に、なんか引っかかったんだよなぁ。丁度、西から帰ってきた時にこの辺を飛んだ時)
レベルアップが出来ていないが、
(まあ、ショゴスが気付かないのに、俺が気付いたって言うのは天職特有のスキルとかのせいだと思うんだけどな)
(どういう?)
(あまりキチンと考察してないんだが……空飛んでるとき……2000メートルくらいの高さだったら、下にあるダンジョンがなんとなく判る)
(それはスゴイ。私もダンジョンコア特有の力……神力だったか? アレの位置はそれなりに把握出来るが……大地に紐付いているのか、空からだとほぼ判らない。というか、帝都からこの遺跡の地下を探れたのも、方向と場所がハッキリしていたからだしな)
(まあぶっちゃけ、この距離で判るのは正直……無茶だと思うぞ)
藪のような低木が生い茂る林の中に……ちょっとした広場があった。その中心に、地下への入口らしい……遺跡の入口がぽつんと建っていた。まあ、言葉が悪いが工事現場のトイレの様だ。
扉……というか、ドアには俺やショゴスにはお馴染みのノブが付いている。
(「封印」……されているのか。魔道具だな)
(ああ。まあ、うん、この部分に魔力を流すと)
簡単に解ける。
(お見事)
(自分に「結界」のスキルがあるからか、この手の封をする系の魔道具は仕組みが判っちゃう様になったな……いつの間にか)
(俺、何かやっちゃいました系か。さすゴシュだったか)
(……それやっと森下、松戸が言わなくなってきてるんだから、思い出させない様に)
(そうなのか?)
(言うなよ。ヤツラ思い出すから)
(い、言わない……よー)
絶対言うな……コイツ。
(中は……外壁とかは一切朽ちていないのか。プラスチック……いや、骨? キチン質というか……コンクリートではないな)
ドアを開けて中に入る。即階段だ。地下……に灯りは機能していない様だ。「火球」の魔術を発生させて、奥へ放つ。
降りたのは地下一階と描かれているっぽい、拡張された踊り場だ。目の前、正面に奥へ続く通路。階段はさらに地下へ続いている。
通路の両脇にドアが付いていてるのが見える。奥にも同じ様にドアが続いている様だ。
(倉庫……だな。紛うこと無き)
(多分、地上にも建物はあったんだろうが……何かのトラブルで消失。で。今はここを残すのみ……と。まあこんな倉庫フロアが五階層。降りるぞ)
階段フロアをグルグルと降りていく。見た感じは地下一階と全く同じだ。描いてある古代文字が違うだけで。
(で。この地下五階の……さらに下だな)
(この奥に入口があるな)
細かい案内は、ショゴスの探知能力に任せよう。一番奥から手前2番目、左側の倉庫室の壁に……ダンジョンの入口が発生していた。
千年以上昔の建造物であるのに、何一つ、傷一つ付いていなかった遺跡の壁が崩れている。そして、なんとなく感じたことのある感触。ダンジョンの入口が口を開けていた。
(あ~……こうなっているという事は……自然発生した感じなのかな?)
(だろうな……多分、そこまで時間が経過していない。この遺跡の調査が行われたのは何十年も前と言っていたからな。「腹黒」自身が調査にも来たことがあった様だし。このダンジョンが発生したのは、ここ最近の話しだと思う)
(謎だよな……なんでこんな物が……魔力や神力が減少している世界で発生するのか)
確かに。魔力が弱まっている、薄まっているのに、ダンジョンは生まれ続けて居る様だ。まるで……女神の少ない神力を……さらに奪うかの様に。
そうか? ……そうなのか?
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