400:生存競争

ガスッ!


 おっ。「ブロック」に弾丸が食い込んだ。アレか、「破気」の弾丸か。能力者が関わって作成されているっていう。


 それにしても「破気弾」……確実に進化してるな。今、撃たれたのは……アサルトライフルだよな? なんだっけ。M4カービンは古いよな。


バスバスバス!


村野:ヤツラが使ってるアサルトライフルって何てヤツだっけ?


 こないだまで拳銃とスナイパーライフルだけだったのに。全ての弾丸を破気弾にする流れなのかな? 


バスバスバスバスバスバス!


「な、なぜ!」


 おいおいって位、撃ち込まれた。ああ、そりゃそうか。今、俺、銃を構えて狙っている人達の真ん前でスマホいじってる……のはそりゃ腹立つか。


片矢:先ほど確認した限りでは、HK416かと思われます。彼らにとってかなり信頼性の高い武器かと。


村野:破気弾、かなり撃ち込まれてるんだけどさ、そういえば、能力者を見てないんだけど。


片矢:御主人様であれば居たところで問題無いかと思いますが……確かに能力者、いえ、陰陽寮所属の化者カノモノが使い捨てで最前線に配置され、挑みかかってきてもおかしく無いのですが……。


村野:そうだよね? 片矢さんの元同僚が居ないの……変だよね?


片矢:私にも、倉橋家関連以外の化者カノモノがどのような配置を命じられているのか、完璧には追えていないのです。少なくとも、このUNKNOWN部隊と共にあると想定していたのですが……。


村野:いないね。


片矢:……データから該当部分を発見致しました。……私の元同僚達は……ほとんど全て、日本から連れ去られた……様です。


村野:連れ去られ……ああ。そうか。各種実験か。


片矢:……くっ。本国送りとなり、様々な実験が行われた……様で。動画付きで極秘報告書が……。御主人様、データの抽出終了致しました。この部屋の隔離、終了していただいて結構です。


村野:そう? 了解。んじゃ特別扱いをやめるよ。


 片矢さんが情報収集するために、隔離していたデータ室? の【結界】を解除する。

 片矢さんの周辺の機材が無事だったのはそういうことだ。まあ、でも、達磨落としの際に、片矢さん自身は完全に落ちてると思うんだけど。

 ちなみに、米軍のデータ室は、ネット回線や外部電源が切断された場合、各端末毎に非常用バッテリーが確保されていて、緊急バックアップが可能になっているらしい。

 

 というか……拉致監禁からの生体実験か。大戦以前の倫理感。しかも米国軍が。情報流出が無い様だから、実行者は少数の権力者。多分、一部の愚か者が暴走した結果なのかもしれないけど。さらにそれを実験か。化者カノモノ達は日本国民として、きちんと承認されていなかった様だから……やりたい放題か。


 これは……もう。


 別に、彼ら、化者カノモノに思うところがあるわけじゃない。大概が敵としてしか捉えていなかったしな。


 でもなぁ……それはダメだ。


 幾ら俺の感情が、ハイエルフという種族特徴のため、平静を保ちやすくても。あまり激情を感じることが少ないとはいえ。


 元々……化者カノモノ達は、倉橋家によって、開放されつつある……と聞いていた。方針変更されたとは聞いていないので、いま現在もその活動は続いているハズだ。


「爆裂火球」


 あ。つい……一階を吹き飛ばしたのの倍以上の数の火球が生成されてしまった。


村野:片矢さん……さっきよりも派手にいくかもしれない。ちょっと抑えられなかった。


片矢:問題ありません……正直、自分も……さすがに……仲が良かったとは言えませんが、元同僚達がこのような扱いを受けていたと知って憤慨しております。


 ですよね。俺がこうなるんだから。当然……。それにしても、情報担当の片矢さんが全く知らなかったってことは、倉橋さんは……想像もしていなかったんじゃないかな。そこまでとは。なんか時間を掛けて、どうにか穏便に処理しようとしてたみたいだし。

 化者カノモノの人権を何よりも考えていた訳だから、さすがに、生きたまま実験されてるのを知ってたら、命がけで戦いを挑んでいただろうから。


 世界には……いや、日本にも、だけど。「言葉が通じない」相手が居る。確実に居る。自国語と外国語……という意味では無い。純粋に言語という意味でだ。

 言語による倫理感、禁忌を遵守させたいのであれば、一見言葉は通じるけど、同じ言語で話をしていない者達を「排除」しなければいけない。


 暴力では無く会話を選んだ者が、最終的に暴力で排除することを選ぶのは矛楯していると考える人も多いみたいだが、会話してみなければ「言葉が通じない」ということが判らなかったのだ。これはもう仕方ない。


 生物界で、種が近いが確実に違う者達の生存競争は、最終的に食うか食われるか、殺すか殺されるかである。無駄に知恵を付け、会話などという面倒な手段を選択し始めたのは、誰あろう我々人類だ。他者の命を奪わずに生きて行くことが理不尽なことであると、常に考え、悩み続けなければいけないのだろう。


ドドドドドドッドン!


 これぞ重低音。激しい炸裂音と爆砕音がミックスされて、新しい震動が生まれ、その震動が絡み合って、何も見えなくなるくらい、激しい粉塵が弾け飛ぶ。

 目の前にある何もかもの破壊が行われていく様だ。まあ、正直、俺の目に映るのはもうもうとした煙、埃、そんなものだ。俺の手から離れた爆発物は……有機物だろうが、無機物だろうが……容赦はしなかった。


グッ……ズズズズズン……。


 もう一階部分……が落ちた。なんか慣れたのか、前回よりも冷静に煙っている状況を観察する余裕がある。鉄筋コンクリート、しかもなんか特殊加工されてるっぽい建造物とはいえ、自重がとんでもないからなぁ。四メートル程度の落下でも、ダメージは凄まじいんだろう。既に……至る所にヒビが入り、俺が【結界】を解除しちゃったら、あっさり瓦解しそうだ。


 ということで、俺は既に、三階フロアに立っていることになる。一階の入口入ったところからほとんど動いていないのに。




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