503:到着

 こんな所で不意に明かされる、飛竜の秘密。竜騎士の秘密とでも言うのか。ヤツラは30分くらいしか飛べない。メモしておこう。


(そうか。まあでも、確かに、そんな気もする。あの巨体で長距離いけるなら、もっと見かけないとおかしいよな。確かに。文字通り航空便とかあったら便利そうだし)


(ああ……だが、見かけないという理由としては、竜種が希少種なのが主な理由だと思うが。……チェッククリア。オールグリーン。体組織、可動域に何ら障害は認められず)


 着陸後、ショゴスがイロイロとチェックしてくれていた様だ。何となく、身体を伸ばしたり、肩を回す。腰をひねる。


 まあ、そして、月明かり頼りで歩き出す。ここからだと……大体……東門まで15分程度か。


(……そうだ。さっきの、今後の展望などは森下と相談すると良い)


(まあ、そうだな。アレでなかなかの戦略家だしな)


(万里なんか足元にも及ばないオタクだと思うのだが)


 うん、それはそう。


 そんな他愛も無い会話? をしながら見知った東門に近づいて行く。当然、この時間では門はしまっている。が。馬車などではなく、人だけなら、見張り小屋の奥のドアから中へ入ることができる。

 他の都市の傾向などは良く知らないが、カンパルラでは深夜でも門の中に入れてくれるのだ。特別料金として銀貨三枚が要求されるだけで。


 この辺は、領毎、都市毎にルールが違うらしい。そもそも、カンパルラは入所税を取らない。つまり旅人たちから通行税を取らないのだ。まあ、これは、ここが東の最果てであり、ここより向こうに向かう者がいないから出入りに税をかけてもあまり儲からない。

 それと、ここは最果てであり、人の出入りをなるべく多くしなくては、維持することが出来なかったという。

 

 まあ、辺境の地を「開拓」する……というこの地を切り拓いてきた先人達の意志が未だに残っているのだろう。


 初めてこの都市を訪れた時の様に、見張り小屋に近づいて行く。


「何者だ?」


 うん、ちゃんと誰何された。うんうん。なんか懐かしい。


(そこに懐かしさを?)


(大事だろう~。ちゃんとここに人がいて、生活しているって証拠だし)


(そうだが)


「旅の商人「サノブ」と申します。到着が遅くなってしまいました」


 ちゃんと、背中には背嚢を背負っている。これだけ行商人っぽく見えるから不思議だ。


 そこからは、以前の通り……商業ギルドの会員証を提示し、裁きの水晶に触れて、咎人かを問われて、深夜入所料金を支払うと、問題なしで中へ入れてくれた。


 深夜だからなのか、会員証だけで無く、裁きの水晶も触らされた。

アレ、ちょっとドキドキするんだよね。咎人の咎っていうのが、どういう部分に反応するのか、その設定とか知らないし。


 そのまま、カンパルラを横断して、西へ向かう。


(さすが夜光都市。他の都市に比べて、おかしい程明るいな……何よりも街灯が明るい。帝国の都市が20Wだとすると、ここは100W以上あるんじゃないか?)


 まあ、確かにその通りだ。帝国は……「腹黒」が錬金術士なんだから、この辺の街灯とか、LEDランタンとか作って設置すればいいのに。なんでやらないんだろう?


(……あの宰相がやらない……いや、現時点で出来てないということは、出来ないのではないか?)


(そうかも……な。どう考えても夜光都市って効率良いしな。明らかに都市の稼働率を上げてるもんな)


 明るいと人は行動的、活動的になり、生産性も上がる。


 まあ、やり過ぎるとブラックな環境まっしぐらなので、定時交代制などのシステムを導入して負担減は心が得てもらっているが、「働きたいやつが思う存分働ける」というのは効率が上がる。


(というか、魔術士……の時も思ったんだが……錬金術士にも、得意属性……とかあるのかもな)


(得意属性?)


(俺ってば、地水火風の四属性全部いけるじゃん? でも、普通はさ、大抵が一属性じゃないですか)


(ああ、実際目の当たりにしていないが、サノブから漏れてくる知識データで理解はしている。そうだな。その可能性が高いな)


 つまり、俺の錬金術は全属性……で、宰相の錬金術は偏っている……と。ああ、そりゃそうか。あのメイドさんの。


(クルセルさんな)


(そう。あのちょっと偏執的に宰相に仕えてるっぽいメイドさん。多分スゲー強ぇ)


(ああ。彼女は強いな。宰相の側仕えが彼女だけなのは、その力があるからだろうし)


 そうだったのか。あの屋敷、あまり探らなかったから判らないな。


 えっと。


「魔力反応器」と「魔術紙」は過去の遺跡で発見された物を復元した……んだから、まあ、彼の能力に直接結びつく……ことは無いか。つまり、その次からの……。


「護符」:魔力強化、魔力障壁の護符。宰相曰く、失敗作で、まだまだ工夫が必要……と。これも他に存在する護符や「結界」の魔道具の改良版なだな。


「土壁製造器」「風壁製造器」「火壁製造器」:文字通り、各属性の壁を生み出す魔道具。ひとつの魔術に特化したタイプの魔道具……か。まあ、これが彼のオリジナルひとつ目ということだろうか。


「連絡器」:遠距離との連絡が可能な通信機の魔道具だ。これがもう、画期的というか。初期から有線では無く、無線仕様らしいのも素晴らしい。


で。最新作が「土人形」:錬金術によって生み出される土人形ゴーレム。大型の土人形で大規模輜重部隊を編成させたって言ってたよな。確か。


 ……つまり、宰相は。通常の魔道具系「しか」作れないということになる。もしかしたら、もっと細分化されるのかもしれないが、確実なのは、ポーション等の薬系の錬金は出来なそうだということだ。

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