422:工房主の護衛の暴力
「守れ! デリフィア様を守れ! 我らは近衛ぞ! ハーシャリスの御旗の元、魔力を集わせいっ!」
天幕の入口に立つのが……まあ、この場の指揮官か。側近、近衛隊長とかそういう感じなのかな?
うん、強いよね。確実に。強い。これ、雑兵ですら魔力的にはエルフよりも格段に上だもんな……エリートなんだろうな。さらに、魔術の展開も確実に、エルフより速い。魔術に関しては確実に、魔族の方が上なんだよな……多分。
だが。
「魔力障壁! 一番、二番、三番同時展開!」
おお! でもダメぇー。
ギシギシギシギシ……ギュパッ!
螺旋を描きながら天幕に突っ込んでいく「石棘」はこれまたイイ感じにアレンジ出来たお気に入りその二だ。以前よりも遙かに太く、大きく、三角錐の形を構築し、さらに、固くなっている。
グバッ!
空気が歪む音がして……天幕前に立っていた騎士だか兵士と共に、「石棘」が天幕の布を……骨組み? と共に吹き飛ばした。
中央に、天蓋付きの寝台? ああ、アレも「魔力障壁」が展開されているのか。
その天蓋付き寝台の上で、誰かが身を起こした……。
「フェネル……何ごとか。緊急弁が開くとは……」
「は、ははっ……近衛ふ、副長のマキャルスであります、フェネル隊長は……その、今、お亡くなりに……」
スゴイ速さで、側に近付いたのは、さっき偉そうに指揮をしていた男の隣にいたヤツか。副長ね。
というか、隊長はアレで終わりなのかな? ってああ。「石棘」をまともに喰らったのか。上半身も下半身も……螺旋に巻き込まれて千切れ飛んだか……。
「何を言っている……亜人共に本陣に攻め込まれるなど、何たる体たらく。我が親衛隊はそこまで惰弱化していたか。愚か者めが」
「い、いえ、その……」
「いやいや、お前らが弱いだけだろ。部下のせいにするなよ」
「……キサマ。下劣な亜人の分際で、直言は許して居らぬ。さらに我が寝所に踏み込むとは、何たる愚行。分をわきまえよ」
「ああ、そうだよな。魔族は自分たちを真人とか呼んで、自分たち以外を亜人として、劣ってるって下に見てるんだっけか?」
「その通りだ。それが生物の規範である。お前たち、亜人は我ら真人に支配され、奴隷として仕えることで初めて、生存が許される存在であ」
グブッ!
うーん。なんかもう、面倒くさくなったから、殴っちゃった。急いでるしね。
おうおう。こいつもの凄い「魔力障壁」で守られてたな。関係無く殴りつけたけど。
「おら。続きは? 続けてみろよ」
「な、なぜ、し、障壁が……げ、下賎な身で私の様な高貴な者の肉体に触れ」
ゴガッ! ゲブブブ!
おお! スゲーな。飛んでいったら面倒くさいので、足首を掴んで、思い切り地面に叩きつけた。千切れない! 壊れない! 障壁のおかげか。
周囲からもの凄い量の「魔力障壁」が施されてるのか。これ。面倒だな。
ぽいと……適当に投げ出して……。
自分を中心に、その周囲に「風刃乱風」を三重で発動させ、放つ。
一撃目は「魔力障壁」で消せた様だ。二撃目が各個人の障壁で弱められた。が。三撃目は防げなかったようだ。
弾け飛ぶ。肢体。
未だに天幕周りに留まっていた近衛だかの兵士が一斉に千切れ飛んだ。
「ぐう……」
ああ、なんだ、高貴な人も喰らってるのか。ああ。右肩から右腕の上の部分が斬れちゃったね。血がスゴイね。
「ええ……お前、自分で高貴とか言うんだから、俺の事を亜人とか言うんだから、今のくらい自分で防げよ」
「な、何を……キサマは……なにも……」
「ああ、そういうのいいから。お前は、お前が亜人などと言い、生まれついての奴隷階級と見下す様な種族の、名も無い者に四肢を分解されて、さらに、死霊術で復活されても困るから、さらに細分化されて、一つ一つを燃やして、さらにそのチリを川とか海に流されて、何ごとも無かったかのように世界が明日を迎えるのです。ありがとう」
「なっ」
ということで、再度、足首を掴んで……今度は「石棘」を生やした地面に突き刺す。
「げああああああ!」
うん。もっと痛くなってもらおう。
細い「石棘」を一気に五十本くらい下から生やす。
貫かれた身体はさすがにボロボロになっている。
(あ。こんな遊んでたら、マズイ?)
(既に……死兵を操っていた術は停止している。戦場では尽くが既に、ただの肉片と化した。戦況は一気に持ち直した様だ。皆無事だ)
(状況確認、ありがとう)
「それでは。なんだっけ、魔族の偉い人。まあ、なんでもいいや。消えていいよ」
青色の「火球」。魔力を大量に消費するが、太陽の青を思い浮かべる。アレでしょ、多分、俺が思い浮かべることが出来る最高温度ってこれだよね?
カッ!
一瞬にも関わらず……天幕周辺が一気に消え去った。一面が皿の様に……浅いクレーターと化した。大地は……ガラスの様に固く変質している。
全部……溶けた……のか。マジか。スゴいな。アレだ、俺は魔術は行使者に被害を与えない……の法則でノーダメージなのか。
何これ、怖い。チリすら残ってないじゃん……。川に流せなかったか。
正直、これちょっと、強すぎて使いにくいな。魔力をもう少し込めたら……向こうの戦場まで届いちゃってたかもしれないし。この周囲に……味方とかいなかったよな?
(大丈夫だ。高温の「火球」直前、この周辺には魔族以外の魔力は存在しなかった)
(おお。ありがとう。ショゴス)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます