455:酒場で情報収集は基本(いまさら
「ああ……ギルドに俺の先輩の行商人が立ち寄ったんだが。かなり慌てててな。この辺りを離れるらしい」
「その原因がグランドドラゴンか。いや、良くてもサンドイーターって……。そりゃ親征もするってなもんだな……」
「そ、そんななんですか? 正直、サンドイーターは聞いたこともないし、グランドドラゴンなんておとぎ話でしか聞いたことがなくて」
グランドドラゴンは、確かもの凄く大きい……山のようなドラゴンだったハズだ。カンパルラで初期情報を収集していた時に読んだ絵本で見た気がする。まあ、巨大な……ゴツイ蜥蜴っぽい絵が描いてあった。シロが情報収集した時代には、アースドラゴンと呼ばれていたらしい。
ラージャンは神妙な顔で答える。
「サンドイーターは……何でも喰らい尽くす。サンドワーム、数千匹分の脅威と言われているな……。まあ、こちらは何十年かに一度「最果ての砂漠」に出現する。その度に、親征とは行かなくても帝国の騎士団のほとんどを注ぎ込んで仕留めることになってるんだが」
「ちょっと前から噂されてた……帝国は戦力を一時、国内に集結させるって話は本当だったんだな……」
ああ、その話は、エルフの冒険者がゲットしてくれた情報だな。距離や行商人の話の伝わり方から考えて、やはり、早すぎる。ここは帝国との国境付近なのだ。それがローレシアにいる行商人にまで伝わっているというのは……。
「ああ、親征である以上、サンドイーター以上という可能性が高いだろ。グランドドラゴンは……実は俺もよくわからん。当然、おとぎ話では知っているが……実際に出現したという話しは聞いたことがない」
「ラージャンでもか……。グランドドラゴンに関しては、俺もサノブと変わらん。判らん以上は……近付くのは得策じゃ無いぞ?」
「ええ。そうですよね……行商人は未知の危険は避けよ、ですよね」
行商人は利益計算から、単独で行動することが多い。確定した儲け話があれば冒険者を護衛として雇ってもいいのだが、下手すると冒険者に襲われて終了する。
なので、基本、未知の危険は極力避ける。冒険者等が切り拓いた後、討伐した後、とにかく安全が確保されたことを確認してから行動するのが吉と言われている。
ああ。自分のマール馬車を所有して商売をするような商人は、大抵どこかの都市にキチンと店を持つ。この世界の行商人とは、自分の足で、未開の地の先にある開拓地などを訪れる商人を指す事が多い様だ。
なので、俺がカンパルラに初めて着いた時に用意してあった言い訳……「マールの一頭立ての荷車を奪われた」とか「
まあ……うん。特にゴーレムなんておとぎ話でしか登場しないもんな。
さて。なかなか良いことを聞けた。
(ああ。右奥だな。マーキングした)
さすがショゴス。俺がこの宿屋兼酒場に足を向けたのは、偶然じゃ無い。若干だが【魔力感知】に反応があったからだ。
カウンターの中にいるのは普通の料理人……だと思うんだが。
とりあえず、ラージャンとモランにさらに酒を奢り、部屋に戻る。
(怪しい素振りはほぼ無い。だが、料理人が「サノブ」という名に反応したぞ。やはり、緋の月の関係者か?)
(どうかな。まあ、そうは限らないよ。単純に協力者かもしれんし……といいつつ、厨房の奥の方にそれなりの魔力反応があるからな……この宿屋に何かしらの魔道具が置かれて、それが稼働しているのは間違い無いな)
(帝国の戦力が国内に集中しているという話は……そうか。これまで国外に向かっていた戦力を国内に移動させたということで、この隙に攻め込むような国がないようにっていう作戦か)
(そういうことだろうな……それにしても、グランドドラゴンか。戦力規模としては同じ様な感じなんだろうか? 魔族の……合衆国は)
(判らん。そもそも、グランドドラゴンが判らん。デカそうだ)
(そうだな。まあ、俺も本気で絵本情報しかないし。って多分、それは嘘だけど)
(そうとでも言わないと……どうにもならないような事態に陥っているってことだろうな)
そもそも……暁の月は裏、闇と呼ばれる、情報収集等の世界の裏側で活動している者達だ。
地道に活動を続けて……多分、十年単位で時間をかけて、各国に拠点を造り、人脈を押さえ、名を明かさずに動ける様に準備したんだと思う。
だが、今回、それを放棄して……帝国に戦力を集中させている。正直、帝国以外の情報はどうでもいい……というくらい、思い切った行動だ。
(あの「腹黒」宰相がそこまでやらないとヤバイと判断したんなら……そういう事なんだろう)
(信用度、高いな)
ヤツのやり口は完璧に近いからな。正直、頭で策略で政治で適う気がしない。
(くくく。戦争に於ける全部だな)
(ああ。全部だ。だが)
そう。だが。
「喧嘩なら負けないぞ!」
(サノブ。可愛く言ってもダメだ)
(ダメか)
(んじゃ、喧嘩だ。動こうか)
【収納】からマスクを取り出す。装備もそれに合わせて変更する。
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