526:帝城裏から応接室
俺がショゴスと会話している短い時間で、馬車は城門を乗り越え、ひっそりとした……馬車停めに停車した。
「ここは宰相閣下専用の出入り門ですので、余計な誰何や持ち物の検査などを避けることができます」
「あ、気を使っていただいて。すいませんね」
素直に謝ってしまった。まあ、そうだよな。いつも「腹黒」とか言ってるけど、これから俺が会うのは大帝国の宰相閣下だもんな。本来なら面会出来ないし、正式に会うならイチイチお伺いを立てて、数日まって、さらに、向こうから声が掛かるのを待たないといけないんだっけか? 確か。この国のやり方は知らないが。
通されたのは、こじんまりした待合室? 打ち合わせ部屋だ。装飾美しいテーブルを囲むようにソファが配置されている。部屋自体は小さいが、装飾などが施された家具は上品で……まあ、帝城に相応しいんだろう。
(そうだな。確か、貴族は階級が上の者から話かけてくるまで、身分が下の者は待たなければ会話出来ないんだよな。万里が読んでいた本かアニメでそんな描写があった)
(だな~。忘れてたけど、そういえば、俺、実際にそんな感じで傅いたことあったや……)
(向こうの世界でそういう、高位の者に知り合いが? というか、実際にそういう権威に厳しい貴族とかいるのか?)
(アレだ、昔、中東で戦争に巻き込まれた時、軍を率いてたのが王子だったり、それこそ、王直属部隊が出張ってきたりしてたんだよ)
(……そう言われてみれば地球もイロイロあるな)
(通常時では会えない様な人でも、戦争中のどさくさなら、仕来りとか礼儀作法を知らなくても会えてたな)
(ああ、だから、ノラムも宰相とか皇帝に気軽に会えるわけだ)
(いや、そこまでは……それに別に気軽じゃないだろ。気にしてないだけだ)
(……そっちの方がなんていうか……気軽以上……いや不敬ということなんじゃないか)
(……だってさー別にさー彼らの武力に脅威を感じてないからさ)
(権威とは武力なのか?)
(後付けだけどな。武力っていうのは、強大であればあるほど、振るい続けると、恐れおののかれるだけになる。原始的な……それこそ、この世界のような中世くらいまでの文化、文明だと、世界全体が暴力で支配される率が顕著だ)
(まあ、そうだな……地球だって結局の所、暴力だしな。凄まじい国力を持つ大国が、最終的には核兵器で脅しをかけるのだから始末が悪い)
(ああ。まあ、そんな暴力をオブラートに包んで、敬意に変換させるのが権威という衣装だ。外面だな。外面が安定していれば、長期間の統治に対して有効に作用する。魔物という人種の天敵である脅威が存在する以上、特に重要だろうな)
(ふむ。勉強になる。つまり、ノラムは魔物にも……帝国に脅威に感じていないから、敬う気持ちが生じないということか)
(まあ、今さらなんだが……「腹黒」も「偽笑顔」も、いや、帝国はローレシア王国、カンパルラにとって……いや、リドリス家にとって敵だ。しかも、喧嘩を仕掛けて来たのは「腹黒」だからな)
「腹黒」の攻め口は……まあ、裏の者達による、証拠を残さないまさに腹黒いやり方だ。とはいえ、効率的だし、論理的だし、正義はないが、最小の力で大事を為す最善のやり方なのも確かだ。
(そうか。いくら弱点で、確実なやり方だとしても「子供」を狙って殺すそのやり方が気に入らなかったか)
(魔族とはいえ、帝都を壊滅状態に陥れた俺が言うのは……まあ、今さらだがな……あそこには魔族の子供だけでなく、奴隷となった様々な種族の人種が居たはずだ。当然、子供も)
(それは違う。上手く言えないが……違う。違うと思う)
(ああ、ありがとうな。ショゴス)
もう少し割り切らないとだな……。じゃないとショゴスや……まあ、松戸、森下にはバレてるよな。確実に。彼女達にも気を使わせてしまう。
「お待たせしました。ノラム……殿で通すのですよね? まあ、貴方の正体を知っている者は少ない方が良いでしょうし」
当然の様に、蒼の宰相閣下が扉を開けて優雅に登場した。
俺の正体……ノラムの正体がカンパルラのサノブだと知っているのは、陛下、そして、この宰相閣下。さらに、バディアルさんだけだ。まあ、ここで話している限りじゃ聞かれる可能性があるのはクルセルだんだけっぽいけれど……気をつけるに越したことはないだろう。
って、別にバレてもいいんだけどさ。これを貸しかの様に話始めたら、勘違いは正していかないとだな。
それにしても。
疲れているのだろう。目の下に隈が出来ていたが、顔色……表情は現在の方が明るい。と思う。ソファに沈み込むように座るが、背筋は伸びている。
まあ、絵になるわ。外見的に……線が細い系の王子様アイドルというか。あれ? 「腹黒」って年齢幾つだ? 若すぎだよな。アクロバティックな動きで敵を倒す古代中国軍師達が大活躍するアクションゲームに出てたっぽいし。
(種族が人間……ではないのでは?)
(あ。そうか。エルフか。忘れてたよ。他種族の可能性)
俺がハイエルフなのに。この世界のエルフ、美形なだけで外見的な特徴、違いが無いからな。ハイエルフは数が少ないらしいからエルフ、混血のハーフエルフって可能性も高いか。
そういえば、このハーレイ帝国のあった地域には、ファードライド樹国っていうエルフの大国が存在したんだったか。
「それで。どこから説明してもらえるのでしょうか?」
-----------------------------------------------------------
少々マイナス的な出来事が多くありすぎたようです。更新出来ない日々が続きましたが、今後は、ボチボチと。よろしくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます