385:御近所迷宮

(……ダンジョンコアは……魔石よりも遥かに神度が高くなっています。つまり、彼が神敵である最大の理由となります)


(神力を吸う……ってこと?)


(はい。未確認情報ですが、際限なく)


(際限なくは無理だな……。というか、現状の弱まっている状態では、微量しか吸えないし、私は村野の許可無く、彼の財産でもある力を奪う様なコトはしない)


(だってさ。ショゴスは……なんていうか、精神的に非常に紳士的だぞ。俺よりも大人な気がする)


(……)


(シロ。神敵との接触例、会話例は?)


(ございません)


(そもそも、神敵と意思疎通ができるかどうかの確認は?)


(ございません。というか、神敵である「それ」は、意志無く、唯々神力を奪うのみ……と。私には伝承レベルの情報しかございません。ただ、脅威度は最大です……なので……」


(なら、ショゴスは初めての例ってことだ。ファーストコンタクトは大事だと思うぞ?)


(はい……)


 まあ、渋々とはいえ、シロは納得したようだ。


 んで。


(とはいえ。このダンジョンコアを……ここから外して、持ち帰ると、ここ……のダンジョンは潰れてしまうんだよな?)


(はい。この規模ですと……数日で消滅するかと思われます。立地的に……最終的には必要無いかもしれませんが、今は便利に使えそうな気がします)


(そうだな……ここは最初の一歩だしな。ごめん、ショゴス、このコアは食事に出来ないや)


(食事とは……少々違う気もするが、それが変質するのはマズイだろうな。なので、手は出さない)


(すまんな。というか、俺と別行動の際のエネルギー補充は無いと困るだろうから、他の迷宮行こうか……シロ、心当たりある?)


(カンパルラの周辺、リドリスの周辺に幾つかのダンジョンがありますが、長年、冒険者による攻略が進められており、消失した場合、経済圏に影響を与える可能性が高いです)


(そっか……そりゃ困ったな)


(このダンジョンと似たような反応であれば……ここへ来るまでに幾つか感じたが)


(……それはどの辺りでしょう)


(ここから……カンパルラ側に数㎞行ったところが一番近い)


(……数㎞……そのダンジョンの周辺10㎞圏内で別のダンジョンは発見されたという情報はございません)


(何それ。ってことは未踏破ダンジョン? ここみたいな?)


(そこと同じ様に若い……かどうかは判りません。が。未踏破というか、未発見ダンジョンの可能性がありますね)


 それなら、別に消失しても問題無いよな?


(はい)


 グノンのダンジョンは、とりあえず、現状そのまま……ということになった。便利だから。いつの間にか、この副操作室にもお馴染みの扉が生じていた。


 ここをくぐると……。


ガチャ


 ああ、やっぱり。白い操作室。ってここってたしか、迷宮機能集中総操作室……って名前だっけ。「総」って付いてるんだよな……。それはあの、こういう風に、副操作室を従えて……ってことを想定して付けられたのかな……。


(そういう意味もある……と思います。通常は迷宮機能集中操作室……とだけですから。迷宮創造主マスターのダンジョンだけ、総操作室というのは、不自然です)


 全ては女神の掌……か。こわっ。


 とりあえず、ボス広間の地下に、さらに地下室の様な小さい階層を増設して、罠満載で万が一にもダンジョンコアまで到達できないようにする。


 まあ、この時代の魔術士では、最初の地下室に気付き、「大地操作」で到達できる者がいないんじゃないか? ということなので大丈夫だろう。


「掌握」したダンジョン内の移動は早い。というか、まあ、元々の俺のダンジョンと一緒だ。ダンジョン内転移というか瞬間移動が出来る。なので、ダンジョンの入口に近い場所に転移室を加えて、即外に出る。


 この辺の改造は正直、俺の頭ではいじれなかった。シロに、こうして……と、うちの迷宮のブロックで組んだ小部屋を提示して、作ってもらった。


(他の迷宮創造主ダンジョンマスターにもシロみたいなサポートシステムはあったんだよな?)


(私は迷宮創造主補助機構附属多方向対応支援妖精最終世代ですから、初期世代、中期世代、終期世代……と世代を経ることで、機能向上が計られています。なので、今回の様な、ダンジョン拡張の丸投げは……不可能だったかと)


(それは……大変だな……)


(細かい相談なども出来なかった様です。第壱形態の私に一方的に話される……感じでしょうか?)


(判りにくいけど……なんとなく面倒というか、嫌だなっていう気持ちになったので、ダンジョン運営がとんでもなく大変だった……ということは理解した)


(はい……) 


 数㎞……はあっという間だ。


(ショゴス……この辺なのは間違い無いんだな?)

 

(ああ。低木と藪が複雑に絡み合っているが……この先にダンジョンの入口があるハズだ)


(判った)


「大地操作」でまずは、大地の表層部分を移動させる。ザザザ……と大規模に森が割れた。表層部分が移動すると……確かに……穴が……洞窟の入り口が顔を出した。


(本当だ……ちょっと小さいが、グノンのダンジョンの入口に似てるな……確かに)


 入口は半分崩れた岩や石、土に埋もれかけていたが、中に階段が見える。グノンのダンジョンとほぼ一緒だ。


 この手の瓦礫も……大地に属するモノであれば、安易に撤去できる。「大地操作」様々だ。


(学校の裏庭の掃除で重宝されそうだ)


 ショゴスの語彙に、中学生の日常生活が混じってくるのがちょっと面白い。

 

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