475:高速移動中
(ショゴス。全部解除していいよ。ごめんな。面倒くさいことさせて)
(……解除した。ふう……さすがにこの距離でこの長時間だと辛かったな)
宰相が昏倒する直前……に。実はお仕置きとして放置していた、緋の月の若い衆? の拘束の制御をショゴスにお願いしていたのだ。
距離もそこそこ離れているし、あの数だからな……もの凄く微妙な魔力コントロールが必要になる。
始末しちゃうのなら簡単だったんだけど、クルセルさんに念押しされちゃったからなぁ。あそこで、アイツらを殺しちゃうのは……多分下策だったし。
(面白い話だったな……というか、アレだ、皇帝と宰相を讃える物語の様で……随所に、兄の皇帝と、弟の宰相の兄弟愛の話……だったが、アレはなんていうか、腐女子臭がした)
おう。お前もかショゴス……。だが。さすがだ。その指摘。俺も同じ様に感じていた。
(したな)
(万里の……友達で強力な娘がいてな……多分、万里もまんざら嫌いでは無い)
まあ、中学生女子などそんな感じで当然だ。
(とはいえ……方向的に、完全に西の要塞へ向かっている……でいいのか?)
(ああ、そうだな。西へ向かっている)
(それにしても何故? 帝国は敵では無かったのか?)
(うーん。国として考えればさ、ローレシア王国に対して各種仕掛けを行っていたのは確かだし、最終的には侵略しようとしていたんだろうけどさ)
そう話しつつも、既に帝都を離れかなりの距離を稼いでいる。振り返っても既に、都市の光は見えなくなってきている。時間は大体……0時くらいかな。
(正直、俺はローレシア王国なんていう国が、無くなったところでどうでもいいからさ)
(ふむ。確かに)
(まあ、別に帝国で無くてもいいんだけど。もの凄く良い統治をしてくれなくてもいいんだよ。普通。普通で。税率もそりゃ低いほどいいけど、国が立ちゆかないのはダメだ)
(……継続か。それは確かにとても重要だな)
(だろ? ショゴスは、日本という国をどう思った?)
(少子化によりあと数百年もすれば滅びる可能性のある国)
(ああ、そうだな。それも問題だよな。まあでも、その辺はAIとロボット技術の進化で解決していけないかな? と思ってる)
(うむ。確かに、第一次産業やサービス業への人手不足……をロボットで賄えれば、未来はあるな)
(うん。まあ、それはあっちの世界全体での話しでもあるけどさ。俺が言いたいのは日本の生活な)
(日本の生活……か。正直、万里は海外へ旅したことがないので、私も諸外国を検分したことが無い。なので、TVや本の情報との比較でしか無いが……よい国ではないかと思う。何よりも、犯罪発生率、殺人発生率、強盗傷害発生率が低い)
(ああ、そうだな。うん。まあ、イロイロと問題はある国だと思うんだけどさ。安定して生活する……という点では非常に優れている国だと思うんだよな)
(単一民族による国家であるというのも大きいのだろうな)
(難民受け容れの議論は相変わらずあるけどな。まあ、そうだろうな。とにかく日本は何も考えずに暮らしていくと言うことに関しては非常に暮らしやすい。資本主義社会なのだから、財のある者が優遇されるのは確かだが、ピンキリの幅が狭い)
(そうだな……こちらの世界、中世ヨーロッパ的な世界を見ていると、同じ人種であるにも関わらず、命の価値の差が大きすぎる。カンパルラに居るとそうでも無いので判りにくいが)
ショゴスは勝手に出歩けないからな……。外の世界の情報はなかなか手に入れづらいだろう。
(そういう……ぬるま湯のような国で育った俺は……当然だが、こちらの世界にもぬるま湯を求める)
まあでも、ハイエルフやエルフってさ、森に引きこもりの上に、単一民族国家を構築しがちっぽいし、日本人要素プラス、俺自身の種族特性が絡み合って、そういう「とにかく続いてゆく」という部分への拘りは尋常でない気がする。
(つまり、統治者は誰でも構わないと?)
(多少、民のことを考える余地のある者であるならな)
(つまり、この国の……皇帝に支配を望むと?)
(望んじゃい無いさ。ただ。今ココで恩を売っておけば……結果的に彼らが世界を支配した後で「優遇」してくれるんじゃないかな~って)
(自分で統べればよかろうに)
(やだよ。面倒くさい)
(世界統一……だろう? それは権力欲の権化、支配者の最上命題ではないのか?)
(なら、ショゴスがやる?)
(当然イヤだ。私は万里と一緒にいるのがいい。それに私は人間では無いから、その質問は意味が無い)
(ちっ。すぐに人外であることを振りかざしやがって。ずるいぞ?)
横目で街道を眺めながら、疾走し続けている。帝国内の主要街道は夜間でもほんのり明るい。魔道具……ではない。ぼんやり光り続けている蓄光の性能を持つ石とかだろうか?
(まあ、とにかく。俺は国などいらん。さらにその上の大陸統一なんていうのもどうでもいい。のんびりスローライフ最高じゃないか。あ。そうか。ダンジョンを育てるというか、スゲーダンジョンを作るなんていう目標はあったな。そう言えば)
(……ダンジョン作成か。そういえば……それは確かに面白そうだな……)
(帝国とか魔族とかそういうのが落ち着いたら、スゲー迷宮とか作ろうぜ)
(それは楽しそうだな……少々忘れていたが、システムの再起動をどうにかしないとな。しかしダンジョンの造営か。そういうの……万里がとんでもなく好きそうだ。前に大迷路を抜けるっていうアトラクションに行った時も大喜びだったし)
しかし、ショゴスは……万里さんが好きだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます