484:簡単アレンジ
上空からの攻撃はもの凄く有効なのは判ったけれど。そろそろ魔力が足りなくなるやもしれない……。
(確かに。時間だ。これ以上はMPが回復してからの方がいいだろう)
(了解した。今仕留めた敵以外に……飛行部隊は?)
(現状は確認出来ていない)
落下していく。
(魔力の消費具合から考えて、段階的に制動をかけていく方が良いと思う。テストしても良いか?)
(お、おう。データを取ってくれるとありがたい)
段階的に【風槌】を発生させて、落下スピードを緩和する。っていうか、途中から……アレ? なんていうか、【風槌】じゃないんじゃ?
(【風槌】は風を面で発生させて、ハンマーで押し出すような感じの術なわけだが。まずその面を少々大きめにして、風圧……風の密度を落下エネルギーに合わせて低下させた!)
お、おう。なんか誇らしげだな。まあ、瞬時にそういうアレンジぶちかまして、さらに実戦投入して、ちゃんと使いこなせてみせるのが頭おかしいレベルだけど。
確かにさ……うん、出来る、出来るよ? 今、君が言った感じで【風圧】を使う事は可能だよ? でも、魔術はイメージが重要なわけで、それが出来る、それが可能だって信じられるようになるまで、それなりに試行を繰り返す必要があるわけで。
これでも俺、術を使いこなせるようになるまでの、試行回数が恐ろしいほど少ないってシロにも言われてたんだけどなぁ。それこそ、俺にはこの世界にはない科学技術の情報や、自然科学の法則の情報なんかも駆使している。大抵の魔術に求める現象はその辺で賄える事が多いからね。
でも。
そもそも、この落下スピードを落とす【風槌】……な。ウレタンマットを「押しつけてくる」……感じ。そんな現象、この世界のみならず、向こうの世界にも存在しないからな?
マットは床や衝撃を受け止める場所に「設置」するものであって、それを壁のように動かして何かするって図……お片付けの時以外見たことないでしょう?
っていうか。そしてなんで、いきなりで、無理のない自然な制動になってるんだか。俺としては自分の身体に優しいのでいいんだけどさ。
最終的には。柔らかく、ふわっとした感じで【風槌】に受け止められた。うーん。これもう、槌……じゃないよな。
(ま、いいか。とりあえず、朝になったら大攻勢をかけることになるだろうか、それまで寝かせてもらおうか。ベッドくらい貸してくれるよな?)
(貸してくれる……だろう? ああでも、この暗さじゃ、ノラムが空を飛んで敵を撃墜したっていうのは見えてないし、判らないのか)
そうなんだよね。まあでも、うん、何かあったら起こしてくれって言えば寝かせて貰えるよ。きっと。
結論。さすが、皇帝でした。要塞に二つしかない貴賓室に泊めてもらいました。ちゃんとシャワーも付いていたし、ベッドがふかふかでもの凄く気持ち良かったです。
「さて。昨日と同じ様に、畏まらなくて構わん。さらに食事をしながらで構わない。ノラム。何をした?」
久々の柔らかく寝やすいベッドでの睡眠によって、魔力は全回復している。
さらに、皇帝と腹心である……連絡隊副長というか、緋の月の頭目である所のバディアルさんとのプライベートな朝食に招待されていた。
皇帝の御食事だから、朝飯とはいえ超豪華……ではなかった。戦場らしい、スープと、固めのパンの様なクッキーのような物と、干し肉を炙った感じのモノ。何か果物のジュースっぽいものが出されているのが、ちょっと贅沢って感じなのかな?
多分、これ、貴族から平民、将校から雑務係でも、上から下まで一緒なんだろうな。スゲー好感度高い。「腹黒」は計算でって気がするけど、陛下は打算的にやってなさそうなのがスゴいな。
「皇帝陛下も同じモノを召し上がっている」……という真実が、使用人や料理番から、下々の者にまで伝わっていく、その効果、士気アップの効果は計り知れない。
「報告は受けていらっしゃるのでしょう?」
【気配】や魔力による人の動きを感じていると判る。帝国騎士団は……多分優秀な人材が一杯だ。昨日の夜、見えていなかったとは言え、暗いうちに調査を開始して、朝、日が出て目視確認した直後には様々な報告が上がってきているハズだ。
「ああ。だが……肝心の所がな……」
「結論として、昨晩、夜襲奇襲をかけてきた魔族の部隊は……ノラム殿が殲滅したということは理解出来ました。が……」
「方法が判らない?」
「ええ」
「我が帝国には魔術騎士団が存在する……。これは現在対峙している魔族の軍……以外に比類することの出来ない「特異な騎士団」であると自負している。ラハルの偉業の一つであると言って良いだろう」
皇帝の目が真剣だ。
「その魔術騎士団……の団長含め、ほぼ全員が……訳がわからないという報告をしてきている。発見されたのは……敵の死体、そして魔物の死骸のみ……だ」
「うーん。まあ、じゃあ。夜襲をかけてきた魔族。アレは普通に魔術で倒しただけです。そして……空……あ。空から攻めて来てたのって魔物でした?」
「あ、ああ。やはり、魔物に兵士が騎乗していた」
「どんな魔物でした?」
「正直……見たことの無い……少々不気味な大型の魔物で……ああ。蝙蝠やハースールと呼ばれる魔物の大型種、そして進化種ではないかと報告が。先ほど」
バディアルさんが補足してくる。
そっかーアレ、蝙蝠……か。というか、蝙蝠タイプの滑空する羽根であんな飛行軌道を取れるものなのかな……。
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