483:上を取り合う戦い

 ネックは……燃費……魔力使用量か。


(そうだな。考えているとおり、魔力使用量は相当なモノだ)


(当然それが制限になると)


(飛行中に……魔術は……放つのだよな?)


(ああ。「石棘」や「火球」……目的の異なる「風刃」の重複使用よりも楽な術を使用する)


(攻撃術の使用する頻度……にもよるが……そうだな……安全マージンを考慮して……現状だと30分が限界と考えた方がいいかもしれん)


 そうだよなぁ。レベルアップができないから、「大気操作」を入手出来ていないからな……。まあ、レベルアップしたからといって、それが手に入ると確定しているワケじゃ無いけど。


「大地操作」「水流操作」をゲットしている以上、次は……「大気操作」かな……と思っている。まあ、大気自体を操作出来たら、正直無敵だからなんか違うかもだけど。あ。火の「操作」もあるか。


「~操作」の術は、覚えて使いこなすうちに、その系統のあらゆる術が使いやすく、操作しやすくなる、基礎力強化に欠かせない術なのだ。まあ、術とはいっても呪文では無く……なんていうか、受動的常時発動型のスキルに似ている気がするんだけど。


 と、まあ、風属性の「〇〇操作」が手に入れば……もう少し効率良く魔力を使える様になって、飛行可能時間が増加するかもしれないが。


(よし。俺は……まだ調整がいまいちだけど……ショゴス。行けるな?)


(いけるっ!)


 というか、ノリノリだね……。それにしても。


再度。


グバンッ!


 圧のある音と共に地面が窪む。それと共に俺の身体は空へ。そして。今回は、最初から飛行魔術=「風刃」「風盾」「風槌」を絶妙に組み合わせたブレンド魔術を発動させ、更なる跳躍。


 直接的に……弾丸のように一直線に進む。


 正直、この飛行システム……上下の移動はそれほど難しく無い。元々下方向は重力が効いているし、上は単純に、下から突上げれば済む。

 問題は左右の急制動だ。緩やかに左右移動するのは、「風盾」をラダーの様に発生させればいい。だが。正直、余りに直線的に飛ぶので、飛行機のような曲線を描く方向転換が想像しにくいのだ。


「行きたい!」と思った方向へ即向かいたい……という直感的な制動が出来ないものか? 敵の攻撃を避ける際にも有効だと思うんだよな。


(横……から叩けば良いのでは?)


(そうなんだけどさ、前に進んでるじゃない? その状態で横から叩くと、どうしても、斜め前に進んで行くのよ。進行方向へ自分が顔を向けてから、後ろから叩く……っていうのが正しいと思うんだけど、その進行方向へ身体を向けるっていうのが……慣れないと難しい気がしてさ)


(がんばるよ)


(判った。しばらくは……お願いするわ)


クンッ!


 俺が……右へ行きたいと思った瞬間に、瞬時に丁度良い感じの「風槌」が「風盾」を叩いた。「強制的に方向転換させられる」のは、自分の身体の挙動が誰かに操られている感があってイヤなのだが……だが、横から叩かれるよりは判りやすい。


 早く慣れて、ショゴスヌキでもどうにかなるように操作を覚えようっと。


 距離とタイミングは未だ……よく掴めない。そもそも、闇夜では距離感に乏しく、目標の飛翔体を魔術の射程に捉える様に、ジグザグに近づいて行った。さすがに、直線で進んで行くのは的になりすぎる気がしたのだ。


 というか、ヤツラに火炎瓶だか焼夷弾以上の攻撃手段は……あるのか? まあ、俺もドッグファイトは正直、まだ厳しい。なので、そこそこ近づいて……後は魔術で仕留めよう。


 捉えた……相手を間合いに収める。


「石棘」!


 射程内から……数発の「石棘」を放つ。目標は魔力を放出している対象物。


 ……多分、飛行系の魔物に数本の「石棘」が突き刺さったハズだ。


 暗くて見えないが……魔物が失速し……墜落していく。多分、騎乗していた敵もただじゃ済まないハズだ。


ゴザッ!!! 


 地面に突き刺さる様に、魔物が墜落した。同時に……騎乗していた魔族も以下同様である。暗くて良く見えないけど……なんだ? 落ちる姿を確認しても、何も判らなかった。


(その辺の検分は……明るくなってからだな……後、飛んでるのは何体?)


(残り……三体)


 身体をそちらに向ける。そして、急制動でジグザグに上昇。高度を上げて……魔力の源は下から伝わってくる。


(ふふふふふふ……上空を確保してしまえば……下に向かって攻撃し放題じゃん!)


(それはそうだな……敢えて魔術を水平に撃ち出して敵とドッグファイトするつもりでいたのに……仕方ないか)


 まあでも、既に俺の中では結論は出ている。正面から清く正しくなんて理屈は、これっぽっちも理解出来ない。


 かなり高い場所から……見下ろすように敵影を探る。そして。


「石棘」×30……生成した「石棘」を上空から解き放つ。細かい最終調整はショゴスがやってくれている。


 後は「放つ」と宣言すれば、相手の行動を予測した角度で仕掛けてくれるらしい。


 実際には音は聞こえない。だが。聞こえた気がするくらい完璧に敵を仕留める。


「放つ」


 激しく痛い雨が、魔物を貫き。


 さすがに十方向からの鋭い、尖った石槍の攻撃は避けられなかったようだ。


 もれなく魔物は……落下していった。

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