446:ショゴスさんの言う通り

 実は、ショゴスの言う、一部システムの復旧……に関して、個人的に期待出来ると思っている。なんとなくな根拠も存在するからだ。


 現在の俺のレベル……は、確か、魔術士がレベル82くらい。迷宮創造主ダンジョンマスターが54だったかな? それ位だったハズだ。最終確認し、レベルアップしたのがかなり前なので、正直、詳しく覚えていない。


 えーっと転職したのの最後は、松山詩織さん殺害の報告を受けて、急いで向こうの世界に戻る直前だったハズだ。


 その時に既に、確実に、魔術士はレベルアップ可能だったと思う。確か、帝国の炎の何とか……臭かったヤツを倒したり、他のダンジョンを踏破、掌握する際に魔物をかなり倒したりしたハズだから。


「炎の」と戦って、万里さん、ショゴスと出会い、三つの小規模な築浅のダンジョンを掌握したところで、松山さんの件で急遽向こうに戻った。

 さらに、向こうでかなり暴れた……と思う。そもそも、向こうの世界で暴れると経験値倍増なボーナスが付いていた。

 さらにさらに、こちらに戻って、魔族、ハーシャリス閥軍の約半分を俺一人で討伐。いくらなんでも、これでレベルアップしていなかったらおかしいレベルだ。


 で。根拠なんだが。


 元々、レベルアップして各種スキルと習得する前に……そのスキルの一部が使える様になっていたことがあった。


 それこそ【気配】をゲットする前から、なんとなく周囲の気配を感じられたり、【魔術】が無い事で身体が悲鳴を上げていうのを無視して魔術を使っていたら、スキルをゲットする前に、なんだか、楽に魔術を使える様になっていたり。


 つまり、俺の能力、スキルなどは各種処理が俺の中で行われていて。表示したり、力を発露させる、開放するのがダンジョンに入って、操作室に戻る瞬間のレベルアップ……に設定されている「だけ」なのではないのだろうか?


(ほうほう。確かにそれはそうかもしれない。でなければ、村野がダンジョンコアにエネルギーを充填出来るハズがないからな)


 何よりも、向こうの世界に行く直前、俺は、錬金術士から魔術士に転職し、その際に【倉庫】から大量のポーションを【収納】へ詰め込んでいる。その数が尋常では無い。

 思い切り忘れていたが、【収納】は習得当時、収納出来る物の容量が小さくて、使い物にならないと思った記憶があるくらい、容量が小さかった。だが。今は……かなりの量のアイテムを持ち運べている。

 

 つまり、レベルアップ……はしていないのだが、【収納】の容量は確実に増えている。どれくらいの容量なのか……というのはハッキリ判らないのだが、少なくとも……前に意識した時の十倍以上にはなっていると思う。


 さすがにこれは隠しようのない事実というか。隠してないけど。


 さらに。


 向こうの世界で師匠との稽古中に、スキルを習得したことがある。当時はそういうこともあるんだな。くらいにしか思わなかったが、ダンジョンシステム的にはかなり、イレギュラーな現象だ。


 なにかどうなっているのか? は正直判らないが「俺」がダンジョンシステムというシステムの制御下に置かれている……わけではない証拠の一つじゃ無いかと思う。

 未確定だが「俺」という個体を中心に、各種システム? の様な物、世界の理とでもいうのか? が、介在しているという方がしっくりくる。


(ああ、そうだな……正直、向こうの世界での現象ですらシステムとして変換すると非常に複雑だった。さらにこちらの世界の現象、そして、それを繋ぐダンジョンシステムも加えると……とんでもなくこんがらがった大きな毛糸の塊の様だ)


(ショゴスは……それを解いて、さらに、それに介入しないといけないわけだ……すまんな。この礼はいつかするから)


(構わない。私は……万里が今も向こうの世界で普通に、幸せに暮らしているという事実があるだけで、村野には命を捨ててでも返さなければならない恩がある。そもそも、村野から吸収するエネルギーが無ければ、とっくの昔に力尽きていたからな)


(そう言ってくれる事に甘えないようにするよ。なるべく。ただ……こんがらがった毛糸の塊を認識することも出来ない俺には、どうにもできないからな)


(ああ。どうにかして……一部だけでも……)


(頼んだ。力尽きないように休みながら、な)


(了解した)


 ショゴスを操作室に残して。俺は自分の部屋……書斎というか執務室に戻った。

 

「ちょっと色々と整理したいから、森下も呼んできてくれない?」


 戻った事を察知した松戸が御用伺いに来たのでそう伝える。というか、俺がなんとなく彼女達を呼びたいな……と思った時には必ず側にいるんだけど。なんか念話とか……そういうの自然に使って無いよな? 俺。


 逆に松戸、森下がそういう能力を持っているとか? 特に松戸だな。お茶が欲しい時は必ず姿を見せるもんな。


「お茶もお願い」


「畏まりました」


 お茶を入れてもらい。いつも立ったままの二人も椅子に座らせる。


「森下。今回の件、どう思う?」


「ハーシャリス閥軍……アムネア魔導帝国の侵攻についてですか?」


「ああ。発端はそこだろうし」


 さらに言えば、その発端は俺がドラゴンを狩っちゃったからだけどさ。


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