392:圧縮率高め
作者私信:体調を崩してしばらく空いてしまいました。申し訳ありません。
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築年数は結構経過していたであろうそこそこ大きめの……青い雑居ビルは……あっという間に更地となった。
まだ視界妨害、遮音状態にした【結界】「正式」で囲んでいるので、周辺の人の目には晒されてない。
逆にちょっと掘りすぎてしまって、凹んだのを元に戻す方が大変だった。
……よく考えなくてもビルの構築物、瓦礫、家具や各種備品は……どこへ行ったんだろうか。
物量的に消え去った……わけないよな。物を細かく砕けば……その細かい粒が同じ多さ、重さだけ残される。
あ。そうか……圧縮……されてるや。うん、してるしてる。何となくだけど。
【結界】ブロックで押し潰していった時に、全てを圧縮して……積み重ねていったんだから……砂礫層だったのが、固い岩盤層に変化したみたいになってる……な。
うん。まあ、固い方が良いよね。さらに圧縮しておこう。どうせなら……地下を掘り返されて難癖付けられないように、もっとカッチカチに固めておこう。そうしよう。
「ということで」
「はあ……」
ふう~
三沢さんのオフィス……星沢警備会社に戻ってきた。ソファで、ちょっと息が抜ける。手足を伸ばしてみる。
ああ。なんだ、やっぱり緊張というか、力が入ってたのか。
「ということは、中国黒社会の新興勢力であった……牙頭……を潰してきた……と」
「うーん。あのビルにいたヤツラだけじゃないでしょ? いくらなんでも。まあでも、とりあえず、とりあえずかな。大陸の本拠地とか……調べてよ。片矢さん。三沢さんに協力してもらって」
「は、はっ!」
片矢さんは俺の後ろに立っている。ちょっと……いや、かなり疲れたらしい。移動だけで。そうか。もう少し気にする様にしよう。
「……村野君の目的は……なんだ?」
倉橋さんも……勿論到着している。いつもの余裕は感じられない。深刻な顔のままだ。
「そりゃ……排除……ですかね。危険の排除」
「排除……か」
「この後。まずは、えーっと。陰陽寮でしたっけ? 全国に施設のあるアレ。アレの総本山的な場所と……長老衆でしたっけ? その自宅とか屋敷とか全部消します。長老衆に関わる一族……全員教えてくだいね。倉橋さん」
「根切り……か。こ、子供もいる……と思うが……」
「うーん。そういうのももう、割とどうでもいいんですよね。陰陽寮にいる、その施設に居る関係者……ほとんどが、そこにいる、「関係者」なわけです。出入りの業者でもしかしたら、陰陽寮とか知らずに、そこに居たかもしれない。関係無い人は……なるべく除外するようにしますけど~しょうがないですよ。事故です。事故」
この場にいる全員の身体が強張る。
「で。長老衆の屋敷も。関係者しかいないでしょ。うん。まあ、事故ですよ、事故。それが嫌なら……倉橋さんがちゃんと管理して、そこから退去させてくださいよ。俺が行動する前に、だから、間に合えばいいけど」
「そ、そんな……君は……神にでもなったつもり……か」
「やだな。そんなことないですよ。神様みたいになんでも出来るわけじゃないですし。ちょっと普通では無いかもしれませんけど……。というか、なんで仕切ってないんです?」
力を込める。
「倉橋さんが」
何となく。意地悪を言ってみたくなってしまうのは……まあ、そうだな。怒りが消えないからか。自分自身への。
「陰陽寮って組織を。未だに。穏便に……とか、まあ、やり方はあるんでしょうけれど……今回、彼女が死んだのは、主に貴方のせいなので。この件に関しては、貴方に全て任せたわけです。俺が。全部始末するかと考えていたのを、止めて、「味方同士で戦うことで、最終的に真の敵と戦えなくなってしまう」と策を弄したのは貴方だ」
「一部強行な手段も使用している……のだが……まだ、どうしても……」
「遅いよ。少なくとも、世界を巻き込んだ長老衆のしでかした事の巻き起こすスピードに付いていけてない」
何か言って欲しいけど、反論は無しか。まあ、そうだよな。
「そんな、俺も強いことを言える立場じゃ無いけどさ。当然、反省はしてるよ? 松山さんを巻き込んでしまったこと、迂闊にこんな状況を生み出してしまったことを。でも、だからこそ、憂いは無くして……と思っていたんだ」
「こちらも必死で……」
「言い訳だよね。死んでしまったよ? 彼女は。そちらの組織に関しては俺なんかよりも遥かに詳しい倉橋さんが言うんだ。ならばやってみてよ……と」
別にここに居る人たちの能力が低いとは思って無い。ただ。これまでの……既成概念を守ろうと必死だ。
「はい。とりあえず、議論はどうでもいいよ。少なくとも……証拠が無いのであれば、これから起こることは天災と変わらない。局所限定的な竜巻が発生し……誰かが死ぬ。そして、その巻き添えで、何名か、関係無い人が死ぬ。かもしれない。かもしれない」
くそ。どう考えても、俺が一番クソか。ちくしょう。
でもいい……。
「片矢さん、リスト」
「はっ。こちらに。さらに、スマホのMAPアプリにマーキングしておきました」
「あ。これ?」
便利だな。この印はそういう意味か。
「三沢さん、ということで、さらに黒幕をお願い」
「は。実は、先ほどの牙頭から吸い出したデータで……既に、今回の依頼元が判明しております」
「お。そりゃ良かった。教えてよ」
「……今回の直接の依頼は……いくつかのダミーを経由していましたが、某調査機関の者が担当していたようです。明確な証拠は残っていません。ですが、若干の痕跡とこれまでの実績からそう判断しました」
「うん、いいよ、もう。疑わしきは潰す」
「はい。その調査機関は……シラザ……北米の裏側……と言われているシラザ財閥による運営と……噂されていますし、実際にそうです。以前……何度か仕事を受けたことがありますので」
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