426:出来事
食事をし、マイアをベッドに運んだ。冒険者として今回の戦いに参加したエルフ達は、アーリィと共に、戦争に参加した騎士、戦士たちの為の慰労、無礼講の宴会だそうだ。
アーリィは何はなくともさっさとここに戻ってきたいと言っていたそうだが、こちらも姫様が泣いてしまったので、仕方なく残ったそうだ。
まあ……そうか。行方不明状態だったんだしな。元上司、いや、友としても、心配していたよな。
その辺は食事をした後に、ホンの少しだけ、ディーベルス様のところに顔を出した時に聞いてきた。
ノラム的に帰還しているということを伝えないといけなかったしね。
で。だ。
「状況を説明出来るか?」
執務室でお茶を飲みながら……二人にも座ってもらっている。
「三週間ほど前に、シロメイド長から告げられました。正確に伝えますと、
・遥か西で大きなトラブルが発生。システム全体のエネルギーレベルが低下。
・状況の確認を行っているが、緊急自体なので、何が起こるか判らない。
・自分の存在が消失した場合、御主人様が向こうの世界からこちらに戻れなくなる可能性もある。
・既に、まともに向こうの世界へ連絡が取れるほどエネルギーが残っていない。
程なくして、シロメイド長は消失。連絡が取れなくなりました」
「んで?」
「深淵の森を踏破して、謎の軍勢が押し寄せたのは約一カ月ほど前です。シロメイド長に、怪しい軍勢を発見と伝えられたこの情報を、御領主様にお伝えしました」
んーと、軍が来たのは一カ月前。シロが消えたっていうか、多分システムが使えなくなったのが、三週間前。
「調査の結果、それは魔族の軍ということが判明。一万程度の大軍勢でございました。御領主様は何度か使者を派遣し、交渉を行おうとしたようですが、全ての使者は首になって投げ返されたそうです」
まあ、それくらいはするよな。アイツら。
「そこで、話し合いの余地が無いと判断した首脳陣は対策を立て始めたのですが、急遽、編成されたカンパルラ守備隊の精鋭と、冒険者の精鋭が侵攻を阻止しようと攻撃を仕掛けました。まあ、純粋に……使者を人と扱わぬヤツラに激怒した「無名」のサーマラ・フレーム様が有志と独断で出撃。それを止められなかった様ですが」
「それは……えっと。一万の大軍勢に?」
「はい。その様です。結果、彼女は率いた者達と共に、跡形も無く燃やされ、消されたとか」
ちっ。まあなぁ……何の対策も無くそれだけの数の……しかも魔道士に突っ込んで行ったら……。厳しいよな。
「その後、調査でも行っていたのか、魔族軍はしばらく深淵の森の境界辺りに留まっていたのですが一週間程前に移動を開始。その際に、その本隊から、一部隊が対カンパルラとして残されました」
「その部隊の……兵数は?」
「魔族の軍は、士族と呼ばれている戦士が千、そこに奴隷が約百で一部隊となっているそうです。ご覧になったとおり、全員、魔道士の様でした」
「そうだな」
「その千名の部隊に、ギルド長のゲルグ・フレーム子爵が臨時副官となってカンパルラ辺境騎士団を率いて仕掛けたのが、今から七日前。この日が正式な開戦となります」
「よいですか?」
お。森下が手を上げた。当然、と頷く。
「厳密に言うと、魔族は、重力障壁を使用する魔術戦士と、攻撃用の術を使用する魔術士で構成されていました。後衛は両手杖装備で、魔石の埋め込まれた杖によって魔術を増幅している様でした。これは魔術士=魔法使いな感じでイメージ通りです。前衛となる魔術戦士は、剣と盾を装備。剣には後衛ほどではないですが、魔術増幅の効果があり、盾には何か……独特の術が付与? されている様な感じでした。前衛が重力を操ったかの様な特殊な障壁を展開し、その中で攻撃を仕掛け、敵の足止めを行い、後衛は複数人で同時に魔術を行使する合体魔術とでも言うような技術で大規模な術を放つのが定番だったようです」
お、おう……アレ? 君、さっきまでちゃんと喋れて無かったよね?
「私達は、シロメイド長の言いつけ通り、非常事態となるまで手を出さず、偵察のみを行い、待機しておりました」
「つまり?」
「現場指揮官としての騎士団の副官の存在は大きいと判断しました。なので」
「開戦二日後にギルド長が戦死したため、ああ、そうか。アーリィがその代わりに、と」
「はい、さすがにこれは彼女の意志が固く、それを止めるのは不可能でした」
そりゃそうだよな。本来なら、ギルド長じゃなくて、自分が行ってたんだろうし。
「で、君ら二人と、アーリィの参戦が開戦から三日後というわけか」
「そうなります」
スゲーな……。俺があの場でやったのは二百程度……「寝台君」のとこに百。
ということは、この二人とアーリィで……つまり、七百を……。ああ、そうか、ギルド長が結構削った……のかな?
「ギルド長の率いた騎士団は……どれくらいの兵を削った?」
「我々が参戦した際の敵兵数は約九百五十でしたので……約五十程度かと」
「アーリィの率いていた騎士団は何名居たんだ?」
「元々五十名だった騎士が、約三十名に。そこに冒険者が二十程度でしょうか。つまり、臨時の辺境騎士団は五十名程度でした」
「まだ、騎士が揃ってなかったってことか」
「辺境騎士団は元々、ポーション輸送が主な任務で、数年かけて人数を揃え、鍛えていく予定だったそうで」
「ああ~なんかそんなようなことを言ってたな。確かに。というか、そもそも、一万の軍勢と争えるような状態じゃ無かったってことか」
「その様です。最終的には守備隊からも兵士が補充されておりましたし」
……五十対千って……どういう……。
「それでも、アーリィの指揮の元、非常に強力な戦力でございました。倒した兵の半分以上は騎士団によるものですし」
……いやいや……例え……まあ、じゃあ、七百のうち、四百を騎士団が倒したんだとしても、三百は君と森下の手によるものってことだよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます