412:おるすばんショゴス

 ショゴスは……エネルギー充填のために休眠モードに入った様だ。


 そういえば、俺はシロから松山さんの訃報の連絡をもらって慌てて操作室から【次元扉】をくぐった。


 最初は忘れてたけど、しばらくしてショゴスはどうしてるかな? と思い出したんだけどな。……というか、彼は自由にいろんな場所で楽しんでいる……と思っていたんだけど……。


 あ。そういえば【鑑定】……しておくか。


名前 村野久伸むらの ひさのぶ

種族 ハイエルフ


天職 魔術士

階位 82

体力 103 魔力 176 


天職スキル:【平静】【魔術伍】【魔増】【復唱】【輪唱】


=隠蔽=========

天職 迷宮創造主ダンジョンマスター

階位 44

体力 32 魔力 171 


天職スキル:【迷宮】【結界】【鑑定】【倉庫】【収納】

【異界接続】【渡界資格】【言語理解】【次元扉】


習得スキル:

【気配】【剣術】【盾術】【受流】【反撃】【隠形】【加速】【棒術】【拳闘】【魔術】【手加減】【周辺視】

=隠蔽=========


 ん。魔術士が82。迷宮創造主ダンジョンマスターが42のままだ。……そういえば……結構前から自分のダンジョンで操作室に「帰還」していなかったな……。くそっ。忘れてた。


 いつからだ? 少なくとも……帝国の七神将の炎の臭いヤツと戦ったくらいから……レベルアップの確認をしてない気がする。くそっ。システムが稼働していないとなると、もの凄く重要だった様に感じるな。


 とりあえず、何か出来ることはないか……と操作室を探索してみたが、暗闇というだけではなく、純粋に何も反応がない。このシステム、どれだけシロに依存してたんだよっていう。


 パソコンみたいに根幹OSとか……ないのかな。セーフティモードでの起動とか。


 そんなことを考えながら色々と探ってみた(戸棚みたいな所が開かないかな? とか、電源とか見あたらないかな? とか)が、何一つ反応は無かった。


 これはもう、どうにもならない……と思っていたら何となく眠くなったので……久々に、居室のベッドに潜り込んだ。



(村野……村野。起動出来るか? 君もエネルギー切れか?)


 ん。ショゴス……か? ああ、そうか。ここは操作室の居室か。


(あ。いや、大丈夫だ。ただ、睡眠を取っていただけだ。万里さんだって毎日寝ていただろう?)


(ああ、そうだな。人間は夜は寝るな。暗いしな。ここは)


(お。かなり……戻ったのか? 調子が)


(ああ……思考し、接触状態で喋るだけならどうにかなるくらいには回復したようだ。相変わらず……村野のエネルギーは質が良い)


(で。何があった? 判るか?)


(最後に……お前の従者である……シロだったか。彼女に託されたのは、この操作室の維持……だ)


 あれ? でも……そういえば……ショゴスはこの操作室に入れなかったのでは?


(ああ。入れなかったのだが……ダンジョンコアを取り込んだせいか、この中でも問題無く行動できる様になっていたのだ)


(そうか……俺が我を忘れて向こう側に行ってしまったから……)


(ああ。村野と共に居た俺はこちらの世界に取り残された……のだが、落ちた先は操作室だった。ここでの活動が可能となった私は、村野ほどではないにしても、エネルギーが補充されるこの部屋に「居る」事を希望した。シロは、村野から補充しているように、余剰分のみであれば、エネルギーを確保することを承諾してくれた)


 シロにしてみれば色々と葛藤はあっただろうな……。だが。どうしてこんな停電状態に?


(……今から時間にして……三週間ほど前だ)


 俺が日本に向かったのは……約二カ月前だからな……。ということは、一カ月とちょっとは無事に過ごしていたと。


(ああ、何も変わらない日が続いていた。が。三週間ほど前に、いきなり、シロが私に「緊急時にダンジョンコアに神力を供給することは可能か?」と聞いてきた)


(いきなりか?)


(ああ。何か緊急自体の様だった。私は村野が日本に行ってからずっと、この操作室の居住スペースにいたので、詳細は分からない。が。シロは焦っていたと……思う)


 何が……あった? シロが……ショゴスに物を頼むような緊急事態……か。想像が付かないな。


(そこで、私は、自分のエネルギーをダンジョンコアに再注入出来るか実験してみた。すると、可能なことが判った。但し、ごくごく微量だ。だが、それでも、重要なのだとシロは言った)


 ショゴスは……神力=エネルギーの消費体になると同時に、供給元にもなれる……と。


(シロは……よく気付いたな。君のその特性に)


(何でも、私が万里の肉体を再生したことから……と言っていた)


 ……人の肉体の再生……生物の創造……ということか。そうか。さらに、シロは、万里が魂を取り戻した事もよく知っている。となると、ショゴスが神力の出し入れが可能……ということに目を付けてもおかしく無いか。


(ああ、そうか。先に知らせておこう。万里さんのリハビリは問題無く終了し、無事、親元に帰せたそうだ。俺はその現場に立ち会えなかったが……一カ月ほどで完全に肉体を取り戻したと言っていたそうだ。ショゴスにありがとう……と、会いたい、寂しいと伝えてくれと伝言だ)


(そう……か。良かった。万里が無事で)


 心底……全体から、その安堵感が伝わってくる。本当に彼は、万里さんが全てなのだな……と判る。


(それにしても……何が起こったか判らないのは困ったな)


(推測でいいのなら……状況を分析してある)


 おお。さすがだな。





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