524:各種確認

 まあ、もぞもぞしているとまとまるものもまとまらない……ということで、食事が終わってから話すことにした。


 俺が寝ぼけていても、朝の準備はちゃくちゃくと進んでいたし。


 既に森下もキチンと側使いとしての職務をこなしている(様に見える……だけじゃなくて、結構完璧にこなしてるのだろう。動きとかを見ていると伝わってくるのだ)。


 掃除とか……この工房は結構広い。エルフのヤツラの中から側使い訓練をしていた者達も、地力があるので、現在は冒険者として地方へ分散して情報収集などを行っている様だ。


 まあ、エルフ冒険者に関しては全てアーリィの指揮下にしていいと言ってあるので、その辺は問題無い。この国がキチンとまとまるのであればそれはそれで問題無いしね。


「さてと。ちょっとまとめようか」


 お茶を用意して……まあ、話しの前にとりあえず、松戸&森下に謝ろうとしたら「それは違う」と断固拒否され「ふざけんな、気にすんな」と強く言われた。なので気にしないことにした。


 二人も座らせる。マイアは既に夕食の用意をしているので忙しいそうだ。というか、もの凄く力が入っているらしい。


 ……美味かったからな……意識を失った状態でもとんでもない量を口から放り込んだという記憶がハッキリしている。


 なので、まあ、そもそも、戦術はともかく、戦略的なものは、異世界という事実やシロ、ダンジョンシステムの詳細を知っているこの二人しか話す相手はいないんだけどね。


「さしあたって、魔族側の国同士が争ってくれるのであれば、こちら側としては時間稼ぎになる。なので、俺がアムネア帝都で体験してきたことは後回しでいいだろう。というか、西の……えっと」


(無限大障壁)


「無限大障壁の「穴」は塞いだ。そしてさらに何も無かったかの様に壁が構築された様だ」


(構築された。回収した私自身からその辺の情報は収集した)


(え? そうなの? 教えてよ)


(情報の分析が終了……いや、うっすらと伝わってきたのはつい、先ほど。数時間前だ)


(なら仕方ないか。というか、まあ、その辺のショゴスの使われ方とか価値は後回しだ)


「さらに。ここから東。深淵の森は以前と同じように……いや、以前よりも激しく、ドラゴンと蟲が繁殖しているように思えた。俺的に面倒なのはドラゴンよりも蟲だ。あまり近付きたくなくて数を数えたワケじゃ無いが……あの量は……以前よりも確実に多い」


「つまり……西も東も……魔族の領域から踏み込まれるのは不可能と言う事でしょうか?」


「そうだな。しばらくは。それこそ、アムネア帝国じゃなくて、帝都を急襲してきた真正帝国……」


(クロトア)


「クロトア真正帝国が大部隊でやって来たら……どうにかなるのかもしれないが。さらに言えば、魔族側の大陸はこちら側よりも大きいんじゃないかと思っている。なので国の数も多いだろうし、こちらよりも国力が大きい国も多数存在すると思う」


「そうですね……」


「なので絶対ではない。が。しばらくは安泰というか、安定というか。この辺が、今回の情報収集の決着点かな」


「お疲れ様でございました。そうですね。どんなに急いでも早くて二カ月。かかれば半年は深淵の森を踏破してこちら側に侵攻しようとする部隊は編成できないかもしれません」


 まあ、希望としては一年……と言いたいところだが、魔族側は「奴隷狩場」としてのこちら側を明確に認識してしまった。アムネア帝国は……頭悪くて良かった……感じだが、砂漠の向こう、シファーラ魔導合衆国はあんな風にズルズルに甘くない気がする。


(そうだな。軍隊レベルで考えると、明らかに帝国が対峙してた軍の方が上だったしな)


「疑問なのは。帝国や王国という君主制の国と合衆国という民主制っぽい国が攻めて来ているにもかかわらず。西も東も魔族がこちら側の大陸を本格的に支配しようとしていない気がするという点だな。侵攻して、略奪や物資の確保は考えている。だが、一番の目的は奴隷の確保ということだった。侵略じゃ無いんだよな……」


「そう言われてみればそうですね……。地球の歴史、特に欧米地域の歴史から考えれば、君主制の拡大主義は当然の様に、植民地支配を前提に進んで行きます。植民地化した地域で奴隷を働かせて、そこからモノを収奪する。鉱石や石油等の天然資源。それに加えて大規模農園からの収穫物……小麦や香辛料、茶葉等が植民地から送られて来て、それを元に本国が繁栄するのに」


「ああ。とにかく攻め込んで来て、とにかく奴隷を確保する……という行動が先立っている気がする」


「帝国側に攻め込んで来た魔族もそんな感じなんですか?」


「……そういえば……詳細を確認する前に戻って来ちゃったかも」


(帝国も相当数の魔族を捕虜にしたと思う。尋問結果を聞く前に移動しちゃったから、聞いてない)


「うん、帝国側、合衆国軍の侵攻目的の詳細は聞いてないな」


「ということは、こちらに侵入してきた軍とは目的が違っているかもしれないと?」


 そう考えてみると、さっさと帝国へ行ってイロイロと聞いてこないとだな。こりゃ。



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