439:魔道具反応

(左。すまん。魔力感知が出来ないので、反応が遅れる)


 左から伸ばされた剣を腕毎、振りかぶった剣で斬り落とした。


(構わない。サポートありがとな。っていうか)


ドン!


【結界】「ブロック」を近付いて来たヤツラに向かって生成する。


うわーーーーー


(多分、大丈夫だと思うわ。久々で興奮してるけど)


 情けない声を上げながら、突っ込んで来ていたヤツラが、転びながら後退する。それに足を取られて、後続の者達が転ぶ。


 そんな、戦場で敵を目の前にして転んでいる馬鹿に、サクサクと剣を突き立てていく。


 とても簡単なお仕事です。


(あ、ああ。確かにその様だ。すまん。ノラムが、鍛えられた身体を所持していることは認識していたが、ここまでだとは思わなかった)


(あんま筋肉付かないからなぁ~まあ、多分、それは種族的なモノもあるのかもな)


(種族……ノラムは人間じゃないのか?)


(そう思ってたんだけどな。誰にも言うなよ? 内緒だぞ?)


(あ、ああ)


(俺、ハイエルフらしいよ)


(ほう……エルフよりも長生きして、神のような扱いを受けるという……)


(万里ちゃん知識?)


(いや、ネット小説とか多くのラノベを読んだ結果だ。万里はクトゥルフとか、怖いのが好きで図書館とかであまり借りてくれなかった)


(くくく。まあ、俺もハイエルフの知識なんて、そんな感じだったし、うん)


(そうか……だからこんなに……魔術も剣術も使えるのか)


「ブロック」で転ばせる。ああ……オーク転ばし師として、ひたすらダンジョンで戦闘を繰り返していたあの頃を思い出すな。


(ハイエルフは関係無いかも。元々の性格かな)


(……というか、万里は全部、おとぎ話、作り話、フィクションの世界だと言っていたのだが……。ノラムがハイエルフということは、向こうの世界にハイエルフの里とかもあるのか?)


 まだ、転がっている。突き刺す。遅いよ。


(そういうワケでも無い……みたいなんだよなぁ。俺もその辺良く判ってないというか)


(そうか……)


 顔面が当たる高さに、「ブロック」を生成する。勢いを付けて走って来たところにそれは……まあ、そうなるよね。


 仰向けに倒れた魔族の心臓辺りに剣を突き立てる。


 これまた簡単なお仕事だ。


(……魔力が無くなって気づいたのだが……今、ノラムが使っている力は……何だ?)


 ん? どういうことだ? ああ、気力か?


(これが気力か。非常に微量だが……ほぼノラムからしか感じられない……というか、これは……向こうの世界の力……か)


(どういうこと?)


(何となくでしかないが……魔力はこちらの世界の力。気力は向こうの世界の力……の様な気がする。これまでキチンと分類してこなかったのだが)


(うーん。どちらもこちらの世界の力じゃないの? 不思議力じゃん? そういうのはこちらの世界所以じゃない?)


(違うと思う。明確に質が別れている。そもそもの根源は一緒……いや? 一緒じゃないな。何だ? 良く判らん)


(神力ってヤツか? シロが言ってた。女神の力だ。その他にも……龍脈とかもあったな……)


(ああ……女神……神の力……うーん。正直、曖昧な所が多すぎる。全ての源は……神力なのだろうか? うーん)


(ショゴス……と、とりあえず、目の前のヤツラを片付けてからにしようか)


 視界の隅に入った、振りかぶった剣の下に……「切り裂きの剣」を突き出す。向こうから勝手に刺さりに来る。後の先、ってヤツなのかな。これは。


 あ。そういえば……そうか。ここにいるヤツら……。


(ショゴス……隷属の首輪が……どこかにあると思うんだけどさ、判る?)


(ん……あるぞ。というか、もの凄い判りやすいな。魔道具……で、しかも首輪形状のモノが大量にある。周辺の魔力が無くなっているからか、妙に判りやすいな)

 

 そうだよな。どう考えてもこのあと必要になるアイテムだもんな。


(どこ?)


(正面右奥の天幕だ)


 このあと使おうと思ってたんだろう。もうすぐにでも使える様になってるってことか。


 剣を振りながら……文字通り振り回しながら、その天幕へ向かう。


 上半身はブンブン状態。まあ、子供の様な剣の振り回しだ。だが、足腰は……非常に繊細に動かす。スゲー難しい。


 が。


 さっきから【手加減】を発動している。なので、ヤツラは全員生きているのだ。生かしている。か。

 今の今まで首跳ばしたり、心臓を一突きしたりと、効率良く「殺し」ていたのを何を今さら……なんだけど。純粋に、こいつら全員を殺しても、何の利益も無いことに気がついただけだ。

 こいつらは侵攻軍で、当然、金銀財宝なんて持っていないし、それこそ、兵糧も必要最低限しか持っていないだろう。奴隷で構成された補助部隊というか、荷駄隊、兵站部隊が最低限と思えるくらいしかいないしね。


 それもこれも、全ては略奪で賄うことを前提にしているだろうから。


 まあねぇ。戦力差として、魔術を使える者しかいない国と魔術を使えない者しかいない国では……軍事力に差がありすぎる。


 そりゃ、鎧なんて……必要無いよな。


 魔族軍を見て、最初に違和感があったのはそれだ。


 人の国の軍、騎士団や守備隊を見れば分かるのだが、全員が胸当て程度の鎧は身につけている。胸元から腹にかけてをキチンと守り、手先足先を籠手や足鎧を装備する。



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