413:おるすばんショゴスの推測
(正確には分からないが……遠くで、このダンジョンシステムの大元の力が減衰した様な気がした。つまり、何か大きなトラブルが発生したのではないかと推測する。そのせいでダンジョンシステムが停止することが予想され、その停止内容にはシロも含まれていたのではないかと思う)
そうか。何か大きなトラブル。何だ? 異世界リファーリアに何が起こった?
(私がシロに頼まれたのは、多分、村野の帰還の為のエネルギーの補充だ。村野が現れる直前に、ダンジョンコアがエネルギーを欲している様な気がした。なので、私はそれを補填した。それは思いのほか大きく、結果、私は思考すら困難な状態に陥ってしまった。村野が現れなければ、存在が消失する寸前だった)
(ショゴスはダンジョンコアを取り込んだおかげで、それなりのエネルギーが蓄えられていたんじゃ?)
(そうなのだが、私自身が変質するタメに大半を消失してしまったらしい。なので、私は大人しく、村野の帰りを待っていたのだ)
そう……か。帰ってきた時に弱っていたのは……俺の帰還時に消費したエネルギーのせいか……。さらになんか、お留守番させてすまんな。長期になってしまって。
ん? ちょっと待て。
(ショゴス。ダンジョンコアにエネルギーを注いでいたと言っていたな? ダンジョンコアは、どこだ?)
(ここだ)
ベッドの脇に……微弱な光が……そこにへばりついた様な……水晶、クリスタルコアが置いてあった。暗闇の中ですらその光に気付けないって光ってないよな。既に。しかも、これ……台座の上で自立するんじゃなかったっけ?
(ショゴスはこれに……出来る限りのエネルギーを注いでいたと)
(ああ。そうだ。だが、私のエネルギーは……非常に効率が悪いようで、なかなか充填できていないようだったが。このダンジョンコアに供給されていたエネルギーの最大供給源が失われている状態のため、安定させるのは難しい)
それでも、君が頑張ってくれたおかげで、俺はこちらの世界に帰還出来たのだろうから。
(俺がこちらに戻れたのは、ショゴス、君のおかげだ。感謝している)
(ならば良かった)
(しかし、これがダンジョンコアで……俺に神力があるというのであれば……その、最大供給源ほどではないと思うが……)
力よ、宿れ……と念じて、指を近づける。すると……何かが繋がった……ような気配があるのだが……非常に微力でしかない。
(おお……さすが、村野。だが……それでもこのエネルギーの移送量はこの程度なのだな……ああ、そうか。供給する者の安全のために上限が設定されているのだな……)
俺がしばらく力を譲り渡していると……唐突に拒絶された。コアに。なんか反発される。
(これが一日に吸収できる最大量の様だ。……こちらは供給元の安全と言うよりは、コアの性質上、一気に全てを流し込むようなことをすると、崩壊する可能性がある……といった感じのようだ)
見れば、クリスタルの下になっている部分が、薄らと……一ミリくらい淡く光っている。
(良く判るな?)
(なんとなく、そうなりそうと分析出来るだけだ。間違っているかもしれない)
いや、多分合ってるだろ。ショゴスの予想は……何分、俺やシロよりも収集できるデータの内容が細かい。
(で、ショゴス、このクリスタルコアがどれくらい輝けば……シロは戻ってくる?)
(シロは……かなり充填されなければ無理ではないだろうか? と予測する。彼女の起動には非常に大量のエネルギーが必要の様だ)
(それも何となく、か?)
(すまん)
(なら、もっと基幹的な部分……そうだな。照明を付けたり……ダンジョン内での移動や、外への出口を起動したりは?)
(それであれば……段階付きだが可能なハズだ。まず、エネルギーの供給を再開する……と)
照明が付いた。ああ、やはり、そういうエネルギーも全て、このダンジョンコアから生じていたのか。
(ついてもすぐに使えなくなるようでは困る。なので、できれば、ある程度恒久的に維持出来る……と判断した所で、システムを開放したいんだが)
(ああ。多分、この次がダンジョンシステム……へのエネルギー供給なのだと思うが……ここは現在のエネルギー量では難しいな。あと……四、五回は充填しないと)
(判った。ショゴスの感覚を信じよう。俺が、工房の部屋に出れるのは……ダンジョンシステムが稼働すれば……って感じか?)
(ああ。いま、少々エネルギーを流してみたのだが……起動しなかった。こちらも起動時にある程度の量を必要とする様だ)
(それが稼働すれば……最悪でも外の状況は判るよな?)
(……すまん、それは予想が出来ない。最初のシステムがその、ダンジョンシステムのどの部分を起動するのかが判らないのだ。移動……転移か。そのシステムはかなりのエネルギーを必要とするのではないだろうか?)
……そりゃそうだよな。ショゴスにしてみれば、それを聞かれても……だよな。
(了解した。まあ、正直、照明が点いて良かった。暗い中で食事をするのは味気ないしな……)
(万里なら暗いだけで怖いからと身動きが出来なくなっていた所だ)
まあ、そうだよな。
照明と同時に、居住スペースの家電……というか、設備が動く様になっていた。おかげで、【倉庫】や【収納】の素材を利用して、普通に料理も出来るのは嬉しかった。
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