476:帝国の西の端

 さすが高精細MAP! 迷わないな! さすがに等高線は入って無いが、方角と距離と……それこそ、縮尺率が一定っぽいのがスゴいな。アレかな、これ……スキル持ちがいると描ける感じなのかな……。


(なぜ?)


(なんとなくだけど【周辺視】で感じる周辺のイメージを広げていくと、こんな地図も描けるようになるんじゃないかな~っていう予感?)


(脳内のイメージを落とし込むのか)


(そうすると、こういう絵……いや、地図になるんじゃないかな?)


 さらに、街道の案内板も優秀だよな。まるで高速道路の表示板レベルでちゃんとしている。街道との交差点、さらに脇道への進入路がある所には必ずと言って良いほど案内板が立っている。


(この辺全てが「腹黒」宰相の指示なんだろうな)


(この国に取っては全然「腹黒」じゃないな。超絶優秀だ)


 そういうものだよ。自身の利益を確保するために、効率を優先すればするほど、ライバルにとっては「腹黒」となる。これマメ知識な。


(……「腹黒」というか、「凶悪」とか「最悪」とかそういう言葉では無くて?)


(ヤツのやり方は……気付かない者には気付かれないよ。つまり、策に填められたということにも気づかぬうちに支配されてしまう。軍事力を使うのは近隣諸国。その外郭、遠方は力では無く、策で攻める。最終的にはその暴力を使う事も厭わないっていうやり方だから)


(ヤツの掌で踊らされていた……ということも知らずに、支配されてるということか)


(そうだな。多分、恭順を示す国々に、宰相は笑顔で対応するのだろうな。つまりは……「腹黒」だよ)


(「残虐」「極悪」なんてのよりも……人死にが少なそうだ)


(そう。圧倒的に少ない。俺が気に入らなかったのは……効率重視のために無差別に子供が犠牲になった部分だけだ。ローレシアではそこそこ助けられた……が。多分、他国でも同じ事が行われ、無差別に多くの子供が死んだはずだ)


(それも貴族……尊き血の一族なら許容すべきことでは? 不満があるなら自らの力ではね除ければ良い)


(そうだな。その通り。負けた貴族が悪いんだけどさ。まあ、全ては俺が……生理的に受け容れられないってだけだよ。自分に出来ない事が出来るヤツはムカツクじゃん?)


(うん。むかつく。というか、貴族だろうが何だろうが……最初から子供を狙う作戦は確かに、自分も嫌だな)


(万里さんが嫌がりそうだな)


(……そうだな。私の主義趣向は万里に嫌われるかもっていう基準だな。なんていうか……恐怖だ)


(意見を同じく出来て良かったよ)


(うむ)


 ちゃんとししたMAP、案内板があったにも関わらず、思ったよりも……時間がかかってしまった。

 夜中に王都を出発し、日中走り尽くして……既に日は落ちた。今は大体二十時くらいか。ここまで……約18時間程度かかっている。


 周囲を警戒し、障害物を避けながら(まあ、時には破壊しながら)、爆走し続けるのはさすがに疲れる。あ。いや、レベルのせいで疲労度自体はそこまででもないのだが、何かをやり続ける……のは肉体の性能に関係無く疲れを感じるようだ。


 ああ、温泉で足を伸ばして……ゆっくりしたい……。


(確かに)


 そして……目の前に見えてきたのは。あ。いや、正確には見えてきた魔力や気配は。


 目の前の気配の集合体が……バーディフィシン要塞か。えっと何万だっけか? 帝国の……自由に動かせる戦力が全てここに集結していると言ってた。


 現在帝都を守り、各地方に派遣されているのは第四、第八騎士団。帝国の騎士団はひとつ五千名で構成されているそうだ。内訳は騎士が二千、従士が二千。非戦闘員となる輜重隊が千名と。戦えるのは四千名になる。


 えっと、簡単に聞いたところ、騎士が騎乗=馬に乗り、騎馬兵として行動。従士は所謂歩兵だ。戦場では騎兵である騎士の交換用の武器を携帯し同伴。撃ち漏らした者にトドメを刺し、戦利品を持ち帰る役割を担う。戦場以外では騎士一人につき一人、部下として身の回りの世話をする。


 なんていうか……騎兵と歩兵の混成部隊って感じだろうか? ちょっと判りにくい。


 で。それ以外のほぼ全てが……今回の親征に参加している。上記の二つの騎士団以外の、六つの騎士団、つまり、総数は三万、戦闘員は二万とちょいか。


 そこに、弓術騎士団が五千。これも直接戦力は四千だ。弓術騎士団は作戦毎に要所に配置されるらしい。


 魔術士は、第一から第五までの魔術騎士団。こちらはひとつ二千名で構成。とはいえ、大抵が人員不足らしい。攻撃用の術を使いこなせる時点で騎士となれるそうだ。一人前の騎士は約五百名。そして、魔力持ちの従士がその倍の千名。輜重隊が五百名。従士は魔力持ちとはいえ、魔術が使えないうちは歩兵と変わらない働きをするそうだ。

 

 つまり、戦える魔術士が五百×五ってことで、二千五百名はいる……ということなんだけど、定員割れしているらしいし、魔族のような協力、同期系の魔術同時使用なんて出来るハズが無い。

 なので、魔術騎士団は、弓術騎士団と違い、小隊単位で各騎士団に配備され、分散活用されているそうだ。

 特に第五魔術騎士団は、癒術士で構成されているので、非常に人数が少ないのだが、救命救急士として各騎士団で活躍していると。


 その他に、近衛騎士団もいるらしいが、今回、皇帝さんは魔道具で転移しちゃってるので、王都の守護を担当させられているらしい。親征といえば……近衛らしいので、ことある毎に不満の陳情で面倒らしい。まあ、今からでも向かわせろ、と。


 ということで……目の前の要塞に配備されているのは。


(約五万人……といったところだな。戦えるのは……そのうち五割ちょいか?)


 もうちょっといるとは思うが。まあ、戦力は二万名……と考えておいた方がいいかもな~。


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