399:達磨落とし

 ここ……空軍基地だよな? なんで個人装備であんな大物……MINIMIだか米国MINIMIだかの軽機関銃なんて……個人携帯で運用してるんだっけ? してないよな? 陸軍、海兵隊とか、その辺じゃあるまい……って。


 あ。そうか。


 そういえば、UNKNOWN部隊ってば、グリーンベレー=陸軍特殊部隊所属だった。


 いつの間にか、ここを拠点にしてるとかしてないとかそんな感じだったか。そう言えば。試験運用とか適当なお題目を付けて、極秘裏に持ち込む……なんてことも可能か。

 重機関銃、俺でも知ってるブローニングの新しいヤツとか配置されていないだけマシってことか。


 というか、この【結界】……「ブロック」はどれくらいの通常銃器兵器の攻撃まで耐えられるんだろうか? ぶっちゃけ、俺自身の……迷宮創造主ダンジョンマスターのレベルアップと共に、【結界】の効力、威力も上がって……確実に固くなってると想うんだよな。

 昔なら……それこそ片矢さんがまだ敵だった頃とかなら、このばら撒かれている弾丸レベルでも「削られて」しまっていたと思う。


 戦車砲って何ミリだっけ? 90ミリとか100ミリとかのカノン砲だっけか? そんなんだっけ? 


 と、余計な事を考えていると、銃声が収まった。


 俺の周囲、全方位に立方体で構築した、透明な【結界】「ブロック」は……異常なく健在だ。

 全てを弾き返した様だ。ああ、だから、あんな風にメチャクチャな跳弾で……この室内? ロビー? がボロボロになっているのか。


 最初はそれなりに壁と化していたテーブルなどで作られたゾンビ対策用のバリケードは、先ほどの一斉射撃で、ほぼほぼ存在意義を失ってしまった。


 ボロボロ……というか、俺が尽く跳ね返してしまったせいで、既にバリケードは無いに等しいし、多くの兵士が倒れている。まあ、ほぼ、お互いに銃口を向けて撃ち合った感じだもんな。


 うーんと。一階のバリケードを担当している兵士に、大した情報を持ってるヤツはいないよな。どう考えても。


 なので、焼き尽くそう。


 建物全部が燃えてしまうと、必要な情報なんかも燃え尽きてしまうかもしれない。なので、まずは一階を【結界】「正式」で隔離する。そして。


「爆裂火球」


 一階ロビーフロアに、バスケットボールの倍程度……直径50センチくらいの五つの火球が……拡散し飛んで行って……。


グドガッバーーン!


 文字通り爆裂した。


 俺の周囲以外の全てが、爆裂と共に千切れ飛び……跡形も無く消し飛んで行く。強化された鉄筋コンクリート製の太い柱もあっさりと弾け飛んだ。


 あ。一階全部吹き飛ばしてしまった。か。まあ、いいか。このまま、一階部分の【結界】「正式」を解除する。


 柱も無く、【結界】も無くなったビルは……達磨落としの様に二階部分が、一階に「落ち」た。


 これぞまさにフリーフォール。ビルの高さが一気に、一階分低くなった感じだ。


 もの凄い震動で……埃などで視界が埋まる。普通なら横に倒壊したりする可能性もありそうだったが、【結界】「正式」で囲われているため、横に倒壊は出来ない。ある意味支えてるからね。


 しばらくして、視界が戻る。

 

 あ。電気電気。ライトチップを幾つか発動する。俺の周り、見える範囲が一気に……昼間のように明るくなった。


 壁面……にかなりヒビが入ってしまったようだ。さらに、色々と倒れたり……崩壊していて、メチャクチャだ。


 あ。やべ。


村野:ごめん。びっくりしたよね?


 そういえば、こうなるって伝えてなかったな……と思ったので、片矢さんにメッセージを送った。


片矢:いえ……ですが、今後は実行前に何か合図をいただければ。


 おお~即返信あり。さすが片矢さん。いきなりなのに。一階分程度の落下じゃなんのダメージも無いのか。すげぇな。


 ちなみに、俺は「ブロック」で守られていたので……二階の天井を突き抜け、ぶち破って、そのまま、グチャグチャになった大部屋に立っていた。ここは……大会議室、ミーティングルームだろうか? ちょい離れた所に数名の兵士が、身動き出来ずに横たわっている。気絶してる? というか、死にかけ?


村野:二階もザコかな?


片矢:現在、旧四階、現在三階のデータルームに於いて、情報の抽出中であります。多分ですが、ここの情報以外は……不要かと。全ては御主人様の気の済む形でどうぞ。


村野:マースは?


片矢:このUNKNOWN部隊の指揮官、トップですので……一番上のフロア、旧五階、現在四階にいるのでは? と愚考します。設計図面では、旧四階、現在三階が五十名程度の宿舎にもなっていた気が。そうなると、旧五階、現在四階にヤツの居住スペースが存在するハズです。


 確かに、四階に何人かいるな。


村野:仕事場、事務所で寝泊まりするのが好きなんだな、ヤツは。直属のその、UNKNOWN部隊って何名いるの?


片矢:通常の特殊部隊グループであれば……1700名……少なければ1300名程度になります。……そういえば。活動規模の調査等から、UNKNOWN部隊は三個中隊、250名程度ということも判明しております。この本部を囲い込んだ時点で80名程度がこの建物で就寝していた模様です。


村野:判った。階層を潰すときは連絡します。


片矢:ありがとうございます。


 呻き声が聞こえた。お。生きてるか。まあ、そりゃそうか。棚とか机とかに押し潰されてなければ、一階層くらいの高さから落ちただけだもんな。


 って、結構死ぬか。これ。


「な、なにも……何者だ!」


 弱々しいがちゃんと誰何の声が聴こえた。根性はある……のかな? どうなのかな。


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