517:お城潜入!

 なんかもう、どうでも良くなって来たので、帰ろうかと思うんだけれど、この程度の情報収集で帰還するのは勿体ないかな? と思ったりして。なので。


 潜入することにした。


(本当にあの帝城に侵入する……のか?)


(こっちの……というか、魔族の国って、本当に魔力……頼りだからさ。魔力の隠蔽が可能で、さらにその上で【隠密】とか出来ちゃえば、潜入作戦とかで、無双出来ちゃうんじゃないかな~と思って)


(そりゃ確かに……出来る……な)


 いや、何もそんな呆れた感じで言わなくても。


(そこまで魔力頼りなのだろうか?)


(なんていうかさ……滲み出てこない? 驕り高ぶりっていうか、魔力さえあれば大丈夫的な)


(……確かに……そう言われてみれば、偏っている……いや、それしかないから仕方ないって感じか)


 ああ、確かにそうかもしれない。俺が……身体能力もそこそこだし、気力っていうちょっとアレな力も使えるし、さらに魔力も結構ある。

 そんな感じで、オールマイティ? に様々な力を使えることから偏っていると思うだけで。


(魔力しか無いと思われているなら、偏るのも当たり前か)


(奢り……か。魔力こそ至高とか思ってそうだし、有り得るな)


 とりあえず、帝城の城壁に近付いてみる。魔力に関係する魔道具……警戒装置は存在する様だ。


 既に夕暮れ時だ。そのまま……城壁沿いに歩き、人影の少ない場所で、物陰に隠れる。元々小屋だったらしい場所の裏側だ。そこで一切の気配を消し……しばらく待つ。


 日が暮れるまで……約一時間程度、そこで隠れていた。


 隠密行動する場合、初動はこうして、気配を消して時間を経過させるのが大切だ。これは……ゲリラ戦を行っていたプロから聞いたTipsだし、俺も経験則的に当たっている気がする。

 これを教えてくれたヤツは潜入するなら3時間以上前に潜り込んでいるって言ってたし。


 身体能力強化を意識し、ジャンプして……一気に城壁を越える。この辺りに照明の魔道具が無いのは確認済みだ。幸い今日は曇り空で、空に月が無い。


 城壁内の……庭園の隅に降り立つ。こんな端っこなのに手入れはされているようだ。さすが帝城ってことなんだろうか。


 意識的に、【結界】正式で魔力を遮断する。戦場で戦った事で判ったのだが、俺の【結界】は魔術じゃないんだよな……なので、魔力に反応しやすい魔族でも、気がつきにくい。正直、ちょっとズルイ気もする。


【隠密】を最大限に発動し、庭の植え込みを利用して隠蔽率を上げながら移動する。


(ほら。ここまで誰にも気付かれていない)


(確かに。衛兵結構いたのに、節穴だな)


 魔力の無い者は劣等。なので、帝城の様な警戒が厳重な場所に侵入してくる者で魔力が存在しない者などいない。つまり、戦う者、敵対する者であっても全ては魔力が基本になっている。なので魔力の存在しない者、魔力を遮断する者には反応仕切れていない感じだ。


(隠蔽だと反応しそうな気がする)


(ああ)


 隠蔽は隠しているだけで、多少漏れている状況を指す。幽かだが漏れているのだ。あらやだ。


(俺だと気付きにくい少量の魔力の揺らぎにも、ショゴスなら気付けるもんな。そこまでではないにしても……魔族に同じ事が出来そうなヤツがいてもおかしくない)


(サノブのスゴいところは、それだけの能力を持ちながら、自分よりもスゴイ者や物を瞬時に認められる所だな) 


(そうかな)


(ああ。それだけの力があれば、驕り高ぶってもおかしく無い。いや、万里の知り合いの数少ない大人や、多くの子どもたち。能力の高い者は尽く、その傾向にあった)


 それはそうかもな……特に子どものうちは能力が高いほど、思い上がったり勘違いしたりする者も多い。


(それはアレだ。俺は……ダンジョンシステムに出会うまで、判りやすい能力などなかったし……潜在能力があったんだとしてもそれに気付いてなかったからさ)


(そうか。それまで「普通」で暮らしていたのなら、そうなるのかもな)


(少なくとも能力値は中堅から低めって程度だったな客観的に考えて)


(やはり、能力差というモノは幼少育成時の人格形成に多大な影響を与えるのだな)


(そうだな……)


 ショゴスが……何を言いたいのかは良く判らないが……まあ、多分、個体差とかそういう部分なのだろうか? 確かに彼は純粋な個体という気もする。エネルギーが増加してきたら、増加増量するだけでなく、分裂もするみたいだし。


 帝城の中は……なんとなく、奥に皇帝一族とか偉い人の住居、手前が……役場の様な感じになっている様だ。


 目の前にビル……とまではいかないか。幾つもの会館的な建物が並んでいる。各省庁が混在している感じかな?


(あの建物が中央に位置している……な。あそこで何か会議とかするんじゃないか?)


 確かに。会館っぽい建物の中央に……東屋の様な建物が配置されている。あそこは各会館からほどよく近い。

 こういう合同役場的な建造物の場合、力関係から構造が生み出されている場合が多い。


 つまり……中でもあの中央の建物に一番近くて正面に位置する大きな会館が……魔術関係……いや、この国だと、軍関係の役所……かな。



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