428:原因
「とりあえず、二人……いや、アーリィも含めて三人……は、なんでシステムダウンしたか判らない? まま?」
「シロメイド長ですら、なぜ、いきなりエネルギーが消失していっているのか判らない様でしたから……我々には……」
「森下。どうよ?」
森下は……顎に指を当てている。名探偵っぽい。
「シロメイド長は「西でシステムにトラブルが発生」と言っていました。それがダンジョンシステムだけでなく、それらを統合する全てのシステムを指しているかの様な物言いでした。つまり、シロメイド長には何が原因でそうなりそうなのか、予測は出来ていた様です。まあ、現時点で全く反応がない以上、対策は不可能だったということなのでしょうが」
そうか。シロは……って。
そういえば、彼女が知っている情報にもレベルが設定されていて、場合や状況によってダウンロードできるようになるって言ってた気がするな……。
つまり、こういうことが起きるということは知らなかった可能性もあるのか。だから、対策が取られていない。
もしも、シロが……自分が消える、又は活動不可能という可能性に気付いていたとしたら、何らかのバックアップ、又は最低限の伝言、メッセージを残すハズだ。
シロは自分で、迷宮創造主補助機構附属多方向対応支援妖精最終世代と言っていた。つまり、ダンジョンシステムの付属……なのだからAIみたいなもんだろう。とは言っても、女神様の作ったAIだ。ぶっちゃけ、人間よりも高性能でもおかしく無い。かなりチート気味で働かされてたし。
うん。実際、それくらいの能力、自由度はあったもんな。シロは。
予備システムが無かった、構築していなかったという事は、本当に予期せぬ出来事なのだと思う。
「森下、予想で良い。今回の魔族の軍と、シロの消失。関係あると思うか?」
何時にない俺のシリアスな物言いに、森下も真面目だ。
「……有ると思います。ですが、ちょっと気になるのが」
「ん?」
「シロメイド長は明確に「西」で何かがあったと言っていました。ここから西で異変が起きているということでしょう。少なくとも、今回のハーシャリス閥の軍は「東」から来ています。つまり、そこは明確に「違う」ということになります」
そうか。まあ、そうだよな。
「俺も気になってることがあってさ……深淵の森……を越えてきたわけじゃない? それさ、何で「越える」事になったのか、捕虜に確認した?」
「……いえ、聞いていませんし、確認もしていないかと思います。「西伐」「植民地化」という目的は聞いておりますが……なぜ、今なのか……は聞いていないかと……」
「ヤツラは深淵の森を移動してきた……として。アレさ……深淵の森で一番強力な魔物ってなんだか知ってる?」
「確か、ドラゴンが群れを為している……と聞いた覚えがあります。伝説でもありますが」
「そうだよな……ドラゴンだよな……。森の中央付近に生息している……ドラゴンなんだよ。深淵の森で最も脅威的な敵がドラゴン……」
「それが……どういう?」
「……ちょっと前にさ……えーと。君らがこの世界に移動する直前くらい。派手に狩りをしたヤツがいるのよ……深淵の森中央付近で。まあ、確かに、あそこで一番強力な魔物はドラゴンだった」
「だった?」
「御主人様……」
「すまん」
「つまり……これまで魔族の「西伐」を阻んできた深淵の森の魔物バリアを……討伐しちゃったのは……御主人様ということで?」
「そう、かもしれない。あの森、さらに東へ、もの凄く広くてさ……中央部くらいまでしか行かないで帰ってきたんだけどね。さらに向こうへ行けば……アイツらとぶつかってたんだろうな」
俺か……そうか。今回の件、俺が悪い……可能性が高い点な。
「ダンジョンシステムの、システムダウンは「西」が原因として……今この国を襲っている、ハーシャリス閥だったか。ヤツラがカンパルラ、そしてローレシア王国に侵攻出来たのは、俺がドラゴン倒しちゃったせいかもな」
うわ……それで、実際の戦争になったら、最初現場に居ないってどういうことだよっていう。
(知らなかったのだから仕方が無い)
慰めてくれるのは嬉しいけど、ショゴス。ドラゴンが深淵の森で上位の魔物であるというのは知っていたんだよ。深淵の森は侵入不可能レベルな「魔物」で溢れている伝説の森だ。
それに……ドラゴンだけじゃない。実際に森を移動すると最大の障壁となる「蟲」の魔物の上位種を、俺は……とんでもない数、掃討している。
正直、蟲玉状態で襲いかかってくるのが、心底嫌、生理的に嫌で……しばらくアイツらは消えてしまえ! という怒りゲージマックス状態になり、歯止めが効かなかったのだ。
一部、森の破壊も行ってしまった。森での使用にも関わらず、魔力を多く含んだ森は炎上しにくいと聞いて「爆裂火球」をバンバンぶっ放してたし。
ぶっちゃけ、俺が入ったのは中層までであって、さらに危険だと言う深層には手を出さなかった。なので問題無いと思っていたんだけど……。
ひょっとして、深層は迂回とか、回避することが可能だったということなんだろうか?
まあ、でもともかく。あれらを狩るということは、その行為が、他に何らかの影響を与えるということを理解しておかないといけなかったのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます