432:晒し行為
王都の住人は……まあ生かされているけれど……魔族による略奪、陵辱行為は大絶賛進行中の様だった。
ヤツラの倫理感はよくわからんな。だって、魔人は真人なんでしょう? 言い張ってたもんな。
さらに魔族は人族とは違うって言ってたし、そう思ってるんだよな? それは簡単に言えば、人間と猿の関係……みたいなものを指しているんだと思う。
にも関わらず、陵辱はするんだ。これってつまり、人間のオスがメスザルを襲うみたいなものでしょう? ……そういう思考って有り得るのかな?
そもそも生殖機能とか、生殖のシステムとかは一緒なのかよ。アレだけ別の生き物だと言い張っているのに。
ショゴスに提示される情報によれば、魔族達は王都内にかなり分散して存在している。まとめてぶん殴れるだけ、軍としてまとまっている状態が良かったなぁ……。これどうすればいいのかな?
うーん。うーん。ああ、もうさ。王都毎、全部燃やしちゃうか。別に、この国のしかもここ在住のヤツラに思い入れないし。ってそれはさすがに……と考えた時点で思い出した。
辺境伯閣下……だ。
そうだ。「魔力感知」には引っかからない。というか……辺境伯邸には……複数名の魔族が確認出来た。
「出てけよ」
急ぎ……もてる力全てを使って移動。屋敷に居た魔族を全員「ブロック」で拘束する。既に荒らされていたが……屋敷をこれ以上汚したくなかったので、ブロックを庭に移動して……中の空気を抜いた。
魔族がどれだけ偉そうな事を言っても……彼らも我々と同じ様に息をしている。厳密に言えば、この世界の人族も、地球の人類とは違いはあるだろう。
魔族は若干魔力によって補填される部分もあるようだが、呼吸出来なくなれば行動不能となり、しばらく続けば死に至る。一般的な人族よりもしぶといのは確かだが、そこまで差は無い。
(どこだ?)
(さすがに会ったことの無い人間の魔力は判別出来ない)
そもそも、人族の魔力は微弱で、個体判別しにくい。俺もなんとなく判るようになったのは最近だ。
シロはアンテナチップを使いこなして、ショゴスは持ち前の感覚を駆使して、あっさり答えを出してくるけど。
ちっ。やな予感しかしないよなぁ……。
辺境伯邸は非常に王城に近い位置にある。王城……か。まあ、魔力の多いヤツ、偉そうなヤツが滞在しているっぽいなぁ。
(ああ。所持魔力的に……今回の軍隊を率いてきた者達は全て、城にいると思うぞ。つまり、人族側の戦闘力は全て排除したってことじゃないか?)
そうだろうね……じゃなければ、さすがにここまで好き勝手出来るハズが無い。
さらに言えば、こうして……普通に歩いて王城まで来れちゃうのがね。魔族はほとんど、各屋敷の略奪の探索に夢中って事なんだろうな。
向こうの世界でも、残酷で残忍な戦場、そして、戦争犯罪が行われている現場は見た方だと思う。見たくて見たわけじゃ無いが、生き延びるためには助けを求める人を無視して、逃げるしかなかった。
(まあ、何度見ても……胸くそ悪いな。今回は特に……民度が低い)
(魔族にとって、人族は同族ではないと言い続けている時点で、敬意は生まれないのだろうな。なんというか、妙に固執しているなと思うのだが)
まあ、そうなんだよな。とはいえ……やっていることは最低だ。
王城の正門……大きい門だ。そこに……門を塞ぐ柵の様に、何本もの槍が立っている。
っていうか、この槍……磔専用の槍……か。そうか。まあ、そうだよな。じゃないと、こんな風にちゃんと引っかからないか。
磔だ。血塗れの……煌びやかな衣装を身につけた者達が……十字槍の様な独特の形の長槍の先に貫かれて……晒されている。
蛮族として考えれば。確かに判りやすいよな。これを見れば、一目でこの国が征服されたことが伝わってくる。ああ、奥にも何本も……。
(ここまで……か)
(ああ。根切りってヤツだよ……よくある……とは言わないが、倫理的に未熟な世界では無いわけじゃ無い。現実問題、俺も復讐の為だけに根切ってきたからな。あっちの世界で)
(知識としては知っていたが……幼生体にも容赦なしか。同種族と考えていないのだから当然か。生存競争、生存権の奪取か)
(そうかもな~)
小さい子どもの姿も見える。五歳くらいか。うん。まあ、俺も魔族のヤツラも同じ様なものだよな。晒してないけど。
奥側の槍に……辺境伯閣下……を見つけた。ああ。やはりか。彼の事だから、王城に駆けつけて、王族を守ろうとか逃げるための手はずとか、色々と試みたんだろう。
というか、会ったことは無かった……けど、隣は辺境伯閣下の奥様とかかな。判らんけど。槍の先に四十以上の遺体。
なので、同じ事をしよう。載せ替えようと思う。
(さっき……自分で、全部燃やしちゃおうかな……って)
(ショゴス。城の中……何名?)
(五十六名……だな)
(そっか。でな? それはそれ。これはこれだ)
俺がやるのはいいけれど。他のヤツにやられるのはダメだという、理不尽なアレだ。
「キサマどこから来た? 男の人族は全て奴隷収集所に移動させたのではなかったのか?」
「爆裂火球」
ドンッ!
短く、低い爆裂音が響く。
門の脇にあった待機所に火が付いて、ゴウゴウと音を立てて燃え始める。
(門番は一人だけだな……)
(うんうん、舐めてるよね。本当に)
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