518:急襲
(軍はハーシャリス閥軍の様に……閥っていう貴族の派閥毎に存在すると言っていなかったか?)
(言ってたヤツの感じからすると、メインはそっちだろうな。だけど、皇帝直属の軍、親衛軍とか、帝国軍もあるって言ってたしな。ソレ関係じゃ無いかな?)
隠蔽物が無いため少々ドキドキしたが、人目に付かずに中央の東屋的な建物に近付いた。若干高い位置に幾つか窓があり、透明度の低い曇ったガラスの様なモノがはめ込まれている。
ガラスモドキに触れる。お。震動が伝わりやすいのか、中の音が聞こえてくる。その感覚を……増幅するように【気配】を調節していく。
「現状の……フェダリオ領の魔物の分布は……」
当り……かな? 大会議室って感じの……ああ、議事堂とかそう言うんだっけか?
(ここは……国の運営を司る会議場だろうか?)
席数で言えば……百は無いだろう。
(規模は小さいけど、国会みたいな感じじゃないか?)
建物の形、構造、配置からいって、そんな感じだと思ったんだよな。
聞こえる範囲……だと、今は魔物の被害報告、分布や現状把握が議題のようだ。
「現場からの情報が少なすぎるが……まあだが、貴族閥の責任で討伐をお願いすることになるな……」
「そうですね……その現況ですが……明日には報告が可能かと」
広い議事堂に現在は……十名程度の出席者が、適時発言している感じだろうか。
しばらくは、この国の各地で発生している魔物に関係する報告や、対応に関する話題が続く。既に一時間くらいは経過しているだろうか?
(聞いてるの飽きた)
うん、ショゴス、その通りだけど改めて言わない様に。俺も萎えるから。
キンキン……なんだろう。多分、魔道具……魔石みたいなアイテムを打ち付けあったのか。耳の奥に直接音が響く。注目を集めた議長らしい人が雑多な意見をまとめた。
「では。明日は西伐に関する議会提案を確定させるということでよろしいですな?」
お。明日か。
「……陛下……のお心は既に決まっていると思うのだが……」
「ああ。だが、無いモノは如何ともし難い」
「くそっ。亜人共が……ハーシャリスの小僧も偉そうな事を言いおって、問題ばかりではないか」
「そもそも、あの森を越える事自体があり得なかったのですよ」
キンキン……。
「とりあえず、疲れた思考では良い判断もできぬ。全ては明日だ」
「はっ」
(明日もくる?)
(来ないと……かな)
いやだってさ。ここに来て聞いてるだけで各種重要情報が手に入るわけだしさ。見つけちゃったよね。いい場所。
(でも飽きる)
まあ、そりゃなぁ……国会中継って毎回見る気しないもんな……。
(つまらない)
ショゴスさんよ……いきなり小学生の様な事を言わない様に。
と、いうことで、次の日は朝、早めに宿を出て、覗ける、聞けるで素敵な、昨日と同じ場所まで急いで向かった。
まあ、食事は……我慢だな。さすがに【隠蔽】を使用している状態で行えないし。トイレは……さすがに休憩時間とかあるだろうから、その時に抜けるか。
「では、まずは、最新情報の確認から行う。情報担当官」
お。間に合った。それに、ちゃんと議題も昨日言ってた通りだ。ちゃんとしてるな。さらに、出席者の人数も昨日よりも多い。
雑多な情報の羅列が行われるが、中には重要な情報も混ざっている。
「ハーシャリス閥軍からの連絡は一切無い。森の横断に成功したのは確実なため、その原因を調査する必要がある」
「絶望の森に向かった第五親衛隊軍は壊滅したという報告を受けた」
「魔力感知による調査でも、親衛隊の残存魔力は既に失われている」
くらいか。
西の……深淵の森はこっちじゃ絶望の森と呼ばれているのか。まあ、ドラゴンもだけど、蟲も沢山いるからな。
「やはり、我が閥軍が行っていればこのようなことには」
「シフェリー卿。今はその様な意味の無い会話をする時間ではない」
「なっ。くだらないとは!」
「現状、どうにも手を出せぬというのが議会の最終意見でよろしいか」
誰も答えない。まあ、それが「まともな者」の意見なんだろう。
「では……これをシャリア侍従長殿、及び、ケザラルス近衛長官殿にお渡しする。さらに……」
なんかまだ、グダグダと続いていたが。とりあえず、判った。
(この国は深淵の森の向こうへ派遣する軍が既に無いってことか?)
(ああ、そうだな……国際状況に変化があればまあ、イロイロと変わるかもしれないが……どう)
ズズズズズズズズガガガガガガアアー!
え? 超低音の震動と共に、凄まじい破砕音が響く。これは……。
(爆発物によるテロ……いや、こっちだと、「爆裂」を使用した魔術か?)
噴煙……いや、これは建物が崩れた時に発生する、埃、ダストか。一気に視界が奪われる。まあ、魔族は魔力でイロイロと見える、感じられるみたいだから、視界を奪われても……。
衝撃で俺が今、覗いていた議事堂もにも被害が出ているのか。いやでも、この噴煙に比べて、ここは被害が少ないんじゃ?
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