510:残念なお知らせ

 結論として。OSのバージョンダウン、古いOSの機能限定インストールはそれはそれで神力だか魔力=エネルギーが必要ということで、しばらく(とはいえ、数日でいけそうだとのこと)待つしかないということになった。


 なんていうか、正直、機材部のパソコン担当者と話してる気分だ。


 まあ、待つ間にイロイロ話したが、OSのバージョンダウン以外には、出来ることは無かろうという事になり。なので、ショゴスも俺と共に、東の世界、魔族の大地へ向かうことになった。


 というか、ショゴスのサポートが居ないと、長時間の飛行は辛すぎる。俺の疲労が凄まじい。なので、頼んででも、きてもらうつもりだったけど。


 西は無限大障壁のせいで、空から向こう側には渡ることが出来ない。が。東の端である、深淵の森は、遥か上空であれば遮るものは何も無い。


 多分、1000メートル程度であれば、ドラゴンが飛んでくるんだろうと思う。まあ、俺が乱獲しちゃったアイツらだ。低空であれば蟲だって飛んで来そうだ。


 なので、その遥か上、5000メートル近辺、危なそうなら更にその上を飛んで超える。こちら側には、なんか壁があるようには見えないし。感じないし。

 不可視の何かがあったら怖いけど……うーん。物理的な障壁になる様なモノなら【気配】で感じられそうだしなぁ。


 まあ、もしも、上空に西の大障壁と違った、透明の壁……なんてのがあったとしても、それは気がつけると思うのだが……うーん。よりあえず、マッハ以下のスピードで飛べばいいかなと。ゆっくり行こう。……いや、十分速いよな。うん。


(OSのバージョンダウンに成功した。残念な報告だ。これまで通り転職は可能だ。だがレベルアップがシステムに複雑に組み込まれていてどうにも適応することが出来ない。次元扉は依然、エネルギー不足により稼働不可能。転移扉は使用回数がハッキリと判る様になった。ダンジョンの迷宮に関わるシステムも依然解析が出来ていない。より煩雑に複雑な課題が幾つも出現してしまった。すまない。基礎的なことは全部可能になる……と言っておきながら不甲斐ない。判ったのは、後回しになっているとはいえ、大障壁の穴が塞がったことで、確実に神力、魔力の回復量が増加しているということくらいだろうか?)


(うーん。ショゴスがいなかったら、確実に完全放置だったんだろうから、現状が把握出来ただけでも問題無いよ。回復量が増加しているのなら、そのうち、OSを起動出来て、シロが復活するんだよな?)


(……現状、確実にOSを再起動出来て、シロが復活する所まで戻すには、最低でも五十年。何か不具合があれば百年チョイはかかる……)


 わーお。


 そういえば、小説で長命種の時間に関する感じ方が一般的な寿命の動物とは違うんじゃ無いか? という文章を読んだことがあるが「ちょっと休む」と言って目覚めたら、地上では数百年経過していた……なんていうのが当たり前なんだろうな。


 エルフが引きこもって数十年、百数年過ごしていても、彼らにしてみれば「ほんのちょっと休憩」なだけだったかもしれない……。なんか、コセコセとした現代社会の仕組みに組み込んでしまって悪い事したかな……俺の価値観、時間観でモノを言って悪かった……反省はしないが。


 やってしまった、関わってしまった以上は仕方が無い。うん。


(あ。でも)


(お?)


(ほら)


パッ!


 操作室の電気……いや、灯りが一斉に点灯した。明るい! そうそう、ここはこういう白い部屋だったよ、そうだよ。こうでないと、だよな。


(明るくなった。ありがとう、ショゴス)


(正直、大した事では無いと思うが……これですら、かなりのリソースを必要としたからな……とにかくこのダンジョンシステムは歪なのだ。増設に次ぐ増設で屋台骨、大黒柱が既に歪んでいる気がする)


 なんか、もの凄く古い温泉宿の増設しっぱなしの映像しか思い浮かばない。


(よし、なら行こうか)


(運良く……エネルギー量が増加して、回復のスピードが早まる事に期待しよう。ということで、監視や管理の為に分体を残すが、東へ向かうとしよう)


 忘れないようにポーション類を補充し、装備を確認する。


 というか、どう考えても「切り裂きの剣」は斬れ味が鈍っていて良いくらい酷使していると思うんだけどなぁ。自動回復の機能は生きているってことなんだろうか? 確か、このダンジョンで装備を出し入れする際に「迷宮機能集中総操作室に戻った時点で【回復】【修復】【洗浄】が発動する」っていうのが効いてるんだろうか?


(「切り裂きの剣」は……単純にこの程度の使用では斬れ味が鈍ることがないくらい強固なだけだと思う。その【回復】【修復】【洗浄】の要素もOSを理解することが出来ない一因になっている気がする)


 強すぎだろ。そんなのを初期から使ってたんだから、そりゃチートだよな。初期の身体能力が低かった頃からあまり苦戦しなかった理由が良く判る。

 

 ああ、そういえば、【回復】にもとんでもなくお世話になってたか。これがあるからギリギリの線を踏み越えて、実戦を訓練鍛錬に変更することが出来ていたわけで。

 腕や足を斬り落とされたことはないが、数センチ、数十センチ、斬り込みを入れられた事は何百回とあるだろう。

 血が大きく噴き出す前にシロに「転移」と伝えれば、即、何も無かったかの様に回復した状態で移動出来るわけで。


 まあ、装備も【修復】さらに【洗浄】まで行われるわけだから、怪我をした、痛いと思うのは一瞬で済んでしまっていたわけで、すっかり失念していたけれど。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る