410:停電?
「お帰りなさいませ!」
美香が元気いっぱいで俺を出迎えた。当然の様に何か話しかけたそう……いや、思い切り駆け込んで抱きつきたかった様だが、こないだ叱られたからか、押さえたようだ。多分。うむ。
「まだ終わっていない。御主人様をかかずらすな」
と。さらに片矢さんに一蹴されて、スゴスゴと自分の部屋へ戻っていった。
多分そうなるだろうと思って、車の中で片矢さんにお願いしておいたのだ。帰宅後、俺が色々と処理するまで、美香達を近づけるなと。
帰宅直後。即、俺の部屋に向かう。
「ああ、そういえば忘れてた……追加のポーションを渡しておくよ。倉橋さんに渡して」
実は俺がこちらの世界でシラザ退治をしていた期間に、結構重要な事実が判明していた。
俺が作成したグリーンスムージー……まあ、向こうだとリドリス特製ポーション、体力回復ポーションは、シロの言う通りなら通常のポーションと同じで数十年は品質が低下しない。百年以上が経過すれば、性能劣化、変質する可能性は多分にある。ということだった。
が。こちらの世界では……みるみるうちに、劣化し、効果を失ったのだ。
本来の……俺が知っている性能を発揮出来るのは自分の【収納】から出して渡してから約二日。そこから効果が減衰していき、五日間程度はポーションとして使用可能だが……一週間経過すると全く効果が表れなくなったようだ。
実際、その元ポーションを返却してもらったが、確かに、回復水でも無い、ただの……グリーンスムージーと化していた。腐っては居ないが栄養があるかどうかは判らない。青汁……的に繊維質なのは残ってるかな? 程度だ。
容器は
この容器は魔力による不思議力が働いているのか、ペットボトルよりも密閉性は高い。でなければ数十年も中身が劣化しないなんてあり得ないしな。
こちらの世界ではグリーンスムージー=ポーションは作る端から使い、全て消費していたので気付かなかった。
「意地を張らずに……連絡をくれれば良かったのに」
「倉橋様が……その……あれ以上はもう、御主人様に負担をかけすぎだろうと……。私も三沢様も同意見でしたので……」
「味方で助かる命もあったかもしれないのに……」
「ですが、結果として奪われて、検証された場合、さらに大量の兵士が送られて来る可能性もあったかと……」
「ああ、そうか……そういう考え方もあるか」
というか、そこまで行く前に、やばいですーって言ってくれれば、潰しに来たのに。正直、ヤツラが……現代に人体実験までするとは思っていなかったし。
そうすれば、あのむごたらしい姿になってしまった被害者をもう少し減らすことは出来たハズだ。
「それでは、私は……急ぎ倉橋様の所へこちらをお持ちします。数名……まだ、かなり傷んでいる方がいらっしゃったはずです」
「うん」
行ってらっしゃい。
「さて」
片矢さんを緊急事案で強引に引き離したのは、大至急確認したかったからだ。
(シロ!)
反応が……一切無い。執務室は完全な静寂で帰してきた。
……ちっ……これか……。何か悪い予感がしていたのは。そもそも、この屋敷内であれば、何かあっても反応出来る様になっていたハズなのに。
いつもの地下クローゼットに降りる。そこから、さらに地下へ。そして、「次元扉」を確認する。
「そりゃあるか……」
久々に見る扉は、相変わらず……「どこ〇もドア」だ。
俺自身がここに設置したのだ。無くなっては困る。
「シロ」
ここは地下で、しかも入口は「大地操作」で既に塞いである。扉に手を掛けて、口に出して呼んでみる。
しばらく待っても反応は無い。……おかしい。扉が閉まっていても、上の部屋くらいは把握出来てる……のではなかったのか?
扉を開けた。暗い。何時もの白い部屋、迷宮機能集中総操作室なのだが、灯りがついていない。何故だ? ここは迷宮と同じで、松明等の灯りがなくても、常に一定に明るかったハズだ。
まあ、暗くても【周辺視】で、周囲の把握は問題無い。夜目が効いているのと変わらない。
「シロ」
返事がない。
異常事態だな……これは。ダンジョンシステムが稼働していないのか。こりゃ……そもそも、俺のレベルアップはダンジョンからここへ帰還した際に行われていたハズだ。
ビルの……電源喪失状態に似てるな……これまでに襲撃した際の隔離した時に似てる気もする。
停電……いや、ダンジョンシステムは何で動いていた? 魔力……じゃないや。確か、龍脈とかなんか……あ。神力か。
確か……
「神力がさっぱり無くなった状態で、ダンジョンへ移動しようとしたら?」
「間違い無く、命を失うことになったかと」
と言っていた気がする。今、俺はここに居るのに「死んでいない」。それは神力がゼロ……にはなっていない。
この状況は、ギリギリ保たれているということなのだろうか? クソッ。現状把握がしたいな。
とりあえず、確かなのは。
ここは異世界……クリュセリアだ。空気中の……纏わり付く魔力がこれまでと格段に違う。
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