520:乾燥に注意
(これさ……あのさ。風の術の応用でさ、摩擦を激しくするとさ、静電気が起こせるんだよ)
(ああ。あの冬にドアノブを触るとピリッとくるやつな)
それそれ。
(アレをさ、もうちょっと激しく……あの中で起こしてあげるとさ)
そう言いつつ……周囲から気取られない様に、非常に小規模な「乱風風刃」を圧縮して発動させる。しかも俺が発動させたと判らない様に、時限、遠隔式でやってみた。
グバアアアアアアアアアアアアアアン!
(来たこれ!)
今日一の爆発……まあ、魔術で起爆する粉塵爆発ということになるのか。が、発生した。既に俺は、一端帝都から外れて、上空……千メートル程度に飛び上がっている。
(静電気スゴいな)
(着火用としては優秀なんだよなぁ。圧縮してるのに、魔力も異常に少なくて済むから、発動を止めることも難しい)
ほら。
今、発動した粉塵爆発は、アムネア帝国の攻撃に対してカウンターで発生した爆発粉塵を利用させてもらった。
まあ、当然、そのせいで、反撃したえっと、クロトア帝国のエルトハーデンのいる宮殿付近にも、もうもうとした粉塵が舞っている。
(そうなるとそこも……第二弾。どうぞー)
ズバムン!
離れたので音はそこまで大きく無い。が。更なる噴煙が、粉塵爆発を拡張した。宮殿、今、おかしいくらい埃っぽいもんな。
ドドン! ドドドドドドドドドドン! ズババババババ!
おうおう。お見事ですね。ショゴスさん。
(……あれくらいの数の静電気発火点を仕掛けろって言ったのはサノブじゃないか)
(うん、そう。だって密度が低下すれば発動しないしね。一定以上の粉塵が充満してきたら……だから条件厳しいし……と思ってたら、結構いってるな……。まっ。魔族はどうにもなんないというか。エラそうすぎて、わかり合えないと思ってさ。こんな適当ラッキーな状況で棚ぼた行けちゃうなら、綺麗に、更地にしても良いと思うんだ)
ドドドドドドドドドドドド!
ああ、建物が崩れ、埃が発生するたびに……時限式の摩擦発生術が発動して……歴史もそこそこあったであろう都の街並が……尽く噴煙の中に沈んでいく。
最近雨が降って居なそうなのも、効果が派手になってしまった原因の一つじゃ無いかな?
(地図……欲しいな。魔族側の国の)
(ああ。だが…難しいのではないか? このレベルでの戦争行為が横行している様な社会では)
(そうだなぁ……これまでで、一番精度の高い地図って、俺が飛んでショゴスが短時間で修正して作ったヤツだもんな……)
(あれ、もう少しちゃんとした地図に直したい。Gooagleマップみたいに)
納得いってないんだよな。この職人気質。良いけど。
(大まかなヤツ……ならあるかな? 上位貴族とか、貴族閥の上の方のヤツとか持ってそう)
(確かに)
グバババババババババ!
足元の帝都では粉塵爆発の連鎖が、笑えるくらい発生している。
(アレさ、アムネアとクロトア魔道士がお互いに暴れてる結果が爆発に繋がってるって気付かないのかな?)
(無理だろう。アレだけ爆発が発生してしまっては……お互いに何がどうなって、現在の状況に陥っているのか判らないのでは無いか? 合体魔術で発生する様な爆発等が、こちらの世界の常識であるのなら、既に、それとは比べものにならないくらい、大規模な爆発、破壊行為が目の前で発生している。仕掛けたクロトアの部隊ですら、帝都全体を破壊する、粉砕する様な攻撃が出来るとは思っていなかっただろうし……その攻撃が自分たちすら巻き込んでしまうなんて予想出来なかったはずだ)
まあ、そりゃそうか。
結果。お互いに疑心暗鬼になって、攻撃を繰り返すことになって、帝都と共に粉々になってくれると……時間稼げるかな?
(それは当然……。というか、サノブにとって……あの帝都の何万人……いや、十数万人だろうか。この規模だと。そんな魔族の命がその程度の価値っていうのがスゴイと思うぞ? 愛は地球を救うとか、募金してたのに。万里は)
(万里ちゃん偉いな~大事だよな。そういうの)
ショゴス惜しい。多分、同じくらいの人族奴隷も死んでるよ、あの瓦礫の下で。あまりに展開が急で助ける算段が付けられなかった。
(まあだが……いやまあ、そうだな……無粋だな。こちらの世界にはこちらの世界のルールが存在する。それをサノブがおかしいと言うような風に考えるのは、おかしいよな)
(そう言ってくれると有りがたい。まあでも、あそこまで魔族選民思考、魔力主義だと、話し合うことも、わかり合うこともできない気がするんだよな)
(確かに。クロトア帝国が……従属せよって言ってたけど、アレは魔族に対して言ったわけだし)
(あの従属は、従えっていう事だからな。人族に対してはそもそも、従属しろとかそういう意識すら無くて、下等民族だから、自ら従属してくるのが当たり前……って感じだし)
(ああ)
(そこまで下等と蔑む人族に……ここまで良いように翻弄されていることについては、どう思ってるんだろうな。気付いてないからノーカンって感じかな?)
(理解しないんじゃないか? 拒絶して)
眼下での爆発は未だに続いている。
アレだけ粉塵がもうもうとしていれば、火の魔術は使用できない。ということは魔族も理解しているのだろう。
仕掛けたクロトア側ですら、風の魔術と、土の魔術しか使用していなかったことからも、魔族が過去に粉塵爆発を発生させて、被害に合ってきた事を証明している。
だが。それを失念してしまう者……まあ、新兵や経験の少ない貴族なんかは、つい、自分の得意な属性の魔術を使用してしまうわけで。
(さすがにもう、今起こってる爆発は……俺達の残してきた起爆魔術じゃないよな?)
(ああ……あ、いや、まだ一部……残っているが、現在発生し続けている辺りの爆発は、もう、我々は関係無い)
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