433:防御系
「何ごとだ! 建造物を燃やさぬように火の魔術は使用厳禁の命を聞いていなかったのかっ!?」
奥からちょっと偉そうなヤツが出てきた。うん。というか、戦争で……建造物を燃やさないように手を抜いて戦ってたわけだ。
そりゃそうだよな。やつらここは、植民地、奴隷の国になるんだもんな。施設とかわざわざ金を使って建造するの面倒だもんな。将来はともかく。
はい。
「爆裂火球」
ドンッ! ドン、ドンドン!
今度は明確に……ヤツが出てきた建物……多分、王宮の入口のエントランス的な部分……に向かって火球を放つ。さらに周囲にも。馬車が入る場所とかなんか良く判らないけど、そんな感じの間取り? の前庭ってヤツを、爆発と火球が覆い尽くす。
串刺しにされて晒されていた王城の住人達……多分、王様とかいたと思うんだけど、まあ、いいよなって感じでそれが激しく燃えていく。
全部、消しちゃおうかと思ったんだけど、この串を後で使うからなと思って。
(……村野。この城は……その……この後、この地を治める者が使ったりはしないのか?)
(使うかな? あ、そうか使うな。王族とか……もしもほとんど全部殺されたんだったら。残ってる王家の血筋で一番上は辺境騎士団団長閣下であるところの姫様だろうしな。あの娘なら勿体ないから流用って言いそう)
水、水……。ということで、急遽。
そういえば……でネットか何かで見た知識を思い出した。「水生成」「水流操作」でザザッと濃密なミストを充満させる。大量の水が使える……それこそ川のそばとかならともかく、水資源の豊富でない場所で火を消したいのなら、ミスト化した方が効率が良いんじゃないだろうか。
視界が通らず、歩くのが困難なほどの濃密な霧で一帯を塞ぐ。おお。初めてやったけど、やっぽ消火が速い……よな? うん。
火勢が一気に落ち着いた。このまま放置しておくだけで、多分、大丈夫だろう。
(ということで、あまりお城には傷付けずにいこうか)
(判った。ならば、今の騒動で駆けつけて来ているのが10名ほど……仕掛けてくるぞ?)
ズシャズジャズシャ!
えっと。いきなり「石棘」のちょっと太い……なんていうか、槍の変形版みたいなのが、俺の立っている場所に生えた。正直「魔力感知」によってどんなのが来るか事前察知出来ていたのだが、別に躱す必要も、対抗処置を行う必要も感じなかったので【結界】「正式」で喰らうままにしておいた。
「!」
大量の「石槍」が突き刺さった? 様に見えた? にも関わらず、何一つ傷を負っていない俺にビックリしたのか、なんか驚愕している感じが伝わってくる。
あーでも、今のが合体魔術というか、合同魔術とかそういうヤツか。複数名の術者が、呪文の発動をシンクロさせて、威力や範囲を増加させる感じなのだろう。
どうしようか。まあ、逃がさないように王城全体に【結界】は施してあるので、少しずつ潰して行くのでもいいか。……王都に全軍が集っているのなら、急ぐこともないだろうし。
魔族は基本、魔術士らしい。明確に戦士という存在は居らず、魔術剣士が前衛を務めている。これは魔力が足らなかった者が仕方なく選ぶ立ち位置で有り、見下される、使われる者であるらしい。
で、偉い奴は基本、魔術士だ。現在、この元王城には偉い奴しかいない。するとどうなるか。
ガスガスガスガスガス……
視認レベルでの遠距離戦ということになる。
これは……なんていうか……不思議な感覚だ。向こうの世界で体験したリアルな銃撃戦ではないし、サバゲー的な大胆な戦略系の戦闘とも違う。敢えて言うのなら……幼少時にオモチャの鉄砲、銀玉鉄砲でやった、お互いに玉に当たり合いながらのお遊び……の様な感じというか。
特に……俺はその感覚が強い。なぜなら……向こうの放つ魔術を……尽く【結界】で拒んでいるからだ。
今のは「風刃」かな。そして右からはまた、「石棘」。大きさや量は違えど、魔術による遠距離攻撃が繰り出される。
正直、さほど大した事は無いので、【結界】に当たるがままにしている。
で。お遊びではないので、こちらの術は。通る。というか、何故、魔族共は魔術による障壁を張らないのか? と、問い質したいくらいだ。
(ひょっとして、魔力によって壁を作り、術を防ぐという考え方が存在しないのかもしれない)
え? そんなバカな。魔術の撃ち合いをしてしのぎを削ってる種族なんでしょ?
百歩譲って、【結界】「正式」の様な……防護膜とか魔力対抗術みたいな感覚で使うタイプ……概念的な防御系の術は無くても仕方ない。だけど。
別に工夫しなくても、「大地操作」があれば、「土壁」を生み出せる。風で敵の攻撃を逸らす、それこそ特に矢をそらすのに使われる「風盾」なんてのもあるし、「火壁」という乗り越えようとしたモノを燃やす壁まである。
(しかし、そう考えなければ……どう考察してもどこかおかしい。攻撃力に比べて防御力が低すぎ……いや……村野、前方の敵に通常の「石棘」よりも大きめのヤツをゆっくりと撃ち込んでみてくれないか)
(判った)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます