448:完全に消失

「アムネア魔導帝国はあちらの大陸、魔族世界では、多分……ザコです。話しをまとめると、この国みたいな立ち位置じゃ無いでしょうか? あちらの大陸、魔族の国の中で一番西に位置する国。深淵の森に面しているからそちらからの攻撃は受けないと安心している国、というか。なので、怒ゲージはそのまま取っておいて。後続の侵攻部隊がこちら側に攻めて来れないようにするだけで、後は放置でいいのではないでしょうか?」


 まあ、確かに。というか、さりげなく、この国がザコだとディスってますね。森下さん。


「ああ、さらにさらに。今回のハーシャリス閥軍っていうのは、帝国の中でも断トツで最強閥軍と言われていたそうです。なのであのプライドの高さだったみたいですけれど。その一番の理由が、死兵術……えっと、死霊術っていうんですかね。アレはハーシャリス閥皇家の血統奥儀と呼ばれる種類……まあ、一族相伝な技らしいですよ」


 え? そんな? というか、それにしては護衛も何も……あ。でも、俺の術を防いだか。そういえば。あの近衛部隊だけは。


「え? そんなに? じゃないです。御主人様が「寝台君」と呼んでいたのは今回の総指揮官のデリフィア・ハーシャリス第五皇太子で、術士としてアムネア帝国最強とまで言われていたとか」


「……はい」


「なので、ぶっちゃけ、ザコ帝国を相手にすること自体が時間の無駄です。そんなことを単独行で行うつもりなら……。一人で、帝国は帝国でも、西の帝国、ハーレイ帝国へ向かうのはいかがでしょう?」


「えっと、「腹黒宰相」のとこ?」


「……渾名呼び。基本心の中とはいえ気をつけた方がよろしいかと」


 ……そういえば、ショゴスは人前で言葉にする機会もないのに、俺が名乗るときに間違えないようにと、ノラムの時はノラムと呼んでくれていた……な。そうか。ということは、俺はショゴス以下か。というか、ショゴスの他人に気を遣う能力高すぎだろ。


「そんな渾名を……蒼の宰相、ラハル・ハーレイです。帝国の現皇帝、クロア・ハーレイは「良きに計らえ皇」と呼ばれるくらい、弟であるラハルに政治を任せています。ですが……これは、昼行灯の振りで、ラハルが自由に動ける様に……だと思われます」


「そっちの帝国はもの凄く厄介そうなんだよなぁ……」


「はい。冒険者エルフが集めてくれた情報……話しを聞けば聞くほど……なんていうか、賢い……政治家としても武人としてもレベルが高い者が多い気がします。御主人がいなければ、将来的にこの国も帝国の一部になっていた……と思いますし」


「そうかな?」


「そうです。御主人様が居なければ、ディーベルス様は娘さんを失い、当然、領主になっていませんし。辺境騎士団も設立されておりません。ローレシア王国全体が、帝国の策略でボロボロになった頃合いで、今回のハーシャリス閥軍が襲来……あ。そうか。御主人様がいなければ、深淵の森は突破出来ていませんね。では、経営不振だったリドリス領は他の貴族、又は王領として存続、純粋にジワジワとハーレイ帝国に取り込まれて……併合でしょうか」


 まあ、そうだよなぁ……。多分「腹黒宰相」は国を乗っ取るのに「国民に被害が出ない一番のやり方」で掌握してくる。人口に対して、貴族なんて大した数じゃ無い。王族貴族は全部取り潰しでも、支配者が変更されるだけで、平民たちの生活は大して変わらない。

 子供を標的に……と腹が立つのは今も変わらないが、狙われていたのは、貴族子女ばかりだ。使えるものは全部使うんだよなぁ。あいつ。


「全部見透かされそうでヤダ」


「ヤダじゃないですよ。まあ、好きになれとかそういう話しでは無く。御主人様が自分の目で……帝国とその西で起こっている事を見てきて欲しいのですが。いかがでしょう?」


「多分、最終的には行くことになりますよね。戦うにしても、何にしても」


 松戸まで同意見か。っていうか、まあ、そうだよなぁ。状況を確認しないと何だよなぁ。そのために東に乗り込んで、まずは色々と聞いてこようかと思ってたんだけど。


 よく考えなくても、森下の言うとおり、なんとか魔導帝国はザコ……なんだろうし。最新情報は集まらないよな。


「でも、御主人様が西へ向かうに当たって、通信機でしたっけ? 魔道具であるんですよね? は欲しいですよね」


「ああ、さっき話した、接続の魔道具って「指揮官君」が言ってたヤツな。アレ、深淵の森のこちら側では使えないんだってさ。持って来てたんだけど、使えなかったって」


 ……まあ、ごめん。そうは聞いてきたけれど、現物が、あの戦場の脇辺りに武器類等と一緒に積んであったっぽい。兵糧と一緒なら、奴隷達と共にサルベージ出来たんだけど。

 戦場じゃ……なぁ。うん。全部……燃やし尽くしちゃったもんな。「太陽火球」で。あれ……使うの控えようかな……うん。本気でお掃除する時専用にしようか……。


「こっち側で使えそうなのは……「腹黒宰相」だな。なんだっけ、彼の手足の……危なくなってくるとどうにかして逃げて、仲間に自分がどうして死んだのかを伝えようと必死になる忍者部隊」


「ハーレイ帝国の裏の者達ですね。緋の月です。覚えてあげてください。命がけで色々やってたのに、全部御主人様に阻止されちゃって、なんだか可哀想なので」


「こっちだって命がけだし!」


「そうですけど」


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